一方その頃。
「まあまあ、どうだい一杯」
「これはご丁寧にどうも。もうすぐデベラ(デベラカレイ)と開タコ(タコの干
物)が焼けますから、一緒にどうですか?」
「ありがてぇ!なあ、この丸干しにユズかけてもいいか?」
「ああ、それはさっぱりして美味しそうですねぇ」
「まあまあ、どうだい一杯」
「これはご丁寧にどうも。もうすぐデベラ(デベラカレイ)と開タコ(タコの干
物)が焼けますから、一緒にどうですか?」
「ありがてぇ!なあ、この丸干しにユズかけてもいいか?」
「ああ、それはさっぱりして美味しそうですねぇ」
宵闇の中、大将ふたりを差し置いて、長曾我部と毛利の兵士達は、浜辺で宴会と
洒落込んでいた。
長曾我部の海賊達が、船から持ってきた酒を振舞う一方で、毛利の兵達が酒の肴
を炭火で炙っている。
「しっかし、お前さん達も大変だなぁ。大将の立てた作戦の為だけに、鉄砲玉や
んなきゃいけねぇなんてよ」
「いやいや。元就様の策については、我々大抵熟知しておりますので」
「あの人、何だかんだいって毎回幾何学に則った作戦を立てるから、一定の形が
判れば、あとは簡単なんですよ」
ひとりの兵士の言葉を聞いて、毛利の兵達からも「なあ」「そうだよな」等と声
が上がる。
「それよりもあなた達の方が、あのような美しく艶のある女性が大将で、余程苦
労されてるのでは?」
そう仄めかす毛利の兵に、長曾我部の兵は決然と答えた。
「なあに。俺達は、あの方だからこそ、ついていってるんだ。男も女も通り越え
て、俺達荒くれ共を纏め上げてくれる器を、あの方は持っている」
「…まあ、確かにムラムラきちゃう時もあるっスけど」
「オマエな。人がイィ話してる時に、腰折るような真似すんじゃねぇよ」
「いやいや、判ります。あの胸は、はっきり言って人類の至宝です」
「長曾我部殿には申し訳ありませんが、本当にいいものを拝ませて頂きました」
洒落込んでいた。
長曾我部の海賊達が、船から持ってきた酒を振舞う一方で、毛利の兵達が酒の肴
を炭火で炙っている。
「しっかし、お前さん達も大変だなぁ。大将の立てた作戦の為だけに、鉄砲玉や
んなきゃいけねぇなんてよ」
「いやいや。元就様の策については、我々大抵熟知しておりますので」
「あの人、何だかんだいって毎回幾何学に則った作戦を立てるから、一定の形が
判れば、あとは簡単なんですよ」
ひとりの兵士の言葉を聞いて、毛利の兵達からも「なあ」「そうだよな」等と声
が上がる。
「それよりもあなた達の方が、あのような美しく艶のある女性が大将で、余程苦
労されてるのでは?」
そう仄めかす毛利の兵に、長曾我部の兵は決然と答えた。
「なあに。俺達は、あの方だからこそ、ついていってるんだ。男も女も通り越え
て、俺達荒くれ共を纏め上げてくれる器を、あの方は持っている」
「…まあ、確かにムラムラきちゃう時もあるっスけど」
「オマエな。人がイィ話してる時に、腰折るような真似すんじゃねぇよ」
「いやいや、判ります。あの胸は、はっきり言って人類の至宝です」
「長曾我部殿には申し訳ありませんが、本当にいいものを拝ませて頂きました」
こういう点については、敵だろうが味方だろうが、共通の認識を持っているよう
である。
「あの…ぶっちゃけ、『そういう』時はどうなさってるんですか?ま、まさかあ
の方に…その……」
「バカヤロウ!俺らがお嬢にンな真似する訳ねぇだろ!」
毛利兵の不躾な問い掛けに、海賊達は顔を真っ赤にさせて反論した。
「大体、お嬢は接吻もまだなんだぞ!お守りの中にしのばせた初恋の人の絵姿
を、こっそり眺めては溜め息吐いてるくらい、そっちの方面に関しちゃ晩生(お
くて)なんだからな!」
「そうそう!夜中にひとりで『源氏物語』の写本を、何度も読み返しては涙ぐ
んでたり!」
「湯浴みの度に『また、胸が大きくなっちゃった』とか『もう、これ以上背が伸
びないで』なんて、ベソかいてたり!」
「……もしかしなくても、それ全部覗いてたんですか?」
彼らの熱過ぎる力説とは裏腹に、毛利の兵たちは些か空気が寒くなるのを覚えた。
瀬戸内のカイとゲルダ13
である。
「あの…ぶっちゃけ、『そういう』時はどうなさってるんですか?ま、まさかあ
の方に…その……」
「バカヤロウ!俺らがお嬢にンな真似する訳ねぇだろ!」
毛利兵の不躾な問い掛けに、海賊達は顔を真っ赤にさせて反論した。
「大体、お嬢は接吻もまだなんだぞ!お守りの中にしのばせた初恋の人の絵姿
を、こっそり眺めては溜め息吐いてるくらい、そっちの方面に関しちゃ晩生(お
くて)なんだからな!」
「そうそう!夜中にひとりで『源氏物語』の写本を、何度も読み返しては涙ぐ
んでたり!」
「湯浴みの度に『また、胸が大きくなっちゃった』とか『もう、これ以上背が伸
びないで』なんて、ベソかいてたり!」
「……もしかしなくても、それ全部覗いてたんですか?」
彼らの熱過ぎる力説とは裏腹に、毛利の兵たちは些か空気が寒くなるのを覚えた。
瀬戸内のカイとゲルダ13




