西日の反対側はすでに夜闇が濃い。
越後へ帰る道の途中、明るさから逃れるようにして分け入った暗い森の中で、かすがは
そっと耳を澄ませた。
聞こえてくるものは、ひぐらしや鴉の鳴き声だけではなかった。彼女の耳の奥には、まだ
本多忠勝の起動音が残っている。
破壊の象徴のような荒々しい音。かすがの胎内を壊さんばかりに暴れる、あの音。
不埒な想像を脳裏に描いただけで、胸の奥と腰が甘く痺れた。
あと一息だった。
あともう少し、ほんの数回だけ忠勝に刺し貫かれたなら……。
「ああ……!」
犯されながら感じていた。それどころかもっと欲しがっている今の自分を自覚して、かすがは
崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。これ以上、己が身を越後へ近づけたくなかった。
胸の中には想い慕う謙信の微笑が眩しく輝いているのに、同じ胸に醜悪な願望を住まわせている。
汚してしまうと思った。
醜い欲望が、麗しい謙信の面差しを汚してしまう。
「――だめだっ」
こんな願望は一刻も早く捨て去らねばならない。
涙目になって表情を強張らせたかすがはしかし、思いとはうらはらに細い指先を淫らな
秘裂へと向けていた。
そこは濡れた感触で指を包み込み、最奥を抉られるのを求めるようにヒクヒクと収縮している。
「くっ……うううっ!」
いやらしい女だと、己自身を折檻するような気分で二本の指を強引に刺し入れると、痛みを
ともなった快感に肉体だけが歓喜した。
あの官能を体が思い出している。それで悦んでいるのだ。
「ううっ、はっ、んん、ううぅっ」
膣壁が指を締めつけながら、いっそう愛液を吐き出し始めた。
グチャグチャと泥を捏ねるような音に興奮して、喘ぎながら頭を左右に振ると、髪に染みついた
忠勝のにおい――鉄と油の不快なにおいに鼻の奥を刺激され、背筋に電撃にも似た疼きが走る。
「あはぁっ、ふうぅんっ!」
仰け反りながら片方の手で肉芽を摘まむと、もう後戻りはできなかった。
「はぁっ、はふ、ううんっ、ん、んーっ!」
顔と上半身を地面に擦りつけ、腰を高く掲げて尻を振る。
指先だけが明確な意思を持って動くだけで、かすがの頭の中では本多忠勝に、あるいは
別の何者かに激しく犯されているという妄想が繰り広げられていた。
「あ、あ、あんっ、はぁあっ、ああんっ」
膣内の壁という壁を二本の指が抉り、掻き回す。
陰核を転がす指の動きが加速していく。
丸い尻が軸を失ったように無軌道に揺れ動き、ときどきビクリと痙攣する。
喘ぐたびに地面の泥と腐敗した落葉が口中に入り込み、鼻腔に青臭いにおいが充満した。
鼻息は獣のように荒い。
「はああっ、ああっ、あううっ!」
かすがは頭の中の冷静な部分で、手が足りないなとひたすら考えていた。
いや、冷静なのかどうか分からない。分かるのはそれがひどく切実な思いだということ
だけだった。
――足りない。
自分にあと二本、いや一本でもいい。余計に腕があったなら、その手で尻を撫で、乳房を
撫で回せるだろうに。
「足り、ないぃ……んふうっ、あ、はぁっ!」
指の動きがさらに速まった。
越後へ帰る道の途中、明るさから逃れるようにして分け入った暗い森の中で、かすがは
そっと耳を澄ませた。
聞こえてくるものは、ひぐらしや鴉の鳴き声だけではなかった。彼女の耳の奥には、まだ
本多忠勝の起動音が残っている。
破壊の象徴のような荒々しい音。かすがの胎内を壊さんばかりに暴れる、あの音。
不埒な想像を脳裏に描いただけで、胸の奥と腰が甘く痺れた。
あと一息だった。
あともう少し、ほんの数回だけ忠勝に刺し貫かれたなら……。
「ああ……!」
犯されながら感じていた。それどころかもっと欲しがっている今の自分を自覚して、かすがは
崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。これ以上、己が身を越後へ近づけたくなかった。
胸の中には想い慕う謙信の微笑が眩しく輝いているのに、同じ胸に醜悪な願望を住まわせている。
汚してしまうと思った。
醜い欲望が、麗しい謙信の面差しを汚してしまう。
「――だめだっ」
こんな願望は一刻も早く捨て去らねばならない。
涙目になって表情を強張らせたかすがはしかし、思いとはうらはらに細い指先を淫らな
秘裂へと向けていた。
そこは濡れた感触で指を包み込み、最奥を抉られるのを求めるようにヒクヒクと収縮している。
「くっ……うううっ!」
いやらしい女だと、己自身を折檻するような気分で二本の指を強引に刺し入れると、痛みを
ともなった快感に肉体だけが歓喜した。
あの官能を体が思い出している。それで悦んでいるのだ。
「ううっ、はっ、んん、ううぅっ」
膣壁が指を締めつけながら、いっそう愛液を吐き出し始めた。
グチャグチャと泥を捏ねるような音に興奮して、喘ぎながら頭を左右に振ると、髪に染みついた
忠勝のにおい――鉄と油の不快なにおいに鼻の奥を刺激され、背筋に電撃にも似た疼きが走る。
「あはぁっ、ふうぅんっ!」
仰け反りながら片方の手で肉芽を摘まむと、もう後戻りはできなかった。
「はぁっ、はふ、ううんっ、ん、んーっ!」
顔と上半身を地面に擦りつけ、腰を高く掲げて尻を振る。
指先だけが明確な意思を持って動くだけで、かすがの頭の中では本多忠勝に、あるいは
別の何者かに激しく犯されているという妄想が繰り広げられていた。
「あ、あ、あんっ、はぁあっ、ああんっ」
膣内の壁という壁を二本の指が抉り、掻き回す。
陰核を転がす指の動きが加速していく。
丸い尻が軸を失ったように無軌道に揺れ動き、ときどきビクリと痙攣する。
喘ぐたびに地面の泥と腐敗した落葉が口中に入り込み、鼻腔に青臭いにおいが充満した。
鼻息は獣のように荒い。
「はああっ、ああっ、あううっ!」
かすがは頭の中の冷静な部分で、手が足りないなとひたすら考えていた。
いや、冷静なのかどうか分からない。分かるのはそれがひどく切実な思いだということ
だけだった。
――足りない。
自分にあと二本、いや一本でもいい。余計に腕があったなら、その手で尻を撫で、乳房を
撫で回せるだろうに。
「足り、ないぃ……んふうっ、あ、はぁっ!」
指の動きがさらに速まった。
狂ったように自慰に耽っていたかすがはだから、突如として首筋に衝撃が走り視界が霞んで
いったときも、自分の体が絶頂に登りつめたものだと勘違いした。
ただ、視界に入った男の顔を見て訝った。
――赤毛の男だ。
しかしあの飄々とした、ゆるい男ではない。
――なんだ。こいつは風魔の……
かすがの思考はそこで途絶えた。
いったときも、自分の体が絶頂に登りつめたものだと勘違いした。
ただ、視界に入った男の顔を見て訝った。
――赤毛の男だ。
しかしあの飄々とした、ゆるい男ではない。
――なんだ。こいつは風魔の……
かすがの思考はそこで途絶えた。