悔しげに顔をゆがめた半兵衛が距離をとる。
まつには好都合だ。これ以上攻撃に転ずるつもりはない。
空に高らかに指笛が響く。
まつには好都合だ。これ以上攻撃に転ずるつもりはない。
空に高らかに指笛が響く。
「おいでませ、太郎丸!」
翼を広げ、巨大な鷹が一直線にまつのもとへと飛んでくる。
すれ違いざまに関節剣を受け取った賢い鷹は、そのまますぐに空の住人になる。
そこでようやく刀をおさめ、再び薙刀を手にする。
十分に距離をとられてしまえば、居合いの二撃目は通用すまいが、それで構わなかった。
すれ違いざまに関節剣を受け取った賢い鷹は、そのまますぐに空の住人になる。
そこでようやく刀をおさめ、再び薙刀を手にする。
十分に距離をとられてしまえば、居合いの二撃目は通用すまいが、それで構わなかった。
「ここまで厳しくなるとは、予想外だね」
ここだけ時間の流れが遅くなったかのように、やけにゆっくりと動いた半兵衛が、懐から取り出したのは――
似たようなものを見たことがある。
良人の主君であった織田信長の奥方、濃姫が忍ばせていたそれ。
南蛮渡来の――
良人の主君であった織田信長の奥方、濃姫が忍ばせていたそれ。
南蛮渡来の――
手の中の薙刀を再び捨て、まつは半兵衛に飛びかかり、反動でふたりまとめて船に転がった。
半兵衛の銃を争って、互いの口が吸えそうな距離で上へ下へ、
遠目に見たらまるで閨の中のような光景が広がっていたが、当人たちだけは命がけの真剣そのものである。
半兵衛の銃を争って、互いの口が吸えそうな距離で上へ下へ、
遠目に見たらまるで閨の中のような光景が広がっていたが、当人たちだけは命がけの真剣そのものである。
撃たせてはならない。まだ死ぬわけにはいかない。
――……今なら見逃してやろうぞ。
――間違っても死ぬんじゃねえぞ!
――間違っても死ぬんじゃねえぞ!
拾ってもらった生命なればこそ、これは自分だけのものではないのだ!