よりにもよってこんな時に襲ってきた相手が憎らしい。
まつは当然のように、慶次も戦力の一端として計上していた。
先日も小競り合いに駆り出されたばかりで、
慶次の頬にはその時受けた傷がまだ癒えきらずに残っている。
明日にはまた戦場に行かなくてはいけないかもしれない。
まつは当然のように、慶次も戦力の一端として計上していた。
先日も小競り合いに駆り出されたばかりで、
慶次の頬にはその時受けた傷がまだ癒えきらずに残っている。
明日にはまた戦場に行かなくてはいけないかもしれない。
「馬鹿だ! あぁ、俺は馬鹿だ!」
「今更気づいたか。どれだけ呑気なのだ」
「煩いよ、黙っててくれ俺は今落ち込んでんだ」
「そなたも落ち込む事があるとはな」
「……………………」
「珍しい事よ。明日は雨か」
「今更気づいたか。どれだけ呑気なのだ」
「煩いよ、黙っててくれ俺は今落ち込んでんだ」
「そなたも落ち込む事があるとはな」
「……………………」
「珍しい事よ。明日は雨か」
慶次は跳ね起き、戸口を見た。
十日ぶりに見る顔がある。
表情を能面のように静かに固めた元就が立っていた。
十日ぶりに見る顔がある。
表情を能面のように静かに固めた元就が立っていた。
「久しいな」
「………………」
「どうした? 幽霊でも見たかのような顔をしおって」
「あんた、なんで」
「………………」
「どうした? 幽霊でも見たかのような顔をしおって」
「あんた、なんで」
酸欠の鯉のように口をぱくつかせて慶次は呟く。
「戦と聞いて来た」
「なんで」
「戦と聞いて来た、と、言っておろう」
「なんで」
「戦と聞いて来た、と、言っておろう」
元就はすたすたと慶次の側まで歩み寄ると、じっと、慶次の頬に出来た傷を注視した。
「やはり噂ほどではなかったか」
表情一つ変えずにそう呟く。
「噂?」
「そなたの首が飛んだともっぱらの噂よ」
「はぁ」
「頬を槍が突き抜けたとも聞いた」
「………ちょっと待って」
「頭蓋に矢が刺さったとも聞いたが」
「いや、かすり傷だってこんなの。何その尾ひれ」
「大仰に伝わるのが噂よ」
「…………………」
「そなたの首が飛んだともっぱらの噂よ」
「はぁ」
「頬を槍が突き抜けたとも聞いた」
「………ちょっと待って」
「頭蓋に矢が刺さったとも聞いたが」
「いや、かすり傷だってこんなの。何その尾ひれ」
「大仰に伝わるのが噂よ」
「…………………」
慶次は、しばし考える。
「……………ひょっとして、心配して帰ってきてくれたわけ?」
「そなたの知ったことではない」
「そなたの知ったことではない」
元就の表情は静かなままだ。
慶次は、不安になって元就の手首をとる。
引き寄せようと力を込めたら、振りほどかれた。
表情は、変わらない。
慶次は、不安になって元就の手首をとる。
引き寄せようと力を込めたら、振りほどかれた。
表情は、変わらない。
「この間の事、怒ってるのか」
「何の話をしている?」
「あんたが出てった日、口吸いを」
「何の話をしている?」
「あんたが出てった日、口吸いを」
元就は、慶次が全て言い終わる前に、ぴしゃりと口を挟んだ。
「過ぎた事よ」
慶次は頭を垂れて、心底申し訳なさそうに謝った。
「悪かったって思ってる」
「知らぬ」
「なあ、でも、俺、本気なんだ、あんたの事が」
「知らぬと言っておる!」
「知らぬ」
「なあ、でも、俺、本気なんだ、あんたの事が」
「知らぬと言っておる!」
き、と、元就は慶次を睨み付けた。
「謝らせてもくれないって?」
「何故貴様が謝ることがある」
「嫌だったんだろ」
「…………知らぬ。もう良いわ」
「………………」
「何故貴様が謝ることがある」
「嫌だったんだろ」
「…………知らぬ。もう良いわ」
「………………」
元就は目を伏せた。




