『…この色狂いが…!』
冴え冴えとした声に侮蔑さえ滲ませながら叩き付けられた言葉は、すとんと佐助の胸に落ちていった。
あれは、どれほど昔か。
佐助がまだ真田家に仕える前、里に属する下忍として様々な仕事を請け負っていた頃の話だ。
任務で派遣された場所で、別の勢力に派遣されていた同じ里のくのいちに出くわした。
何かと突っ掛かる幼馴染みのようなくのいちを宥めて話を聞けば任務は同じくとある大名家の情報を集めることだった。
これはよい機会だと、敵対勢力同士ではないからと佐助はそのくのいちを口説き落として協力して仕事をする事にしたのだ。
腕っ節は強いが不器用で純粋な彼女は諜報任務はやや不得手、何より若い娘が一人というのは目を惹く…何せとても美しい娘だった…から、佐助の申し出は渡りに舟だった。
佐助はというと、容貌ではそのくのいちよりも劣るが、腕っ節は互角以上、何より口は上手いし世渡りも上手い。
わざわざ目立つ相棒を引き入れずとも一人の方が仕事は捗るはずであった。
町外れにある小さな廃寺をねぐらにし、二人で情報を集めた。
広い領内を駆けずり回り、疲れて身を横たえた美しいくのいちに伸し掛かりくちびるを求めた佐助に投げ付けられたのが先の言葉だった。
あれは、どれほど昔か。
佐助がまだ真田家に仕える前、里に属する下忍として様々な仕事を請け負っていた頃の話だ。
任務で派遣された場所で、別の勢力に派遣されていた同じ里のくのいちに出くわした。
何かと突っ掛かる幼馴染みのようなくのいちを宥めて話を聞けば任務は同じくとある大名家の情報を集めることだった。
これはよい機会だと、敵対勢力同士ではないからと佐助はそのくのいちを口説き落として協力して仕事をする事にしたのだ。
腕っ節は強いが不器用で純粋な彼女は諜報任務はやや不得手、何より若い娘が一人というのは目を惹く…何せとても美しい娘だった…から、佐助の申し出は渡りに舟だった。
佐助はというと、容貌ではそのくのいちよりも劣るが、腕っ節は互角以上、何より口は上手いし世渡りも上手い。
わざわざ目立つ相棒を引き入れずとも一人の方が仕事は捗るはずであった。
町外れにある小さな廃寺をねぐらにし、二人で情報を集めた。
広い領内を駆けずり回り、疲れて身を横たえた美しいくのいちに伸し掛かりくちびるを求めた佐助に投げ付けられたのが先の言葉だった。
「ああ、そっか。なるほど。そう言われてみればそうだね」
ありがとう。
怒り、傷つくどころか笑顔で礼を言う佐助は、心底頭がおかしいのかという目で見られたが、特に気にはならなかった。
早熟な肢体を持つそのくのいちと違って佐助はまだ子供子供した、そして肉付きの悪い身体だった。
稀に見る逸材だと里で褒めそやされた能力は色事においても優秀で、まだ初潮も迎えぬうちに皆伝を貰った。
里の子供は大概が色修行を嫌う。
最も非人間的に扱われる場所だからなのだが、佐助だけはその修行が好きだった。
怒り、傷つくどころか笑顔で礼を言う佐助は、心底頭がおかしいのかという目で見られたが、特に気にはならなかった。
早熟な肢体を持つそのくのいちと違って佐助はまだ子供子供した、そして肉付きの悪い身体だった。
稀に見る逸材だと里で褒めそやされた能力は色事においても優秀で、まだ初潮も迎えぬうちに皆伝を貰った。
里の子供は大概が色修行を嫌う。
最も非人間的に扱われる場所だからなのだが、佐助だけはその修行が好きだった。