―――刹那、竜巻のような疾風が、氏政に背後から飛び掛ろうとしていた狼達を斬り裂いた。
氏政の脇腹の傷から滲み出る微かな血の臭いを嗅ぎ付けて集まったのだろう。一匹や二匹どころの騒ぎではない。
しかし、そのおびただしい数の狼さえも、氏政に襲い掛かるより先に、あっけなく風に斬り刻まれていく。
しかし、そのおびただしい数の狼さえも、氏政に襲い掛かるより先に、あっけなく風に斬り刻まれていく。
一切の感情もなく、冷静に、冷徹に狼達を斬り殺していく小太郎の姿を見ながら
氏政は、初めて小太郎と共に戦場に立った時の事を思い出した。
氏政は、初めて小太郎と共に戦場に立った時の事を思い出した。
それは、異様な光景だった。小太郎の動きは、静かで、素早く、激しく、そして捉えようがなかった。
地を駆けたと思えば、突然消え、空中に打ち上げられた敵兵を、まとわりつく様な風が斬り刻む。
地を蹴って宙へ舞ったと思えば、滑空し、ゆるりと落ちてきたかと思えば、自身以上の重量でもって、その場にいた兵を踏み潰す。
地を駆けたと思えば、突然消え、空中に打ち上げられた敵兵を、まとわりつく様な風が斬り刻む。
地を蹴って宙へ舞ったと思えば、滑空し、ゆるりと落ちてきたかと思えば、自身以上の重量でもって、その場にいた兵を踏み潰す。
『瞬きのうちに、一体何人倒しているのだ…!』
敵兵も北条の兵も、みな一様に小太郎の術に驚嘆し、恐れ戦いていた。
氏政も、小太郎に対して言い様のない恐怖を感じた。
氏政も、小太郎に対して言い様のない恐怖を感じた。
そして、それは今も変わらない。…改めて、小太郎が恐ろしく思う。
小太郎と二人きりになってから、よくわからない焦燥感に襲われ続けていた。
ああそうか。わしはより大きな恐怖から逃れたかったのじゃ。
この上ない恐怖は、今目の前にいる。
ああそうか。わしはより大きな恐怖から逃れたかったのじゃ。
この上ない恐怖は、今目の前にいる。
…逃げたい、逃げ出したい。
狼を一匹残らず仕留めた小太郎は、両手に持った忍者刀をクルクルと回し鞘に収め
狼の屍の間を何事もなかったかのように歩いてきた。
狼の屍の間を何事もなかったかのように歩いてきた。
「い、いやじゃ…いや…あっ」
小太郎は、ふらふらとおぼつかない脚で逃げ惑う氏政を抱きかかえ、再び宙に舞い木々の間を駆け抜けた。
小太郎の脚なら、小屋まであっという間だ。
小太郎の脚なら、小屋まであっという間だ。
戻ったら、小屋を暖かくして、薬湯の用意をし、食事を摂らせなければ。
小太郎は頭の中で、戻ったらしなければならない事を復唱し、次の作業の段取りを考えていた。
小太郎は頭の中で、戻ったらしなければならない事を復唱し、次の作業の段取りを考えていた。
「も、もう殺して…お願いだから…」
腕の中で、ガタガタと震えながら泣く氏政の声を聞きながら。




