戦国BASARA/エロパロ保管庫

BBB4

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主と共に歩くうちに、街道の脇で待たせていた馬車が見えてきた。
黒い箱型の馬車は小振りで、次期領主が乗る物にしては少し小さい。
小十郎は安全面からもう少し大きな馬車を使いたいと考えているのだが、どうせ乗るのは二人だけなんだからこれで十分だと政宗に言われたため、仕方なく妥協している。
まだ政宗が幼い頃は、せがまれるまま一頭の馬に政宗と共に乗っていた。
ある程度成長すると政宗を馬に乗せ小十郎が手綱を引くようになったが、帰り道などでは、乞われて昔のように二人乗りで馬を走らせもした。
しかし子供のうちはまだ看過されても、年頃の娘となればそうもいかない。
たとえ相手が家族以上に深い信頼を置く相手であっても、二人乗りなど好ましいものとはされない。
何よりそれは、よほどの緊急時でもなければ主従のする振る舞いとして許されるものではないのだ。
そういった理由も然ることながら警護の面からも、小十郎は数年前より政宗の移動の際には常に馬車を用意するようになった。
活動的で乗馬や狩りを好む政宗は、今でも時折、馬車を使うことにわかりやすく不満を見せる。
しかし自分の立場を良くわかってはいたから、文句を言いつつも、拒否はしなかった。
政宗は概して奔放で我侭だが、引くべき線、弁えるべき分別はきちんと解する聡明さも持ち合わせていた。
それでも、時にはあえてそれらを無視して小十郎を困らせることも多々あるため、小十郎の気苦労は絶えない。恐らくはこの先もそうなのだろう。
それが小十郎にとっては頭痛の種なのだが、同時に愛しくもある。
これが俗に、手のかかる子ほど可愛い、と言うやつなのかもしれない。

御者たちからもこちらの姿が見えたらしく、馬車の脇にしゃがんでいた二人の御者は即座に立ち上がると、腰から直角に体を曲げて勢い良く頭を下げた。
膝までを覆う薄い外套が動きに合わせて垂れ、腰に下げた刀の先が春の土筆さながらに裾から覗く。
「お嬢、お帰ぇりなさいッ!」
「お務め、お疲れサマですッ」
礼儀正しいといえば正しいが、どう聞いても真っ当に聞こえないのは揃って伝法な口調のせいだろう。
しかし政宗や小十郎にとってそれらは極当たり前のものだったし、町の者にしても疾うに聞き慣れてしまったものであったから、違和感を覚える者は皆無だった。
慣れというものは地味に恐ろしい。
「Hey、待たせて悪かったな」
政宗の言葉に、とんでもねぇです、と返しながら御者の一人が馬車の扉を開けた。
開かれた扉の横に立った小十郎が政宗へと手を差し伸べる。政宗はその手を支えにし、馬車に乗り込んだ。その後を追い、小十郎も馬車の中へと己の身を滑り込ませる。
流れる水にも似た、緩やかで滞るところのない二人の一連の所作。
それは無言のうちに彼らのあいだで積み上げられた年月と培われた絆が、いかに長く深いかを物語っていた。
「今日は如何致しますか」
主からわずかに距離を置いて隣に控えた小十郎の問いかけに、政宗は窓から空を見上げる。
「そうだな、天気も良いし……鳥の声も聞きたい」
「畏まりました」
小十郎は小さく頷くと、扉を閉めようとしていた御者に、森を通って帰るように告げた。


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