襖を開けて入ってきた島津義弘は、既に用意されていた席へと座った。
「ほう、めずらしか料理じゃ」
目の前には、見た事のない料理がずらりと並べられていた。
朝から例の三人が城の厨房を借りて何やら仕込んでいたらしいが、これは上出来だと手を鳴らした。
どれも綺麗に盛り付けられ、食欲をそそる美味しそうな匂いがする。
その中心には丸ごと調理され、程よく焼き目のついた鳥が置かれていた。
割烹着を外して、髪を留めていた紐を解くと、政宗は襟元を直して隣に座った。
「南蛮人から『くりすます』ってのを祝う料理の作り方を習ってやってみたんだが、結構良い感じだろ?」
主な部分は政宗が作り、その他の所を二人に手伝ってもらったらしい。
隻眼を細めてふっと笑みを浮かべると、綺麗な細工が施された杯を差し出す。
薄い硝子を加工して作られたそれは光を透かして煌く宝石のようにも見えた。
「今日の献立に合わせみたが…どうだい?」
濃い緑色の瓶から注がれたのは深い紅色をした酒だった。
「な、なんじゃ、血か!」
思わず杯を落としかけたが、寸での所で受け止める。
「ははっ、こいつは葡萄酒ってやつさ」
政宗と反対側に座っていた長曾我部元親も同じ酒を手にしていた。
今日の為にこいつを取り寄せたとか。
「言われてみれば、何やら甘い匂いがするのう」
ふんふん、と杯の縁に鼻を寄せてみると、柔らかな果実の香りがする。
飲みなれた薩摩の酒の味とは少々違うようだ。
「海の向こうから取り寄せたものさ」
織田のおっさんの所で飲んでみて気に入ったからな、と元親はあっけらかんと言う。
「また怪しげなものを…」
向かいに座っている毛利元就は、無理矢理渡された杯を一瞥すると、元親の顔を睨み付けた。
「そんな顔しないでさ、最初の一杯ぐらい付き合えよ」
付きあい悪いぞ、と苦笑しながら元親は隣を見た。
しなり、と彼女に寄りかかられて腕に胸を押し付けられると、慌てて咳払いをして島津は元就の方を向いた。
「毛利どんも、この酒じゃったらいけるじゃろ?」
それほど強い酒ではない、と一口舐めた島津に言われ、元就はほんの少し表情を和らげた。
「島津殿が言われるのなら、この一杯のみ」
それでよろしいか、と真顔で問われた。
「よかよか」
「とりあえず腹も空いているだろうし、乾杯だ」
そう言って、政宗は皆の手に杯が渡っていることを確認する。
乾杯、と唱和してぐいっと飲み干すと、さっそく料理へと箸を伸ばした。
「どれ、こいつをもらおうかの」
手近な皿にあった料理を一切れ取ると、ぱくりと口に放り込む。
「むう…」
初めて作ったとは思えないほど見事な出来に、島津は思わず唸り声を上げる。
「口に合わなかったか?」
政宗が心配そうに顔を覗き込むが、次の瞬間には豪快に笑いながら島津は彼女の肩を叩いた。
「こんなうまかもん、食ったのは生まれて初めてだわい」
「そいつは良かった」
調味料から食材まで、初めて扱うものもあり、彼女達も不安そうであったが、その一言に三人は笑みを浮かべた。
「ほう、めずらしか料理じゃ」
目の前には、見た事のない料理がずらりと並べられていた。
朝から例の三人が城の厨房を借りて何やら仕込んでいたらしいが、これは上出来だと手を鳴らした。
どれも綺麗に盛り付けられ、食欲をそそる美味しそうな匂いがする。
その中心には丸ごと調理され、程よく焼き目のついた鳥が置かれていた。
割烹着を外して、髪を留めていた紐を解くと、政宗は襟元を直して隣に座った。
「南蛮人から『くりすます』ってのを祝う料理の作り方を習ってやってみたんだが、結構良い感じだろ?」
主な部分は政宗が作り、その他の所を二人に手伝ってもらったらしい。
隻眼を細めてふっと笑みを浮かべると、綺麗な細工が施された杯を差し出す。
薄い硝子を加工して作られたそれは光を透かして煌く宝石のようにも見えた。
「今日の献立に合わせみたが…どうだい?」
濃い緑色の瓶から注がれたのは深い紅色をした酒だった。
「な、なんじゃ、血か!」
思わず杯を落としかけたが、寸での所で受け止める。
「ははっ、こいつは葡萄酒ってやつさ」
政宗と反対側に座っていた長曾我部元親も同じ酒を手にしていた。
今日の為にこいつを取り寄せたとか。
「言われてみれば、何やら甘い匂いがするのう」
ふんふん、と杯の縁に鼻を寄せてみると、柔らかな果実の香りがする。
飲みなれた薩摩の酒の味とは少々違うようだ。
「海の向こうから取り寄せたものさ」
織田のおっさんの所で飲んでみて気に入ったからな、と元親はあっけらかんと言う。
「また怪しげなものを…」
向かいに座っている毛利元就は、無理矢理渡された杯を一瞥すると、元親の顔を睨み付けた。
「そんな顔しないでさ、最初の一杯ぐらい付き合えよ」
付きあい悪いぞ、と苦笑しながら元親は隣を見た。
しなり、と彼女に寄りかかられて腕に胸を押し付けられると、慌てて咳払いをして島津は元就の方を向いた。
「毛利どんも、この酒じゃったらいけるじゃろ?」
それほど強い酒ではない、と一口舐めた島津に言われ、元就はほんの少し表情を和らげた。
「島津殿が言われるのなら、この一杯のみ」
それでよろしいか、と真顔で問われた。
「よかよか」
「とりあえず腹も空いているだろうし、乾杯だ」
そう言って、政宗は皆の手に杯が渡っていることを確認する。
乾杯、と唱和してぐいっと飲み干すと、さっそく料理へと箸を伸ばした。
「どれ、こいつをもらおうかの」
手近な皿にあった料理を一切れ取ると、ぱくりと口に放り込む。
「むう…」
初めて作ったとは思えないほど見事な出来に、島津は思わず唸り声を上げる。
「口に合わなかったか?」
政宗が心配そうに顔を覗き込むが、次の瞬間には豪快に笑いながら島津は彼女の肩を叩いた。
「こんなうまかもん、食ったのは生まれて初めてだわい」
「そいつは良かった」
調味料から食材まで、初めて扱うものもあり、彼女達も不安そうであったが、その一言に三人は笑みを浮かべた。