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虎の若子と竜の姫4

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momo

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姫君がそもそも何故、『こんな話』を仕掛けてきたか。
俺に対する問いかけや、答えに対する反応や、そんなひとつひとつの中に
何らかの意図が含まれているのは明らかだ。
しかし残念ながら、俺にはその意図を読み取ることまではできていない。
ただ何となく浮かんだのは、竜の姫君は誰かを愛するということを、心の
どこかで怖れているのではないかという可能性で。
……正確には、愛した誰かを失うことを怖れている、とするべきか。
伊達家の事情は、風聞も含めて俺の耳にすら入ってきている。名門故の
悲劇と、それが引き金となって起こるすれ違いの連鎖。
今の俺よりも歳若いころから、一国を背負って生きなくてはならなかった
小さな姫君は、そのとき既に支えとすべき家族の愛情を失っていた。
普通なら与えられるのが当たり前のものを失い続け、代わりに手にしたのは
部下たちの強い忠誠心。
あの少々風変わりな、しかし比類なき結束力を誇る伊達軍の人々がどれほど
この姫君を崇拝し敬愛しているかは、敵対していたころから俺もよく見知っていた。
そしてまた、姫君も彼らを深く信頼していることも同様に。
けれども彼らの前で、このかたは『私』の部分を出すわけにはいかなかったはずだ。
国と民とを支えてゆく覚悟を定め、そして決意を貫き続けるからこそ、奥州に
属する人々の前では『公』の立場を突き通さねばならなかっただろう。
支配することに慣れ、忠義を受けることに慣れてはいても、私人として誰かに
好意を抱いたりするようなことはあったのだろうか。
名門に生まれた者として、次代に血を繋がねばならないのは当然のことだが、
その胸の奥底に過去の悲劇の傷痕が残り、誰かを愛し心を預けることに対する
怖れがあるのだとしたら。
愛する者を失うこと。愛する者の心が離れていくこと。人の心は移ろうものだと
いう不安が言わせたのがあの問いであり、俺の軽口に対する反応であるのなら、
それは何と哀しい言葉なのか――――
……己の思考に没頭していたとはいえ、武人としてそれは言い訳にしかならない
だろう。
ただでさえ並んで座るという状況に加え、俺の右腕は姫君の肩に回されていた、
そして気が付けば視界の中央に、こちらを見つめる隻眼の姫君の顔があった。


―――――お館様。これはあまりに近すぎまする!



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