「……んな、旦那!」
聞き慣れた声に我に返る。忍よりも先に、蒼色の着物を目で追った。
独眼竜はずいぶんと間合いを取ってこちらを注視していた。
独眼竜はずいぶんと間合いを取ってこちらを注視していた。
「佐助か」
「佐助か。じゃないでしょ! 撤退令が出てるよ!」
「佐助か。じゃないでしょ! 撤退令が出てるよ!」
真上にあった太陽がすっかり傾きかけていることにようやく気づく。
鋭い口調で言いながらも、佐助は一瞬たりとも竜から注意を逸らすことはなかった。
幸村を背中から羽交い絞めするような格好のまま、じりじりとさらに距離をとる。
幸村を背中から羽交い絞めするような格好のまま、じりじりとさらに距離をとる。
「しかも、何考えてんだ。こんなとこで……こんな人と」
何を考えていたか? ――つい先刻のことなのに思い出せない。短くない時間、剣を交えていたはずなのに。
どこからともかく烏がやってきた。
どこからともかく烏がやってきた。
「行くよ!」
ひょいと身軽に烏につかまった佐助に抱えられるようにして、幸村も浮き上がる。
すぐにでも飛び去りそうな佐助にあせった幸村は叫んだ。
すぐにでも飛び去りそうな佐助にあせった幸村は叫んだ。
「伊達殿!」
顔をわずかに上向けて、独眼竜が視線をこちらに動かす。ひとつしかない視線が、こちらをとらえる。
「旦那!」
「……またいずれ、お手合わせ願いたい」
「……またいずれ、お手合わせ願いたい」
いらえは聞こえなかった。問答無用で佐助が烏を飛ばしたからだった。




