背中から抱えられるような体勢で馬が進む。不規則に揺られながら、政宗は思う。
(――貴方にとって、奥州さえも狭すぎる。きっとすぐさまこの地を平らげて、天下さえも伊達家のものとしてくれるでしょう)
一度死んだ政宗には、それだけが生きる意味だった。
かつて神童と謳われた政宗は、戦や政だけでなく、茶も歌も舞も大抵のことはこなす風流人ではあった。
しかし、それらに心を傾けすぎることは一瞬たりともなかった。
この生命もこの身体も、天下を目指すためのものなのだから。
かつて神童と謳われた政宗は、戦や政だけでなく、茶も歌も舞も大抵のことはこなす風流人ではあった。
しかし、それらに心を傾けすぎることは一瞬たりともなかった。
この生命もこの身体も、天下を目指すためのものなのだから。
ただ、あのとき。川中島での邂逅は。
時間の流れも戦う理由も生きる意味も、自分すら失った。
目の前の紅い男との境界線すらなくしたような気さえした。
目の前の紅い男との境界線すらなくしたような気さえした。
父母も弟もすでにない。
小十郎をはじめとする家臣たちは皆、ひとり残らず政宗のために生命を投げ出したがる。
そして、この男。背中に感じる体温。
眼差しが交錯すれば心の臓に火が点き、得物を抜いて正対すれば身体中を雷が奔り、
一たび剣を交えようものならば我を亡くして時さえも忘れた。
責任を取ると言い身体を気遣い奥州まで送り届けてくれると言うこの男。
真田幸村までも、この手で斬りたいと思っているのだ。生まれて初めて、あんなにも強く、誰かを斬りたいと思った。
小十郎をはじめとする家臣たちは皆、ひとり残らず政宗のために生命を投げ出したがる。
そして、この男。背中に感じる体温。
眼差しが交錯すれば心の臓に火が点き、得物を抜いて正対すれば身体中を雷が奔り、
一たび剣を交えようものならば我を亡くして時さえも忘れた。
責任を取ると言い身体を気遣い奥州まで送り届けてくれると言うこの男。
真田幸村までも、この手で斬りたいと思っているのだ。生まれて初めて、あんなにも強く、誰かを斬りたいと思った。
……自分はやはり、人の縁というものから遠いのかもしれない。自嘲するように笑った。




