戦国BASARA/エロパロ保管庫

炎の微笑13

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bsr_e

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幸村は目を覚ました。

(生きている……)

寝返りをうち、体を起こす。腕がひどく痩せている。一体何日眠っていただろう。
枕元に置かれた水差しから直接水を飲む。喉が渇いた。腹も減った。
生きている証拠だ。
(何故、生きている)
目を覚ましたら上田にいた時の衝撃。身をちぎられるかと思うほどの絶望に襲われた。
殺したい、逃げ出したいと思った。だが、いざこうやって自由になると、
恐ろしいほどの絶望に見舞われる。
何故おめおめと生きている。
「…………死ぬことは、できぬか」
暗い顔のまま、ぽつりとつぶやいた。

様子を見に来た女中が、嬉しそうな顔をした。何が食べたいか聞かれ、粟粥を、と答えた。
粟粥が食べたい。
小十郎に無理やりねじ込まれたあの粥を食べたいと思った。
女中は不思議そうにしたが、すぐに頭を下げて厨に向かった。
そういえば、上田では粟粥を食べたことはない。
ゆっくりと着替え、顔を洗う。井戸の前で会った佐助が嬉しそうにしていた。
廊下を歩けば、女中や下男がよくご無事で、と嬉しそうにする。幸村はそれらに
律儀に答えた。幸村らしくない機械的な仕草だが、誰もそれに気づかない。
部屋に戻れば、膳の用意が整っていた。粟粥と漬物。膳の前に座り、粥を手に取った。
一口頬張る。

――ほら、食え。米がダメなら、粟ならどうだ。
小十郎に囚われて犯され、幸村は食事を拒んだ。小十郎手ずから匙に粥をすくって
食べさせようとしてきた。首を振って拒むと、小十郎は粥を自分の口に入れ、咀嚼して飲み込んだ。
――別に、毒なんか入ってねぇよ。
また出される匙を払うと、小十郎から怒気が膨れ上がった。
――てめぇ、死にてぇのか!!
幸村の体を床に押し付けながら迫ってくる匙に恐怖を覚えて首を振ると、食えと
匙を口の中に突っ込まれた。
誰が食うものかと思ったが、体は粥を咀嚼して飲み込んだ。
あの時、小十郎は僅かに肩を落とした。安堵したような空気が流れた。

――あの一瞬。

一口とはいえ、粟を粗末にしたことを怒ったのだろう、と思った。小十郎は食べ物を
粗末にすることを一番嫌っている。主君といえど、偏食や残すことは許されないらしい。
匙に残った粟の粒を舐め取る。
そういえば、あの時小十郎が使った匙を使った。
(あれが、俺の初めての接吻になるな)
四肢を縛られ、前戯もろくに施されないまま犯された。痛みに気が狂いそうになりながら、
睨みつけて罵倒した。うるさいと首を絞められたが、それでも睨むのをやめなかった。

あれが初めての男かと思うと、臓腑が煮えた。
だが今はどうだろう。
離れることが、会えない事が辛い。狂ったように哭き、助けた佐助を罵倒した。
錯覚だと佐助は言う。狂わされたのだと、そう思い込んでいるだけだと。

「……構わない」
粥と漬物を綺麗に食べ終え、幸村はつぶやいた。
犯され、苦しめられたのは事実だ。縄や帯で縛られるのは嫌いだった。
だが、触れてくる手がどれだけ優しいか、抱き寄せてくる腕がどれだけ安心できるかも知っている。
――俺は……片倉殿の、何だ。
慰み者だと笑われると思っていた。しかし答えははぐらかされ、幸村は混乱した。
安定を欠いた、そのくせ酷く穏やかな日々。
愛されていたとは思わない。幸村の意思で小十郎を抱き締めたことは一度もない。
あの逞しい首に手を絡めれば、きっと堕ちてしまう。矜持も誇りも捨てて、
ただの「女」になってしまう。
それが、最後の矜持だった。
膳の前から離れ、落ちてくる髪を縛るために鏡の前に座る。
櫛を取って髪を梳き、紐を手に取る。上質な絹糸で織られた紐。
小十郎が与えてくるものは、全部安物だった。高ければいいというわけではないが、
どれもこれも安いものばかりで、何がしたいのかと呆れたものだ。

――あれは、小十郎なりの謝罪だったのか。

不器用なお人だ、と唇を持ち上げた。


久しぶりに笑った。それは、小十郎を想っての笑みだった。


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