「濃姫様……光秀様……あ、明智光秀、謀反!」
騒々しい足音と共に駆け込んできた乱丸の声に帰蝶が飛び起きると、既に本能寺は燃え盛る炎に包まれていた。
「…………そんな……」
明智光秀は腹の読めない男ではあった。しかし帰蝶とは従兄妹関係にあり、まさか謀反を起こすなど想像もしていなかった為、帰蝶は逃げるように促す乱丸の声を遙かに遠くに聞く様に暫し呆然とせずにはいられなかった。
「……っ様! 濃姫様! 此処は乱丸に任せて信長様を探してお逃げ下さいっ!」
信長――その言葉に我に返った帰蝶は、慌てて信長の姿を探したが既に何処にもいない。無事逃げおおせたのならばそれで良いが、帰蝶や乱丸に何も告げずに尻尾を巻くように姿を消す男ではない。帰蝶は自分の嫌な予感が外れる事を願いながら、際奥の本殿の扉を蹴破った。
騒々しい足音と共に駆け込んできた乱丸の声に帰蝶が飛び起きると、既に本能寺は燃え盛る炎に包まれていた。
「…………そんな……」
明智光秀は腹の読めない男ではあった。しかし帰蝶とは従兄妹関係にあり、まさか謀反を起こすなど想像もしていなかった為、帰蝶は逃げるように促す乱丸の声を遙かに遠くに聞く様に暫し呆然とせずにはいられなかった。
「……っ様! 濃姫様! 此処は乱丸に任せて信長様を探してお逃げ下さいっ!」
信長――その言葉に我に返った帰蝶は、慌てて信長の姿を探したが既に何処にもいない。無事逃げおおせたのならばそれで良いが、帰蝶や乱丸に何も告げずに尻尾を巻くように姿を消す男ではない。帰蝶は自分の嫌な予感が外れる事を願いながら、際奥の本殿の扉を蹴破った。
其処には、既に事切れた信長がいた。未だ暖かい信長の身体は、今にも目覚めて帰蝶を押し倒すのではないかと思えたが、腕の中の信長は段々冷たく硬くなっていくだけだった。
「嘘……こんなの嘘よ……」
帰蝶は燃え盛る本殿の中で泣き崩れる事しかできなかった。第六天魔王とまで呼ばれた信長が自刃するなど、俄には信じられない事で、帰蝶の心は信長の死を拒んでいた。
鬼蝶3
「嘘……こんなの嘘よ……」
帰蝶は燃え盛る本殿の中で泣き崩れる事しかできなかった。第六天魔王とまで呼ばれた信長が自刃するなど、俄には信じられない事で、帰蝶の心は信長の死を拒んでいた。
鬼蝶3