いや、さすがに全く知らないという事もない。
コウリトリが運んでくるのではない、女の腹から出てくるのだときちんと理解していた。
兄が結婚した時、空を仰いでコウノトリに良い御子を、と祈っていたら笑われたから。
コウリトリが運んでくるのではない、女の腹から出てくるのだときちんと理解していた。
兄が結婚した時、空を仰いでコウノトリに良い御子を、と祈っていたら笑われたから。
それでは、とそろそろ年頃に差し掛かってきた稽古仲間達と、
子供がどこからくるのかという話題になった時、(何故だか仲間は皆元就から視線を外したが)
どうやら子を作るときには、男が女の上に乗って、それで子種を植え付けるものらしいと、
持ち寄った情報を合わせてそう結論付けた。
子供がどこからくるのかという話題になった時、(何故だか仲間は皆元就から視線を外したが)
どうやら子を作るときには、男が女の上に乗って、それで子種を植え付けるものらしいと、
持ち寄った情報を合わせてそう結論付けた。
元就を除く男子は皆、寝起きに『元気になっちゃった』り、
或いは遊び疲れてふと目に入った少女――当然、元就なのだが――の白い首筋に、
髪が一房、汗で張り付いている様を見たときに心の臓が早まる感覚等が関係しているのだと判っていたのだが。
或いは遊び疲れてふと目に入った少女――当然、元就なのだが――の白い首筋に、
髪が一房、汗で張り付いている様を見たときに心の臓が早まる感覚等が関係しているのだと判っていたのだが。
当の元就はまったく実感がわかず、それからすぐにあの弟にさらしを渡される出来事があり、
真相はわからぬままであった。
月のものに関しては、養母にやはり同じ位の年に「松寿さまもそろそろ」と、
そういうものがあって段々大人の体に変化してゆくのだと教わったが、肝心の子作りの方法に関しては、
それは、松寿さまがもっと大きくなられて、素敵な殿方と恋に落ちれば自然とわかるものですから、
と言って教えてもらえなかった。
養母にしてみれば、常から女は嫌だ男になりたいと主張する元就に、
性の営みの有り様を知らせるのはあまりに酷、との気遣いからの発言であって、
美しい少女であるからあと数年もすれば言い寄る男性にも事欠かないだろうし、
本人の自覚も芽生えるだろうと楽観していた。
それが、まずい事の一つでもあった。
真相はわからぬままであった。
月のものに関しては、養母にやはり同じ位の年に「松寿さまもそろそろ」と、
そういうものがあって段々大人の体に変化してゆくのだと教わったが、肝心の子作りの方法に関しては、
それは、松寿さまがもっと大きくなられて、素敵な殿方と恋に落ちれば自然とわかるものですから、
と言って教えてもらえなかった。
養母にしてみれば、常から女は嫌だ男になりたいと主張する元就に、
性の営みの有り様を知らせるのはあまりに酷、との気遣いからの発言であって、
美しい少女であるからあと数年もすれば言い寄る男性にも事欠かないだろうし、
本人の自覚も芽生えるだろうと楽観していた。
それが、まずい事の一つでもあった。
その後の元就は恋愛事になぞまるで興味を持たないままだった。
読む本といえば孫子などといった兵法書ばかりで、稀に一般教養として万葉集等の古典を嗜む程度。
仲間に拒絶され、毛利の上に立つ以上、男を見る目は完全に『使える駒か否か』になってしまった。
読む本といえば孫子などといった兵法書ばかりで、稀に一般教養として万葉集等の古典を嗜む程度。
仲間に拒絶され、毛利の上に立つ以上、男を見る目は完全に『使える駒か否か』になってしまった。
そんなこんなですっかり体も立場も立派に大人なのだけれども、
やはり元就は具体的な子の作り方を知らぬまま、跡取りの父の品定めに来てしまった。
こんな男――長曾我部元親などという、粗野の塊のような男に対してよもや恋に落ちる事もあるまいが、
きっと実践では、やはりそうと教えられた『本能』に従っていけば大丈夫だろう。
本能とは、つまり腹が減ったとか眠いといった事か?と養母に問えば、
少し困った笑顔で、そう、と答えてくれた。あとは、殿方に任せればよいのですから、とも。
ただ人に任せきりになるなど不愉快極まりないが、そういうものなら致し方ない、と半ば不貞腐れて諦める。
やはり元就は具体的な子の作り方を知らぬまま、跡取りの父の品定めに来てしまった。
こんな男――長曾我部元親などという、粗野の塊のような男に対してよもや恋に落ちる事もあるまいが、
きっと実践では、やはりそうと教えられた『本能』に従っていけば大丈夫だろう。
本能とは、つまり腹が減ったとか眠いといった事か?と養母に問えば、
少し困った笑顔で、そう、と答えてくれた。あとは、殿方に任せればよいのですから、とも。
ただ人に任せきりになるなど不愉快極まりないが、そういうものなら致し方ない、と半ば不貞腐れて諦める。
(種、というからには小さくて硬い粒のようなものなのだろうか。)
それならばわざわざ上に乗らんでもよいではないか。
嫌だ、と思って改めて元親に不快を表した視線を送る。
清水に、「やはり、別の者を当たってみる」と返答しようとした矢先に元親が
「今何か呼んだか?!」と腹立たしいほど快活な笑顔で再び寄ってきた。
嫌だ、と思って改めて元親に不快を表した視線を送る。
清水に、「やはり、別の者を当たってみる」と返答しようとした矢先に元親が
「今何か呼んだか?!」と腹立たしいほど快活な笑顔で再び寄ってきた。
元親は元親で、元就を見ては(あれだけ細かったら、あいつが上しかないな)と考えていた。
騎乗位か対面座位か、とにかく俺が上は無理があるな、と。
騎乗位か対面座位か、とにかく俺が上は無理があるな、と。




