「ごめんな…やっぱりその…お、重いだろ…?」
「想像してたよりは重くねぇから、安心しろ。それより……」
「…?」
「もっと、しっかり掴まってろ。変に踏ん張られると、かえって均衡が取り辛
ぇんだ」
言われたとおり、小十郎の首に腕を回した元親は、先程よりも彼の背に身体を密
着させた。
否や、元親の豊満な胸の感触と吐息が、背中と首筋にダイレクトに伝わり、小十
郎はらしくもなく緊張してしまう。
「想像してたよりは重くねぇから、安心しろ。それより……」
「…?」
「もっと、しっかり掴まってろ。変に踏ん張られると、かえって均衡が取り辛
ぇんだ」
言われたとおり、小十郎の首に腕を回した元親は、先程よりも彼の背に身体を密
着させた。
否や、元親の豊満な胸の感触と吐息が、背中と首筋にダイレクトに伝わり、小十
郎はらしくもなく緊張してしまう。
(落ち着け、落ち着くんだ小十郎。俺が今背負ってるのは、でけぇカボチャとぶ
っとい大根2本と、妙に柔らかくて食べ頃になった甜瓜(てんか。メロンの事)が
ふたつ……って、違う!何を考えてるんだ俺は!?)
っとい大根2本と、妙に柔らかくて食べ頃になった甜瓜(てんか。メロンの事)が
ふたつ……って、違う!何を考えてるんだ俺は!?)
「…なぁ」
「──あ!?」
突然元親に呼びかけられた小十郎は、奇妙なトーンで返事をする。
「聞きたいことがあんだけど…さっき、俺が目覚める前……アンタ、俺の事呼ん
だか?」
尋ねられた言葉に、小十郎は、暫し沈黙を通していたが、
「………ああ。呼んだぜ。『さっさと起きろ、ブス』ってな」
「…そっか……」
ぶっきらぼうな答えを聞いた後で、元親は納得したかのように頷く。
「──あ!?」
突然元親に呼びかけられた小十郎は、奇妙なトーンで返事をする。
「聞きたいことがあんだけど…さっき、俺が目覚める前……アンタ、俺の事呼ん
だか?」
尋ねられた言葉に、小十郎は、暫し沈黙を通していたが、
「………ああ。呼んだぜ。『さっさと起きろ、ブス』ってな」
「…そっか……」
ぶっきらぼうな答えを聞いた後で、元親は納得したかのように頷く。
あの時。元親は、確かに自分の名を呼ぶ真摯な声を聞いたのだ。
初めて耳にするその声は、家族のものでも、故郷にいる幼馴染のものでも、そし
て政宗の声でもなかった。
あれは、一体誰だったのか……
初めて耳にするその声は、家族のものでも、故郷にいる幼馴染のものでも、そし
て政宗の声でもなかった。
あれは、一体誰だったのか……
「大方気ぃ失った時に、夢でも見てたんじゃねぇのか?」
「きっとそうだな。でも…」
「?」
「凄く嬉しかったんだ。だってその声、本当に俺の事を心配してくれてたみた
いだったから……」
「……」
「また、聞きたいな。聞けないかな…夢の中でも…いい…から……」
「おい…?」
「きっとそうだな。でも…」
「?」
「凄く嬉しかったんだ。だってその声、本当に俺の事を心配してくれてたみた
いだったから……」
「……」
「また、聞きたいな。聞けないかな…夢の中でも…いい…から……」
「おい…?」
広い背中に揺られながら、元親の意識は、再び眠りの世界へと誘われていく。
「……おめでたいヤツだぜ」
すうすう、と心地良さそうに寝息を立て始めた元親を抱え直すと、小十郎は苦笑
しながら歩き続けた。
しながら歩き続けた。
「なあ。いい加減教えてやれよ。『気付いてないのは、オマエらだけだ』ってな」
「そうだな…」
小十郎と、彼の後ろで眠っている元親を乗せた馬は、通常よりゆっくりとした
速度で、山を下りて行く。
そんなふたりを見守るようにしながら、政宗と成実は、彼らの後に続いていた。
「でも、出来ればもう少しだけ…ううん、ふたりにはずっと、あのままでい
て欲しいんだけど」
「おい、梵天…」
「だって…未だ認めるの、ちょっとだけ悔しいから……」
大切な従者と、大切な心友。
どちらも、政宗にとってはかけがえのない存在である。
そんなふたりが仲良くなるのは、仲違いするよりはましだと考えるものの、そ
うなると、今度は自分を置いていってしまうのではないか、という不安と、誤
魔化し切れない嫉妬の感情が、政宗を支配する。
単なる恋の鞘当てならともかく、政宗は、双方にやきもちを焼いているのだ。
小十郎にも。そして、元親にも。
「だから…俺の中で、もうちょっと気持ちの整理がつくまでは、ふたりにはあ
のままでいて欲しい」
「……難しいモンだな。今はアレでも、その内にいつかお互いを意識し始める
日が来るかも知れねぇぞ?」
「ん。判ってる…」
「まあ、あのふたりの事だから、どうあってもお前を蔑ろになんかしねぇだろ
うけどな。それよりも、小十郎とアイツがこの先どんな風に変わっていくのか、
見守るってのも悪くな……」
そう言って、成実が前方のふたりの姿に、目を細めた瞬間。
「そうだな…」
小十郎と、彼の後ろで眠っている元親を乗せた馬は、通常よりゆっくりとした
速度で、山を下りて行く。
そんなふたりを見守るようにしながら、政宗と成実は、彼らの後に続いていた。
「でも、出来ればもう少しだけ…ううん、ふたりにはずっと、あのままでい
て欲しいんだけど」
「おい、梵天…」
「だって…未だ認めるの、ちょっとだけ悔しいから……」
大切な従者と、大切な心友。
どちらも、政宗にとってはかけがえのない存在である。
そんなふたりが仲良くなるのは、仲違いするよりはましだと考えるものの、そ
うなると、今度は自分を置いていってしまうのではないか、という不安と、誤
魔化し切れない嫉妬の感情が、政宗を支配する。
単なる恋の鞘当てならともかく、政宗は、双方にやきもちを焼いているのだ。
小十郎にも。そして、元親にも。
「だから…俺の中で、もうちょっと気持ちの整理がつくまでは、ふたりにはあ
のままでいて欲しい」
「……難しいモンだな。今はアレでも、その内にいつかお互いを意識し始める
日が来るかも知れねぇぞ?」
「ん。判ってる…」
「まあ、あのふたりの事だから、どうあってもお前を蔑ろになんかしねぇだろ
うけどな。それよりも、小十郎とアイツがこの先どんな風に変わっていくのか、
見守るってのも悪くな……」
そう言って、成実が前方のふたりの姿に、目を細めた瞬間。
「……てんめええぇぇ、このドブス!俺の服にヨダレを垂らすなあぁ!!」
「うぅ…ん…もう、お腹…いっぱい……」
「寝ぼけてんじゃねええぇぇ!!」
「うぅ…ん…もう、お腹…いっぱい……」
「寝ぼけてんじゃねええぇぇ!!」
「…悪ぃ、梵天。アイツら、俺らが言わない限り、永久に進展しそうにねぇな」
「………Yes. I think so……」
「………Yes. I think so……」
怒鳴りつけながらも、馬の歩調を変えずに進み続けている小十郎の姿を見て、政宗
と成実は、顔を見合わせると愉快そうに笑った。
と成実は、顔を見合わせると愉快そうに笑った。




