「お世話になりましたっと!」
鷹波屋の玄関先で、俺はぺこりと頭を下げた。
「こっちこそ、お前には世話になりっぱなしだったな」
腕を組んだままの姿勢の元親が、どこか申し訳無さそうにそう返した。
いい天気だった。
旅立ちにはピッタリだ。
風がさぁっと通り抜けて、通りに植えられた桜の花びらを舞い上げた。
舞う花びらを追って目線を上げれば、上階の窓から覗き込む、真っ赤に目を腫らした禿、新造達と目が合う。
笑って手を振れば、またわっと彼女達は泣き始めた。
玄関には、遣り手や、番頭、飯炊きに髪結いにお針子から庭師まで、一同揃って見送りに集まってくれていた。
忘八の右腕であるはずの毛利が出てこないのは、仕様だな。あいつはあいつで、表に出てこないのがあいつなりの流儀だから。
「これからは甲斐で養生している虎のおっさんに仕えるんだって?義理堅いっつーかなぁ…もういいんじゃね?」
好きに生きたって。と元親は付け足した。
「お館様にはお世話になったからね。恩返しみたいなモンさ」
他にいく当てもないし、と言ってから、他に行きたいと思う場所もない事に気付いた。
「それに真っ直ぐ行く訳じゃないよ。ちょっと娑婆の空気吸いながら京都見物」
今の京都は良い季節だろう。一面の桜に旬の食材。浮世のネタに是非一見。
「あぁ、そんな事言ってたな。しかしお前があいつと出来てたとは知らなかったぜ」
言って元親が視線を投げるその先には、あっちこっちから餞別を手渡されている慶次の姿。
「いやーあいつは只の荷物持ち兼現地案内人」
いやいやホントに。何で俺と一緒に仕事辞めちゃうのかも理解できない。
ついに実家に戻って身を固める決心でも付いたか?
「元親もたまには見世閉めて行ってみたら?相方と」
ニヤニヤと意味深な笑みを送ってやれば
「バッ!毛利はそんなんじゃねぇよ!」
と、耳まで赤くして否定する。
あらあら、鬼の忘八が可愛いこと。
誰も毛利だなんて言ってないんだけどね、とついつい邪推。
「じゃあ…」
と、手を上げると、各々から「気をつけて」「元気で」と、別れの言葉が上がる。
再来の約束はしない。ここは、戻って来るような場所ではないから。
鷹波屋の玄関先で、俺はぺこりと頭を下げた。
「こっちこそ、お前には世話になりっぱなしだったな」
腕を組んだままの姿勢の元親が、どこか申し訳無さそうにそう返した。
いい天気だった。
旅立ちにはピッタリだ。
風がさぁっと通り抜けて、通りに植えられた桜の花びらを舞い上げた。
舞う花びらを追って目線を上げれば、上階の窓から覗き込む、真っ赤に目を腫らした禿、新造達と目が合う。
笑って手を振れば、またわっと彼女達は泣き始めた。
玄関には、遣り手や、番頭、飯炊きに髪結いにお針子から庭師まで、一同揃って見送りに集まってくれていた。
忘八の右腕であるはずの毛利が出てこないのは、仕様だな。あいつはあいつで、表に出てこないのがあいつなりの流儀だから。
「これからは甲斐で養生している虎のおっさんに仕えるんだって?義理堅いっつーかなぁ…もういいんじゃね?」
好きに生きたって。と元親は付け足した。
「お館様にはお世話になったからね。恩返しみたいなモンさ」
他にいく当てもないし、と言ってから、他に行きたいと思う場所もない事に気付いた。
「それに真っ直ぐ行く訳じゃないよ。ちょっと娑婆の空気吸いながら京都見物」
今の京都は良い季節だろう。一面の桜に旬の食材。浮世のネタに是非一見。
「あぁ、そんな事言ってたな。しかしお前があいつと出来てたとは知らなかったぜ」
言って元親が視線を投げるその先には、あっちこっちから餞別を手渡されている慶次の姿。
「いやーあいつは只の荷物持ち兼現地案内人」
いやいやホントに。何で俺と一緒に仕事辞めちゃうのかも理解できない。
ついに実家に戻って身を固める決心でも付いたか?
「元親もたまには見世閉めて行ってみたら?相方と」
ニヤニヤと意味深な笑みを送ってやれば
「バッ!毛利はそんなんじゃねぇよ!」
と、耳まで赤くして否定する。
あらあら、鬼の忘八が可愛いこと。
誰も毛利だなんて言ってないんだけどね、とついつい邪推。
「じゃあ…」
と、手を上げると、各々から「気をつけて」「元気で」と、別れの言葉が上がる。
再来の約束はしない。ここは、戻って来るような場所ではないから。




