思ったより負傷兵が多く、周囲に更に罠が無いか確認しながら斥候を出して政宗の後を負わ
せたが、やはり半兵衛の言うとおり騎馬隊の行く先は変えられていたらしい。
闇雲に後を追っても消耗するだけと理解し、小十郎は策を巡らせた本人の口を割らせること
にした。
せたが、やはり半兵衛の言うとおり騎馬隊の行く先は変えられていたらしい。
闇雲に後を追っても消耗するだけと理解し、小十郎は策を巡らせた本人の口を割らせること
にした。
戦に怯えた農民たちが放置した集落を仮の陣屋にして、小十郎隊は警戒しつつ陣容を整えて
いた。
やや遠巻きに兵士を配置し、周囲に陣幕を張り巡らせた小屋に、小十郎は単身入って行った。
狭い板の間に、白いものが転がされている。
厳重に後ろ手に縛られ、脚も括られた竹中半兵衛であった。
いた。
やや遠巻きに兵士を配置し、周囲に陣幕を張り巡らせた小屋に、小十郎は単身入って行った。
狭い板の間に、白いものが転がされている。
厳重に後ろ手に縛られ、脚も括られた竹中半兵衛であった。
獣脂で作られた蝋燭を手に、小十郎は静かに近寄った。
半兵衛は急所を強打され、気を失ったままである。
その体を乱暴に引き起こし活を入れると、低い呻き声とともに、半兵衛が息を吹き返した。
小十郎は半兵衛の胸座を掴んで、こちらを向かせる。
その体を乱暴に引き起こし活を入れると、低い呻き声とともに、半兵衛が息を吹き返した。
小十郎は半兵衛の胸座を掴んで、こちらを向かせる。
「竹中。…政宗さまの隊の行方がわからぬ。貴様の仕掛けた罠は、どういう道筋だ。政宗さ
まを、どの辺りに迷い込ませた!?…言え!」
「嫌だね」
いつにも増して青白い半兵衛の顔を睨みながら、小十郎はきつく締め上げた。
「貴様、自分が今、どういう立場かわかっているのか!?」
「わかっているよ。…君に、無様に捕らえられているということはね。敵は殺せるときに、
殺しておくのが鉄則だろう。殺せよ」
「…………口の減らない奴だ…」
半兵衛の体を突き飛ばし、小十郎は呻いた。
まを、どの辺りに迷い込ませた!?…言え!」
「嫌だね」
いつにも増して青白い半兵衛の顔を睨みながら、小十郎はきつく締め上げた。
「貴様、自分が今、どういう立場かわかっているのか!?」
「わかっているよ。…君に、無様に捕らえられているということはね。敵は殺せるときに、
殺しておくのが鉄則だろう。殺せよ」
「…………口の減らない奴だ…」
半兵衛の体を突き飛ばし、小十郎は呻いた。
床に倒れた半兵衛の胸元に、赤いものが見えた。
小十郎に斬られた傷から、血が滲んだものだろう。
血止めの膏は塗っておいたが、斬られてからまだ時間が経っていない。
小十郎に斬られた傷から、血が滲んだものだろう。
血止めの膏は塗っておいたが、斬られてからまだ時間が経っていない。
そして、小十郎を躊躇わせたもの。
晒しが緩み、白くまろやかな形を見せているそれは、男にはないもの。
小十郎が目を逸らしたのをいぶかしんだ半兵衛は、自分の胸元を見た。
切り裂かれた戦装束から、自分の隠し事が見えていることに気付き、微かに笑った。
晒しが緩み、白くまろやかな形を見せているそれは、男にはないもの。
小十郎が目を逸らしたのをいぶかしんだ半兵衛は、自分の胸元を見た。
切り裂かれた戦装束から、自分の隠し事が見えていることに気付き、微かに笑った。
「…ああ。ばれちゃったんだ。片倉君。それで、僕を殺すのを躊躇った?」
「貴様に情けをかけたのは、政宗さまが万が一貴様の姦計に嵌った場合のことを考えてのこ
と。…言え!竹中!!」
「言えないな。秀吉が、危ない目に合うのは困る」
自分の身を顧みず、主を優先するのは確かに見上げた根性だった。
だが、小十郎はどこか苛々させられる。
「貴様に情けをかけたのは、政宗さまが万が一貴様の姦計に嵌った場合のことを考えてのこ
と。…言え!竹中!!」
「言えないな。秀吉が、危ない目に合うのは困る」
自分の身を顧みず、主を優先するのは確かに見上げた根性だった。
だが、小十郎はどこか苛々させられる。
武装を解けば佳人と名高くもなろう手弱女に見えるこの女人を、誰が何故ここまで殺伐とし
た場所へ追い込んだのか。
剣の腕も立ち、軍師としても一流。
だが、時々垣間見えるこの虚無感と投げやりな姿は、何から由来するのだろう。
た場所へ追い込んだのか。
剣の腕も立ち、軍師としても一流。
だが、時々垣間見えるこの虚無感と投げやりな姿は、何から由来するのだろう。
自分でもおかしいと思いながらも、小十郎は何かに突き動かされるように自分の行動を抑え
ることができなかった。
ることができなかった。
床に転がった半兵衛の胸元に手を突っ込むと、力任せに膨らみを握り締めた。
「………っ…!」
「言え。言わぬと、これよりも痛い目に遭うぞ」
言いながら、指に力を篭める。
「………っ…!」
「言え。言わぬと、これよりも痛い目に遭うぞ」
言いながら、指に力を篭める。
柔らかな乳房を鷲掴みにされ捻り上げられるのは、男には想像しにくいが相当に痛いのだろ
う。いつもの澄まし顔が、はっきりと苦痛に歪んでいた。
その顔に、小十郎は体の血が熱くなるのを感じた。
う。いつもの澄まし顔が、はっきりと苦痛に歪んでいた。
その顔に、小十郎は体の血が熱くなるのを感じた。
冷酷に、高飛車に、いつも皮肉な言葉を紡ぐその朱唇が、苦痛のために噛み締められている。
加えられる力のせいで胸元の傷が開き、血が滴った。
その鮮やかな色を見ても、半兵衛は動じない。
加えられる力のせいで胸元の傷が開き、血が滴った。
その鮮やかな色を見ても、半兵衛は動じない。
「竹中。俺とて、女人を斬りたくはないし嬲りたくもない。言え。政宗さまは、何処だっ!」
小十郎の恫喝にも、半兵衛は応じなかった。
「…女と見て、下手な情けはかけるなよ。片倉君。僕は、自分を女だと思っていない。それ
に、口だけじゃないのか。もう君の手は、僕を嬲っている」
「強情な…!」
数度きつく握り締めて赤い痕を残しながら、それでも歯を食いしばる姿を見て、小十郎はも
う少し直接的な手に訴えることにした。
小十郎の恫喝にも、半兵衛は応じなかった。
「…女と見て、下手な情けはかけるなよ。片倉君。僕は、自分を女だと思っていない。それ
に、口だけじゃないのか。もう君の手は、僕を嬲っている」
「強情な…!」
数度きつく握り締めて赤い痕を残しながら、それでも歯を食いしばる姿を見て、小十郎はも
う少し直接的な手に訴えることにした。




