「…………左様か」
国を奪われ、仲間を失い一人になっても、この女は故郷を取り戻すつもりでいるらしい。
会話するのはこれが初めてだったが、戦術の展開を見ていればどのような人間か、元就には分かる。
この女が執着しているのは、共に戦った仲間だ。
おそらくはその、散り散りになったという仲間とまた楽しく海に出ることを考えている。
そのことを言えば、元親は苦笑いした。
会話するのはこれが初めてだったが、戦術の展開を見ていればどのような人間か、元就には分かる。
この女が執着しているのは、共に戦った仲間だ。
おそらくはその、散り散りになったという仲間とまた楽しく海に出ることを考えている。
そのことを言えば、元親は苦笑いした。
「あんたやっぱり言うことキツいなぁ。折角そんなに可愛い格好してんのによ」
揶揄されたと思い、元就の頬が羞恥に染まる。
「これは…、今日は祭りぞ、我は連れ出されて、」
「何言い訳してんだよ、睨むなって。折角似合ってるのが台無しだぜ」
「何言い訳してんだよ、睨むなって。折角似合ってるのが台無しだぜ」
か、と、頬がさらにほてるのが分かった。
元親はそんな元就を不思議そうに見て、それから、にっと笑った。
元親はそんな元就を不思議そうに見て、それから、にっと笑った。
「可愛いな、あんた」
「我を愚弄す…」
「居た!」
「我を愚弄す…」
「居た!」
ここ数ヶ月ですっかり聞き慣れた声に、元就の心臓が跳ねる。
走りだそうと立ち上がれば、元親に羽交い締めにされた。
ふかふかとした胸を首の後ろに感じ、元就は首を竦める。
視界に、人波をかき分けてこちらに向かってくる大男の姿が映った。
頭の上から元親の呻き声が聞こえて、仰ぎ見れば、苦虫を噛みつぶしたような顔で前を見ている。
元就は怪訝に思ったが、その思考は中断された。
走りだそうと立ち上がれば、元親に羽交い締めにされた。
ふかふかとした胸を首の後ろに感じ、元就は首を竦める。
視界に、人波をかき分けてこちらに向かってくる大男の姿が映った。
頭の上から元親の呻き声が聞こえて、仰ぎ見れば、苦虫を噛みつぶしたような顔で前を見ている。
元就は怪訝に思ったが、その思考は中断された。
「その腕の怪我」
慶次の声には戸惑いの色が混じっている。
すりむいた腕を取ろうと伸ばされた手から逃れるように、元就は体をよじった。
すりむいた腕を取ろうと伸ばされた手から逃れるように、元就は体をよじった。
「この程度、どうということも無い。
借り物に土がついてしまった。まつ殿に謝らねば」
借り物に土がついてしまった。まつ殿に謝らねば」
視線を合わせることは出来なかった。
気まずさを誤魔化すように、自分を抱えている者を再び見上げてみれば、
元親は、やはりまだ苦虫を噛みつぶしたような顔をしたまま前を見ている。
蒼い瞳が追う先を追えば、そこには先程の小男が居た。
その狸に似た男は、元就と慶次の様子を心配そうに伺いながらも、
「一緒に居たんだな」と、安心したように息を吐いた。
蚊の鳴くような声で元親は、ああ、と、呟いた。
気まずさを誤魔化すように、自分を抱えている者を再び見上げてみれば、
元親は、やはりまだ苦虫を噛みつぶしたような顔をしたまま前を見ている。
蒼い瞳が追う先を追えば、そこには先程の小男が居た。
その狸に似た男は、元就と慶次の様子を心配そうに伺いながらも、
「一緒に居たんだな」と、安心したように息を吐いた。
蚊の鳴くような声で元親は、ああ、と、呟いた。