穏やかな幸村の返事を聞いた政宗は、己の言った科白を痛烈に後悔する。
「それでは、それがしはこれで失礼致します。どうぞ元親殿や片倉殿にも、よろしく
お伝え下され」
深々と頭を下げた幸村は、やがてゆっくりと踵を返した。
次第に自分から遠ざかって行く幸村の背を、何故か不安になった政宗は、慌てて追い
かけようとした。
だが、先刻まで元親としこたま酒を飲んでいたのもあり、何歩か進んだ所で身体の均
衡を崩してしまう。
「それでは、それがしはこれで失礼致します。どうぞ元親殿や片倉殿にも、よろしく
お伝え下され」
深々と頭を下げた幸村は、やがてゆっくりと踵を返した。
次第に自分から遠ざかって行く幸村の背を、何故か不安になった政宗は、慌てて追い
かけようとした。
だが、先刻まで元親としこたま酒を飲んでいたのもあり、何歩か進んだ所で身体の均
衡を崩してしまう。
「──政宗殿!」
すると異常を察知したのか、、つまずきそうになった政宗を、弾かれたように戻って
きた幸村の身体が、がっしりと支えてきた。
強靭な筋肉に覆われた骨太の腕に包まれた政宗は、瞬時に胸の鼓動を速める。
「だ、大丈夫でござるか…?」
「あ、ああ…thanks。助かった……」
見上げてくる政宗の視線を受けて、幸村は、今自分がどのようにして彼女に触れてい
るか改めて認識すると、次の瞬間、弾かれたようにその身を離した。
きた幸村の身体が、がっしりと支えてきた。
強靭な筋肉に覆われた骨太の腕に包まれた政宗は、瞬時に胸の鼓動を速める。
「だ、大丈夫でござるか…?」
「あ、ああ…thanks。助かった……」
見上げてくる政宗の視線を受けて、幸村は、今自分がどのようにして彼女に触れてい
るか改めて認識すると、次の瞬間、弾かれたようにその身を離した。
「す、すすすす…っ、すみませぬ!お、お怪我は!?お怪我はございませぬか!?」
「だ、だ、だだだだ大丈夫!大丈夫だから、落ち着け!落ち着けよ幸村!」
「だ、だ、だだだだ大丈夫!大丈夫だから、落ち着け!落ち着けよ幸村!」
僅かに距離を開けたふたりは、互いに顔を赤くさせながらそっぽを向き合う。
「……な、なあ。こっちには、いつまでいるんだよ」
暫し沈黙を守っていた政宗は、どうにか気を取り直すと、幸村に尋ねた。
「は…?え、ええと、そうですね。…今度の中秋の名月あたりまでは」
「だったら、その日の夜は空けておけ。甲斐に戻る前に、奥州の月見をする余裕くら
いあんだろ」
「え…」
思わぬ政宗の提案を聞いた幸村は、その焦げ茶色の眼(まなこ)を見開いた。
「その頃なら、元親のヤツも四国に帰ってる。お前が気にする必要なんか、何もねぇ。
どうせお前の事だから、まともにこっちにゃ来ねぇんだろ?せめて十五夜くらい付き
合えや」
「ですが…」
「てめぇ…俺に恥かかす気か……?」
「い、いいえ!滅相も無い!」
「だったら、大人しく言うとおりにしろ!その日は、月見をしにここへ来い!いいな!?」
「……はい」
「……な、なあ。こっちには、いつまでいるんだよ」
暫し沈黙を守っていた政宗は、どうにか気を取り直すと、幸村に尋ねた。
「は…?え、ええと、そうですね。…今度の中秋の名月あたりまでは」
「だったら、その日の夜は空けておけ。甲斐に戻る前に、奥州の月見をする余裕くら
いあんだろ」
「え…」
思わぬ政宗の提案を聞いた幸村は、その焦げ茶色の眼(まなこ)を見開いた。
「その頃なら、元親のヤツも四国に帰ってる。お前が気にする必要なんか、何もねぇ。
どうせお前の事だから、まともにこっちにゃ来ねぇんだろ?せめて十五夜くらい付き
合えや」
「ですが…」
「てめぇ…俺に恥かかす気か……?」
「い、いいえ!滅相も無い!」
「だったら、大人しく言うとおりにしろ!その日は、月見をしにここへ来い!いいな!?」
「……はい」
無理矢理承諾の返事をさせた政宗は、照れ臭さから、半ば幸村を追い出すように屋敷
の門まで送った。
そして、にこやかに手を振り返しながら去っていく幸村の姿を、見つめていた政宗だ
ったが、
の門まで送った。
そして、にこやかに手を振り返しながら去っていく幸村の姿を、見つめていた政宗だ
ったが、
「ああぁ……俺のバカ、俺のバカ、俺のバカ~!」
約束を取り付けた嬉しさと、それ以上に「もっとましな言い方は出来なかったのか」
「他に伝えたい事が、いっぱいあったんじゃないのか」という自責の念に、いつまで
も駆られ続けていた。
「他に伝えたい事が、いっぱいあったんじゃないのか」という自責の念に、いつまで
も駆られ続けていた。




