外伝から小太郎の武器が小太刀になった訳を色々妄想していたら
こんなものが出来てしまいました。
こんなものが出来てしまいました。
北条のじっちゃんとほのぼの小太郎(♀)
この設定でもう駄目だ、という方はスルーして下され。
この設定でもう駄目だ、という方はスルーして下され。
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ある晴れた日のこと。
長閑な小田原城に北条氏政の声が響き渡った。
「風魔、風魔はどこじゃ!」
私室の縁側に立ち、庭の木立に向かって呼びかけると、一陣の風が吹きぬけ人影が現れた。
白と黒を基調にした忍装束に身を包んでおり、顔は目元を隠しているため鼻から下の部分しか見えない。
性別の分からない格好をしているため、城内の誰もがその答えを知らない。
…ただ一人を除いて。
「おお、そこに居ったか」
小太郎は膝を付き、顔を伏せてそこに控えた。
いささか距離がありすぎるので、氏政は手招きをして小太郎を呼び寄せた。
「近くに来なくてはワシの手が届かんぞ」
どういう意味か、と小太郎は首を傾げる仕草で問い掛けた。
北条に仕える風魔一族、その頭領である小太郎は主の前ですら声を出さない。
そういう訓練を受けているのか、あるいは声を出せないようにされているのかは分からない。
しかし、小太郎のちょっとした仕草で十分に会話が成り立つので、氏政は特に不便とも感じていなかった。
「今日こそお前を驚かしてやろうと思ってな」
にやり、と皺を深くして笑うと、一つ咳払いをした。
「先日の戦いではその方の働きなくしては勝てなかったのじゃ、その褒美にな」
後ろに持っていた包みをもったいぶって小太郎の目の前に出した。
細長い布袋に包まれたものはおそらく刀だろう。
だが、それは特に珍しいものではない。
ましては戦功として与えるものとしてはありふれたものである。
「開けてみるが良い」
何を考えているのだろうか、と思いつつも、小太郎は両手で包みを受け取ると、そっと中身を取り出した。
予想通り、一振りの刀である。
だが、少々仕掛けがあるのか、鍔だけでなく鞘の先端も動く。
すっと引き抜いてみると、それは一つの鞘に収められた二つの小太刀であった。
重さも長さもしっくりと手に馴染む。
それはまるで使い慣れた武器のように思えるほど。
小太郎は顔を上げ、主の表情を伺った。
「変わった作りをしているが、中々の業物だぞ」
ぎらりと日光を跳ね返す刃に走る紋は、まるで海に寄せる波のようだ。
切れ味も相当のものだというのはすぐに分かった。
しかし、何故このようなものを、と更に問い掛けた。
「だから言ったはずじゃ、褒美だと」
これからも北条の為に働くのじゃ、と言い残し、氏政は上機嫌で去っていった。
ぽつん、と残された小太郎は、手元へと視線を落とす。
黒塗りの鞘に収められた刀の柄に、さり気なく花を象った飾りが紐の合間から覗くように細工されている。
長閑な小田原城に北条氏政の声が響き渡った。
「風魔、風魔はどこじゃ!」
私室の縁側に立ち、庭の木立に向かって呼びかけると、一陣の風が吹きぬけ人影が現れた。
白と黒を基調にした忍装束に身を包んでおり、顔は目元を隠しているため鼻から下の部分しか見えない。
性別の分からない格好をしているため、城内の誰もがその答えを知らない。
…ただ一人を除いて。
「おお、そこに居ったか」
小太郎は膝を付き、顔を伏せてそこに控えた。
いささか距離がありすぎるので、氏政は手招きをして小太郎を呼び寄せた。
「近くに来なくてはワシの手が届かんぞ」
どういう意味か、と小太郎は首を傾げる仕草で問い掛けた。
北条に仕える風魔一族、その頭領である小太郎は主の前ですら声を出さない。
そういう訓練を受けているのか、あるいは声を出せないようにされているのかは分からない。
しかし、小太郎のちょっとした仕草で十分に会話が成り立つので、氏政は特に不便とも感じていなかった。
「今日こそお前を驚かしてやろうと思ってな」
にやり、と皺を深くして笑うと、一つ咳払いをした。
「先日の戦いではその方の働きなくしては勝てなかったのじゃ、その褒美にな」
後ろに持っていた包みをもったいぶって小太郎の目の前に出した。
細長い布袋に包まれたものはおそらく刀だろう。
だが、それは特に珍しいものではない。
ましては戦功として与えるものとしてはありふれたものである。
「開けてみるが良い」
何を考えているのだろうか、と思いつつも、小太郎は両手で包みを受け取ると、そっと中身を取り出した。
予想通り、一振りの刀である。
だが、少々仕掛けがあるのか、鍔だけでなく鞘の先端も動く。
すっと引き抜いてみると、それは一つの鞘に収められた二つの小太刀であった。
重さも長さもしっくりと手に馴染む。
それはまるで使い慣れた武器のように思えるほど。
小太郎は顔を上げ、主の表情を伺った。
「変わった作りをしているが、中々の業物だぞ」
ぎらりと日光を跳ね返す刃に走る紋は、まるで海に寄せる波のようだ。
切れ味も相当のものだというのはすぐに分かった。
しかし、何故このようなものを、と更に問い掛けた。
「だから言ったはずじゃ、褒美だと」
これからも北条の為に働くのじゃ、と言い残し、氏政は上機嫌で去っていった。
ぽつん、と残された小太郎は、手元へと視線を落とす。
黒塗りの鞘に収められた刀の柄に、さり気なく花を象った飾りが紐の合間から覗くように細工されている。
「花でも愛でれば、ワシに笑みの一つでもくれるかの」
冗談交じりに氏政が花見の時に言っていた事を思い出した。
年頃の娘が笑いもしないのは詰まらん、ほれ、笑ってみよ、と言われたが、
その場ではどう反応して良いのか分からず、黙って俯いただけだった。
勿論、忍びとして北条に仕える以上、彼の傍にあってはその身を守る事が第一であり、
感情などあっても邪魔なものだ。
そう思っていたのは自分だけだったのかと、小太郎は口元に仄かな笑みを浮かべた。
年頃の娘が笑いもしないのは詰まらん、ほれ、笑ってみよ、と言われたが、
その場ではどう反応して良いのか分からず、黙って俯いただけだった。
勿論、忍びとして北条に仕える以上、彼の傍にあってはその身を守る事が第一であり、
感情などあっても邪魔なものだ。
そう思っていたのは自分だけだったのかと、小太郎は口元に仄かな笑みを浮かべた。
了
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イヤースッキリシタ
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