睦言の後佐助はまず謝った。
どうも怖気づいて抱けなかったと言ったが、かすがは看破していた。
市井の道へ強引に放り込む事だって出来たのに、それをしなかったのは
彼が与えられた道と選んだ道の大きな違いを知っているからだ。
「……ウソツキ」
余韻を匂わせた甘い吐息で囁くとそのまま彼の耳を甘噛みした。
翌朝まだ暗い内に彼は発った。
起き上がると昨夜の名残が少し溢れる。
彼の激しさが一晩で体中を駆け抜け、まだ幾分気怠さを引き摺っていた。
――もっと早く体を重ねていれば叛かなかっただろうか。
髪を梳かしながら鏡の中の自分に問い掛ける。
それは違うと鏡に映る自分は答えた。
きっと自分は叛き、互いに憎み合いながら身体を求め合う爛れた関係に
なっていたか、叛いた時に殺されていただろう。
梳かして結った髪に翡翠の簪を挿す。
私服の時に着けて欲しいと言われたのはもう随分前だ。
見慣れない自分が鏡に映る。だがそれを見てもう取り乱す事はなかった。
ずっと昔から彼には自分の姿がこう映っていた。
市井の道を選んだ今、それを恥じる必要は無い。
今迄の事をすぐに全部忘れられないが、少なくとも心の奥底に鍵を掛けて
仕舞っておこうと決心した。
自分は最早剣で無く、唯の女なのだ。
秋も深まった頃、彼女は初めて体調の変化を感じた。
どうも怖気づいて抱けなかったと言ったが、かすがは看破していた。
市井の道へ強引に放り込む事だって出来たのに、それをしなかったのは
彼が与えられた道と選んだ道の大きな違いを知っているからだ。
「……ウソツキ」
余韻を匂わせた甘い吐息で囁くとそのまま彼の耳を甘噛みした。
翌朝まだ暗い内に彼は発った。
起き上がると昨夜の名残が少し溢れる。
彼の激しさが一晩で体中を駆け抜け、まだ幾分気怠さを引き摺っていた。
――もっと早く体を重ねていれば叛かなかっただろうか。
髪を梳かしながら鏡の中の自分に問い掛ける。
それは違うと鏡に映る自分は答えた。
きっと自分は叛き、互いに憎み合いながら身体を求め合う爛れた関係に
なっていたか、叛いた時に殺されていただろう。
梳かして結った髪に翡翠の簪を挿す。
私服の時に着けて欲しいと言われたのはもう随分前だ。
見慣れない自分が鏡に映る。だがそれを見てもう取り乱す事はなかった。
ずっと昔から彼には自分の姿がこう映っていた。
市井の道を選んだ今、それを恥じる必要は無い。
今迄の事をすぐに全部忘れられないが、少なくとも心の奥底に鍵を掛けて
仕舞っておこうと決心した。
自分は最早剣で無く、唯の女なのだ。
秋も深まった頃、彼女は初めて体調の変化を感じた。




