帰蝶の肩を抱いた元親の腕は熱い。まるで子供の体温の様だ。拒む様に首を振って身体を捩ったが、元親は空いている手を帰蝶の頬に添えて接吻した。薄い唇は想像よりは柔らかく、その優しい接吻は帰蝶を良い気分にさせる。元親の帰蝶に対する想いが伝わってくる様で気恥ずかしいのだが、元親は舌を絡めるでもなく啄む様な接吻を繰り返す。
もし、必死で抵抗すれば元親は帰蝶を解放するだろう。約束通り京にも送り返してくれるだろうが、帰蝶の前に二度と姿を見せる事も無いだろう。そんな気弱とも言える繊細さが元親には有った。
帰蝶が、父や兄や信長には与えて貰えなかった柔らかく包み込む様な愛情を、元親は持っている。
侠を重んじ面倒見が良く、其の容姿とは裏腹に兄貴然とした元親は、部下からも慕われていると評判だ。其の元親が強引に女を抱こうとするからには、さぞ悩み逡巡した事だろう。帰蝶が四国に来てなお眠る間、元親の心にも様々な葛藤があり、そうして今覚悟を決めて行動に出たのだ。
帰蝶が、父や兄や信長には与えて貰えなかった柔らかく包み込む様な愛情を、元親は持っている。
侠を重んじ面倒見が良く、其の容姿とは裏腹に兄貴然とした元親は、部下からも慕われていると評判だ。其の元親が強引に女を抱こうとするからには、さぞ悩み逡巡した事だろう。帰蝶が四国に来てなお眠る間、元親の心にも様々な葛藤があり、そうして今覚悟を決めて行動に出たのだ。
全て失くした瞬間、一番欲しかった物を与えられ、人生とは何と侭成らない物だろうかと、帰蝶は解ったつもり生きてきた自分を可笑しく思った。
鬼蝶7
鬼蝶7