戦国BASARA/エロパロ保管庫

BBB13

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bsr_e

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昔とは違う意味での柔らかさを備えた体の重み。
幾重にも隔てられた布を越してじわりと染み入ってくる温もりに、一層の愛しさが募る。
思わず抱き支える腕に力が篭もりそうになり、奥歯を噛んでそれを耐えた。きつく噛み合わせた歯が軋み、不快な音を耳の奥に響かせる。

忠誠。崇拝。尊敬。庇護欲。傾倒。親愛。恋慕。
政宗へと抱く様々な感情から、ひとつだけが突出し始めたのはいつからだったか。
知らぬ間にそれは小十郎の中で他の何よりも大きく育っていた。
いつから。どうして。なぜ。
どれだけ自問自答を繰り返しても何一つわからない。
わかるのは、この感情が執事にあるまじきものでけして許されはしないことと、そうと理解出来ていながらも捨てられそうにないこと。それだけだ。
小十郎の心に巣食った恋情という名の虫は気付かぬうちに心を食い尽くし、心そのものに成り代わってしまった。もはや捨てようにも捨てられない。

分限を超えた主への恋慕を抱いていると知られれば、小十郎は間違いなく今の立場を追われるだろう。
だが──誰にも知られなければ。
知る者がいなければ、それは小十郎以外にとっては無いも同然だ。
忠実な執事の振りをしながらその裏で主に懸想していた恥知らず、二心を抱いていた裏切り者だと非難されて政宗から引き離されることも、政宗自身に軽蔑されることもない。
誰にも気付かれさえしなければ、今のまま、忠実で至誠な執事として政宗の傍にいられるのだ。
だから小十郎はけして誰にも気付かせないと決めた。
ひた隠し、胸の奥底深くに閉じ込めて、執事としての分を弁えたまま死ぬと決めた。
この想いは小十郎にとって一生の、墓まで持っていく秘密だ。

「……ん、…ぅ…」
不意に聞こえた不明瞭な呟きに、宙を見つめていた目を政宗へと向ける。
腕の中の政宗はいつのまにか狸寝入りが本当になっていたようで、静かな寝息を立てていた。
口が達者になり体つきも成長したが寝顔は今もあどけなさを残している。
しかし伏せた睫毛の影が落ちる頬に、淡く色づく唇に、緩やかな曲線を描く胸元に、零れる甘い寝息に、すべてに匂やかな艶が滲んでいて、もう子供ではないのだと思い知らされる。浅ましい欲を覚えて喉が鳴る。
触れようと思えばそれはきっと容易い。
政宗はすっかり眠りに落ち、無防備に身を預けている。
馬車の中には二人しかいない。
「…………、……」
口を開きかけて、止めた。唇を引き結び、出かけた言葉を飲み下す。
そして小十郎は執事としての顔も態度も崩さぬまま、主を抱き直した。その腕にも支える意図以上のものは含ませない。
当然だ。
胸に秘めた想いは、けして表に出さないと決めたのだから。

──けれど、もう少しだけ。

ほんのわずかでもこの時間が長引いてくれはしないかと、愛しいひとの眠りを見守りながら、小十郎は車輪が砂を踏む音を祈るような思いで聞いていた。


(了)
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