「――っ!!」
刹那、渾身の力でかすがは佐助を突き飛ばした。
たたらを踏んだ佐助はかすがの肩が荒々しく上下するのを不思議な面持で眺める。
突き飛ばした方も突き飛ばされた方も呆然とし、ただ無言で互いを見詰めて居た。
琥珀が歪む。桜色の唇が戦慄くが言葉は出なかった。
「妙……」
「その名で呼ぶな!」
かすがが鋭く制した。
「もう『妙』なんて居ない。私は謙信様のつるぎ――『かすが』だ!」
強く頭を振り縋り付く様にかすがは否定した。その必死な姿は悲痛さえ感じさせ、怒りを灯した
琥珀の内には焦燥が浮んでいる。
どうして優しくするんだ、もうこれ以上私を掻き乱すな――佐助はかすがの声無き叫びを聞いた。
分かってるよ――佐助もまた声に出さず呟く。
俺、嬉しかったんだぜ?お前が生きてて、新しい主に大切にされて。でも側に居て欲しいんだよ、
俺の顔に貼り付いた安っぽい笑顔を剥がせるのはお前だけだったんだ――つい感情が顔に出そうに
なって無理矢理佐助は笑った。
「……そうだったな」
なぁ、妙。俺今上手く笑えてるか?何でお前泣きそうなんだよ――かすがは答えない。
「次に呼んだら殺す…!」
そう言うと涙が溢れる前にかすがの姿は消え、黒く染められた長手拭だけが佐助の手に残った。
スダジイの葉が風に揺れる。
まだ温もりの残る布からは、僅かにかすがの匂いがした。
刹那、渾身の力でかすがは佐助を突き飛ばした。
たたらを踏んだ佐助はかすがの肩が荒々しく上下するのを不思議な面持で眺める。
突き飛ばした方も突き飛ばされた方も呆然とし、ただ無言で互いを見詰めて居た。
琥珀が歪む。桜色の唇が戦慄くが言葉は出なかった。
「妙……」
「その名で呼ぶな!」
かすがが鋭く制した。
「もう『妙』なんて居ない。私は謙信様のつるぎ――『かすが』だ!」
強く頭を振り縋り付く様にかすがは否定した。その必死な姿は悲痛さえ感じさせ、怒りを灯した
琥珀の内には焦燥が浮んでいる。
どうして優しくするんだ、もうこれ以上私を掻き乱すな――佐助はかすがの声無き叫びを聞いた。
分かってるよ――佐助もまた声に出さず呟く。
俺、嬉しかったんだぜ?お前が生きてて、新しい主に大切にされて。でも側に居て欲しいんだよ、
俺の顔に貼り付いた安っぽい笑顔を剥がせるのはお前だけだったんだ――つい感情が顔に出そうに
なって無理矢理佐助は笑った。
「……そうだったな」
なぁ、妙。俺今上手く笑えてるか?何でお前泣きそうなんだよ――かすがは答えない。
「次に呼んだら殺す…!」
そう言うと涙が溢れる前にかすがの姿は消え、黒く染められた長手拭だけが佐助の手に残った。
スダジイの葉が風に揺れる。
まだ温もりの残る布からは、僅かにかすがの匂いがした。




