「我は、毛利の家を継ぐために、嫌々ながら男として生きてきた。だから、少々、伊達殿が
羨ましい」
元就はため息を洩らすように、話しはじめた。
「お家を守るため、女と侮られないため、領地を守るため。我は、我以外を恃みとせず、戦
ってきた。…我を主と思う兵も、将も、すべて駒。そう思わなければ、我は戦場には立てな
んだ。……我には、誰もいないのだから」
羨ましい」
元就はため息を洩らすように、話しはじめた。
「お家を守るため、女と侮られないため、領地を守るため。我は、我以外を恃みとせず、戦
ってきた。…我を主と思う兵も、将も、すべて駒。そう思わなければ、我は戦場には立てな
んだ。……我には、誰もいないのだから」
雨音が、やや静かになった。
「…何か、つまむものでも見繕ってこよう。元就君は、下戸だったよね」
衣擦れの音をさせて、半兵衛が出て行った。
衣擦れの音をさせて、半兵衛が出て行った。
「毛利殿は、下戸か」
「酒の匂いを嗅ぐのも……嫌だ」
やや、謙信に遠慮しながら、元就は答える。
「もったいなきこととも、おもいますが、ひとのこのみですしね」
言いながら、謙信はかすがに酌をさせて一体何杯盃を開けたか。
「酒の匂いを嗅ぐのも……嫌だ」
やや、謙信に遠慮しながら、元就は答える。
「もったいなきこととも、おもいますが、ひとのこのみですしね」
言いながら、謙信はかすがに酌をさせて一体何杯盃を開けたか。
「西国の男は、酒が好きそうだからなぁ。あんたも、大変だね。毛利殿。惚れた男も、酒が
好きかい?」
政宗の問いに、元就はあっさり頷いた。
好きかい?」
政宗の問いに、元就はあっさり頷いた。
「酒も好きらしいが、女人も艶やかなのが好きらしい。…我では、好みには合うまい」
細身の元就は、半兵衛同様姿はいいが、どこに肉がついているかわからない体型だ。
「……俺は、あんたたちの体が羨ましいけどなあ。はっきりいって、邪魔だぜ、コレ。剣を
振っても、走っても、馬に乗っても。もう、ゆさゆさゆさゆさ」
「それは、豊かな者の言い分。我は、少々、物足りぬ」
「そうかあ?」
元就は、端正な顔を俯けて、自分の胸に手を当てた。
手にした扇に視線を落とし、わずかに唇を噛む。
細身の元就は、半兵衛同様姿はいいが、どこに肉がついているかわからない体型だ。
「……俺は、あんたたちの体が羨ましいけどなあ。はっきりいって、邪魔だぜ、コレ。剣を
振っても、走っても、馬に乗っても。もう、ゆさゆさゆさゆさ」
「それは、豊かな者の言い分。我は、少々、物足りぬ」
「そうかあ?」
元就は、端正な顔を俯けて、自分の胸に手を当てた。
手にした扇に視線を落とし、わずかに唇を噛む。
「実はな……。激しく組み合っても、相手には我が女だとわからなかったらしいのだ」
元就の鎧は、極端に露出が少ない。出ている部分は、白い顔だけ、と言った具合だった。
組み合っただけでは、その体が女なのか、わかるまい。
そのあまりに冷たく固い姿がまた、彼女を崇める毛利軍には受けているらしいのだが。
元就の鎧は、極端に露出が少ない。出ている部分は、白い顔だけ、と言った具合だった。
組み合っただけでは、その体が女なのか、わかるまい。
そのあまりに冷たく固い姿がまた、彼女を崇める毛利軍には受けているらしいのだが。
「…ま、それはちょっとshockだな」
「……我は、そなたほど女らしい姿ではないが、な」
「にちりんのひめみこよ。すいたあいては、しこくのおにですか」
「戦いを重ねるごとに、打ち負かされようとも、勝とうとも、だんだんと我の気持ちのなか
で長曾我部が重きを為すようになった」
「……我は、そなたほど女らしい姿ではないが、な」
「にちりんのひめみこよ。すいたあいては、しこくのおにですか」
「戦いを重ねるごとに、打ち負かされようとも、勝とうとも、だんだんと我の気持ちのなか
で長曾我部が重きを為すようになった」
美しくも冷たい面は、それこそ人形のように静かなままだった。
「…じゃ、丁度良かったかな。…元就君。毛利と豊臣の盟約の約定として、僕達は中国の独
立を保障し、君には中国と四国の平定をしてもらうように言ったよね。平定が、縁組でも僕
達は一向に構わない」
襖の向こうから半兵衛の声がし、ついで紙蜀を手にした半兵衛が姿を見せた。
立を保障し、君には中国と四国の平定をしてもらうように言ったよね。平定が、縁組でも僕
達は一向に構わない」
襖の向こうから半兵衛の声がし、ついで紙蜀を手にした半兵衛が姿を見せた。
薄暗闇の中、物の怪のように浮ぶ半兵衛の背後には四国の鬼の姿があった。
「元就君。君を男だと思い込んでいた、四国の粗忽者を連れてきたよ」
「…あ………」
元就の声が、わずかに上擦った。
「…あ………」
元就の声が、わずかに上擦った。




