「つまり、どういうこと? 本多忠勝がすげー業物を持っているって、ただそれだけ?
冗談はよし子さんだぜ、かすが」
「冗談ではない。地下室で見たものはそれだけだった」
「う、羨ましいのう……」
「…………」
そう言ったのは氏政だ。
小太郎は無表情のまま、ただ黙っている。
「じゃ、俺らは揃って徳川家康が流した噂に踊らされてたってことかよ。あーもう、たまんねえ
なぁ」
「そういうことだ」
本多忠勝に犯されたとは言わずに、あくまで目撃したと言い換えて語ったかすがは、内心
気が気ではなかった。
真相が知れたら、口から口へと伝わってやがて彼女の敬愛する謙信にまで知られてしまうかも
しれない。
それだけは避けたかった。
「ま、いっか。おかげで思いもかけない北条の内情が掴めたんだしな」
「ううう……」
話が逸れたことにほっとしたかすがは、佐助が妙なことを言い出さぬ前に切り出した。
「もういいだろう。約束どおり縄をほどけ」
「はいはい。――っと」
胸の前で印を結んだ佐助の体から、黒い影が出現した。かすがの方へ歩み寄る佐助の代わりに
その影分身が氏政の首筋に苦無をあてがう。
「動くなよ」
「…………」
小太郎に視線を投げて、抜け目のない笑みを浮かべた。
その笑みをかすがへと向けると、佐助はそっと囁いた。
「で? 本多忠勝のナニはどんな具合だったのかなぁ。か、す、が?」
「なっ!?」
頭をがつんと殴られたような気分だった。
――知っている? まさか?
「なにを、言っている?」
「俺様は知っていることを全部吐いてね、って言ったんだぜ」
「だから私は……!」
「嘘つくんなら、縄ほどいてやんない」
「嘘など」
「ついてない? 馬鹿いうなよ、かすがー。も一度、教えてあげよっか。俺も、三河に、
いたんだぜ?」
ゆっくりと語りかけてくる佐助の目が、まとわりつくような光を放ってかすがに迫る。
「地下から出てきたお前が腰をカクカクさせながら歩いてたところも、そのあと森でなにを
してたかも――」
血の気が引いていく。かすがは狼狽しながら叫んだ。
「み、見ていたのかっ!」
「見ちゃったんだなぁ、これが」
佐助は面白がるように、さらに続けた。
「指突っ込んでグチャグチャに掻き回して、ケツ振りながらひとりで大声出してよがってたの、
俺らは見てたってわけ。ねぇ?」
佐助は振り向いて小太郎に呼びかける。
「あ、あ……」
今まで表情を変えなかった小太郎の口に、一瞬下卑た笑みが浮かんだような気がする。
かすがは、ぎゅっと目を閉じた。
「本多忠勝に犯されて、それを思い出してしてたわけ? そんなによかった? それとも、
物足りなかったのかな? ねー、かすが。教えてよ。どっちなの?」
嬲るように問われて、背筋が快感に痺れた。
冗談はよし子さんだぜ、かすが」
「冗談ではない。地下室で見たものはそれだけだった」
「う、羨ましいのう……」
「…………」
そう言ったのは氏政だ。
小太郎は無表情のまま、ただ黙っている。
「じゃ、俺らは揃って徳川家康が流した噂に踊らされてたってことかよ。あーもう、たまんねえ
なぁ」
「そういうことだ」
本多忠勝に犯されたとは言わずに、あくまで目撃したと言い換えて語ったかすがは、内心
気が気ではなかった。
真相が知れたら、口から口へと伝わってやがて彼女の敬愛する謙信にまで知られてしまうかも
しれない。
それだけは避けたかった。
「ま、いっか。おかげで思いもかけない北条の内情が掴めたんだしな」
「ううう……」
話が逸れたことにほっとしたかすがは、佐助が妙なことを言い出さぬ前に切り出した。
「もういいだろう。約束どおり縄をほどけ」
「はいはい。――っと」
胸の前で印を結んだ佐助の体から、黒い影が出現した。かすがの方へ歩み寄る佐助の代わりに
その影分身が氏政の首筋に苦無をあてがう。
「動くなよ」
「…………」
小太郎に視線を投げて、抜け目のない笑みを浮かべた。
その笑みをかすがへと向けると、佐助はそっと囁いた。
「で? 本多忠勝のナニはどんな具合だったのかなぁ。か、す、が?」
「なっ!?」
頭をがつんと殴られたような気分だった。
――知っている? まさか?
「なにを、言っている?」
「俺様は知っていることを全部吐いてね、って言ったんだぜ」
「だから私は……!」
「嘘つくんなら、縄ほどいてやんない」
「嘘など」
「ついてない? 馬鹿いうなよ、かすがー。も一度、教えてあげよっか。俺も、三河に、
いたんだぜ?」
ゆっくりと語りかけてくる佐助の目が、まとわりつくような光を放ってかすがに迫る。
「地下から出てきたお前が腰をカクカクさせながら歩いてたところも、そのあと森でなにを
してたかも――」
血の気が引いていく。かすがは狼狽しながら叫んだ。
「み、見ていたのかっ!」
「見ちゃったんだなぁ、これが」
佐助は面白がるように、さらに続けた。
「指突っ込んでグチャグチャに掻き回して、ケツ振りながらひとりで大声出してよがってたの、
俺らは見てたってわけ。ねぇ?」
佐助は振り向いて小太郎に呼びかける。
「あ、あ……」
今まで表情を変えなかった小太郎の口に、一瞬下卑た笑みが浮かんだような気がする。
かすがは、ぎゅっと目を閉じた。
「本多忠勝に犯されて、それを思い出してしてたわけ? そんなによかった? それとも、
物足りなかったのかな? ねー、かすが。教えてよ。どっちなの?」
嬲るように問われて、背筋が快感に痺れた。




