「…い、犬千代さま!」
振り返った慶次の陰で慌てて後ろを向き、着衣を直す。
「な何、してたのか、な? 」
やっと呪縛が解けたように部屋の中に踏み込めた利家は、二人を見比べた。
冷静なつもりでも動揺がその瞳に揺らいでいる。
冷静なつもりでも動揺がその瞳に揺らいでいる。
説明されてようやく事態を把握した利家は、返す言葉もなく首の後ろを掻く。
毛も、揃わないうちに。 (いや、だって嫁に貰っちゃったし)
誤解されても仕方が無い。 (ご、誤解?な、なんの?)
嬉しそうにとか、してんな。 (誰も触れた事もないと思えば嬉しくて当然)
誤解されても仕方が無い。 (ご、誤解?な、なんの?)
嬉しそうにとか、してんな。 (誰も触れた事もないと思えば嬉しくて当然)
揶揄する慶次の言葉に思っていることすべて飲み込んでごもっともとうなだれる。
「それじゃ、俺はこれで。せっかく薬も塗ったんだし、当分の間は刺激しないようにね。」
慶次は念を押してから部屋を出て行った。
残されたふたりは、澱む空気の中で気まずく立ち尽くす。
互いに表情を盗み見ようとして視線がしっかりと合ってしまった。
互いに表情を盗み見ようとして視線がしっかりと合ってしまった。