「一度でいい…私も堕ちたの。この体は血の匂いしかしない…」
「貴女は私にとって、今も昔も手の届かない存在です…」
「堕ちたのよ…」
「信長公とは…どうされたのです?」
「あの人は人じゃないわ。私を抱こうともしなかった…」
「……ではまさか?」
「…まだ…よ。だからあなたに…」
意味は汲んでくれた。私はまだ、「女」を知らないと。
「女」を捨ててきたのだから当たり前だが、まだ汚れてない事に誇りがあった。
だから今、この人に捧げたかった。
狂人ではなく、英雄のこの男に。
「貴女は私にとって、今も昔も手の届かない存在です…」
「堕ちたのよ…」
「信長公とは…どうされたのです?」
「あの人は人じゃないわ。私を抱こうともしなかった…」
「……ではまさか?」
「…まだ…よ。だからあなたに…」
意味は汲んでくれた。私はまだ、「女」を知らないと。
「女」を捨ててきたのだから当たり前だが、まだ汚れてない事に誇りがあった。
だから今、この人に捧げたかった。
狂人ではなく、英雄のこの男に。
抱きすくめた腕は動かない。ただ背中に体温を送ってくれるだけ。
少しずつ聞こえる新たな音は、お互いの鼓動。
「こんな場所では…貴女を抱けない…」
「布団の上なんて私には勿体無いわ…」
「ならば…せめて…」
彼は手近な旗を手に取り、地面に敷いた。描かれているのは、桔梗の文様。
「私の心を敷きます…」
「私なんかに…」
「帰蝶様」
かつての彼の瞳が、私を射抜く。
「その様な言葉は聞きたくありません…今でも…可愛い姫君です…」
「…そう…」
ゆっくり彼は腕を外した。私はそのまま上体を後ろに倒す。
「蝶と桔梗…あなたの好きにして…」
「御意…」
蝶と聖(しょう)3
少しずつ聞こえる新たな音は、お互いの鼓動。
「こんな場所では…貴女を抱けない…」
「布団の上なんて私には勿体無いわ…」
「ならば…せめて…」
彼は手近な旗を手に取り、地面に敷いた。描かれているのは、桔梗の文様。
「私の心を敷きます…」
「私なんかに…」
「帰蝶様」
かつての彼の瞳が、私を射抜く。
「その様な言葉は聞きたくありません…今でも…可愛い姫君です…」
「…そう…」
ゆっくり彼は腕を外した。私はそのまま上体を後ろに倒す。
「蝶と桔梗…あなたの好きにして…」
「御意…」
蝶と聖(しょう)3