「飯、食べるかい」
慶次は、持っていた膳をひょいと上げてみせた。
「いらぬ」
元就の返答は、にべもない。
慶次は膳を縁側におろすと、心配そうな顔をした。
慶次は膳を縁側におろすと、心配そうな顔をした。
「食べなきゃ駄目だ、まだ傷も塞がったばっかりなんだから」
「物を食べる気分ではない。それに傷などとうに塞がっておるわ」
「……………だけど」
「我に傷を負わせた張本人の顔を見ながら、それでも食べよと申すのか。
いらぬと言っておるのだ」
いらぬと言っておるのだ」
慶次の顔が曇る。
元就は、慶次の反応が計算通りであることに安堵した。
まっすぐすぎる慶次の態度は元就には理解し難いものだった。
腹の底で何を企んでいるのかと、深読みをしてしまう。
側に居られると、不安になった。
かといって、視界から外れるのも不安になる。
見ていないところで何を計っているのかわからないからだ、と、元就は結論づけていた。
居ても居なくてもそわそわするのはそのせいだ。
この、のんきそうな物言いをする大男の傷ついた顔を見るのは
少し心が痛まないでもなかったが、その気持ちにはフタをした。
昔からそうやってきたから、慣れている。
元就は、慶次の反応が計算通りであることに安堵した。
まっすぐすぎる慶次の態度は元就には理解し難いものだった。
腹の底で何を企んでいるのかと、深読みをしてしまう。
側に居られると、不安になった。
かといって、視界から外れるのも不安になる。
見ていないところで何を計っているのかわからないからだ、と、元就は結論づけていた。
居ても居なくてもそわそわするのはそのせいだ。
この、のんきそうな物言いをする大男の傷ついた顔を見るのは
少し心が痛まないでもなかったが、その気持ちにはフタをした。
昔からそうやってきたから、慣れている。
「けど、せっかくまつ姉ちゃんが」
「捕虜にこのような立派な飯など持ってこずとも良い。冷や飯が似合いよ」
「俺は捕虜なんて思ってない」
「では何だ」
「客人だ」
「貴様は馬鹿か」
「見張りだってつけてないだろ」
「我を女と見くびっておるだけであろう。女の足などたかがしれておると」
「じゃあさっさと逃げてみせればいいだろ。どうして逃げないんだ」
それは。
元就は返答に詰まる。
「……………我の帰る場所はもう無い。我は貴様等に負けたのだ」
「…………………」
「何故貴様がそのような顔をするのだ」
悲しそうに眉を寄せる慶次を見て、元就は、また、苛々した。
「前田の領地に攻め入ったのは我ぞ!
貴様に哀れまれるいわれはないわ!」
貴様に哀れまれるいわれはないわ!」




