下半身に穿たれる強烈な快感に悲鳴を上げながら男茎を握っているうちに、手の中のものに
変化が生じていた。
「た、勃った!」
かすがは思わず叫んだ。
手のひらには確かな手応えがある。
見ると、ふにゃりと首を落としていた肉塊がわずかに鎌首をもたげていた。
目の前で男を咥え込んでいる女の姿態に煽られたか、はたまた肛門を指で犯されて悶える
かすがの淫らな声がよかったのか――とにかく氏政は勃起していた。
「勃った、勃った! 魔羅が勃った!」
「おっ……おおーっ!!」
瞬間、部屋の全員の胸には言い知れぬ感動が満ち満ちたに違いない。
どこからともなく拍手が鳴り響く。
横を見ると、佐助が手を叩いていた。
「おめでとうっ、ご老公! 年寄り扱いしてすいませんでした。あなたはまだ若いっ!」
何年ぶりかに男を取り戻したのだ。氏政の顔は誇らしげだった。
興奮して上気した頬は、無邪気な子供のように艶々として赤い。
「は、ははは、ふぉっふぉっふぉっ! ワシの人生まだまだこれからじゃ、若いもんには
負けんぞ。あと二十年は生きてやるわいっ」
胸を反らせて笑う声が、十年ほど若返ったかのように溌剌としていた。
「いや、もっと生きる! ふはははっ、ご先祖様ーっ、やりましたぞー!」
そのとき――、
「あはは、それはどうでしょうねぇ」
軽い口調で言った佐助の目は笑っていなかった。
声の中に獰猛な響きが混じっている。
「ほえ?」
真正面から獲物に矢を射かける狩人の目をして、佐助は言い放った。
「武田との同盟を破る北条を、ウチの大将が許すとでも思ってんですかねぇ。すっげぇー
おっかないぜー? お館様は」
口調は冗談のように軽々しく、しかし声は太い。
「!!」
氏政の顔が、さっと青ざめていく。
「あっ」
かすがは手の中のものの異変をいち早く察知して、思わず叫んだ。
萎えている。
若かりしころの氏政の面影を海綿体に宿して勃ち上がった男の象徴は今、見る影もなく萎え、
しょんぼりと肩を落とすようにして垂れ下がっていた。
氏政のばかっ、いくじなし! そんなふうに、彼を叱咤するようにいくら擦りしごいても、
もう反応はない。
「あ、ああ、あ……」
一気に老け込んだ氏政の口からは、意味を成さぬ声だけが吐き出されている。
「佐助っ、見ろ! お前があんなことを言うから、萎びてしまったじゃないか!」
「そんなこと言ったって、もう言っちゃったもん」
「…………」
佐助の非情な振る舞いを咎めたかすがに、氏政はうわ言のような言葉を投げた。
「お若いの……。優しい娘さんじゃのう……――愛……愛ってなんじゃ?」
「え? あの、そうだな。ためらわないこと、だろうか?」
かすがは答えたが、氏政はもうなにも言わなかった。
氏政のソレは二度と勃つことはなかった……。
変化が生じていた。
「た、勃った!」
かすがは思わず叫んだ。
手のひらには確かな手応えがある。
見ると、ふにゃりと首を落としていた肉塊がわずかに鎌首をもたげていた。
目の前で男を咥え込んでいる女の姿態に煽られたか、はたまた肛門を指で犯されて悶える
かすがの淫らな声がよかったのか――とにかく氏政は勃起していた。
「勃った、勃った! 魔羅が勃った!」
「おっ……おおーっ!!」
瞬間、部屋の全員の胸には言い知れぬ感動が満ち満ちたに違いない。
どこからともなく拍手が鳴り響く。
横を見ると、佐助が手を叩いていた。
「おめでとうっ、ご老公! 年寄り扱いしてすいませんでした。あなたはまだ若いっ!」
何年ぶりかに男を取り戻したのだ。氏政の顔は誇らしげだった。
興奮して上気した頬は、無邪気な子供のように艶々として赤い。
「は、ははは、ふぉっふぉっふぉっ! ワシの人生まだまだこれからじゃ、若いもんには
負けんぞ。あと二十年は生きてやるわいっ」
胸を反らせて笑う声が、十年ほど若返ったかのように溌剌としていた。
「いや、もっと生きる! ふはははっ、ご先祖様ーっ、やりましたぞー!」
そのとき――、
「あはは、それはどうでしょうねぇ」
軽い口調で言った佐助の目は笑っていなかった。
声の中に獰猛な響きが混じっている。
「ほえ?」
真正面から獲物に矢を射かける狩人の目をして、佐助は言い放った。
「武田との同盟を破る北条を、ウチの大将が許すとでも思ってんですかねぇ。すっげぇー
おっかないぜー? お館様は」
口調は冗談のように軽々しく、しかし声は太い。
「!!」
氏政の顔が、さっと青ざめていく。
「あっ」
かすがは手の中のものの異変をいち早く察知して、思わず叫んだ。
萎えている。
若かりしころの氏政の面影を海綿体に宿して勃ち上がった男の象徴は今、見る影もなく萎え、
しょんぼりと肩を落とすようにして垂れ下がっていた。
氏政のばかっ、いくじなし! そんなふうに、彼を叱咤するようにいくら擦りしごいても、
もう反応はない。
「あ、ああ、あ……」
一気に老け込んだ氏政の口からは、意味を成さぬ声だけが吐き出されている。
「佐助っ、見ろ! お前があんなことを言うから、萎びてしまったじゃないか!」
「そんなこと言ったって、もう言っちゃったもん」
「…………」
佐助の非情な振る舞いを咎めたかすがに、氏政はうわ言のような言葉を投げた。
「お若いの……。優しい娘さんじゃのう……――愛……愛ってなんじゃ?」
「え? あの、そうだな。ためらわないこと、だろうか?」
かすがは答えたが、氏政はもうなにも言わなかった。
氏政のソレは二度と勃つことはなかった……。