註:ここから暫し、編み笠…もといオクラ×お嬢サイドとなります。
直接的表現は控えておりますが、多少の性描写がありますので、苦手な方はお気をつけ下さい。
直接的表現は控えておりますが、多少の性描写がありますので、苦手な方はお気をつけ下さい。
か細い寝息を立てている元親を、元就は無言で見下ろす。
そして、閉じられた目元が僅かに腫れているのを認めると、手を伸ばし、肌理の細かい
彼女の頬をそっと撫ぜた。
「また、泣いていたのか…」
あの時。
瀬戸内諸国の会合へ集結した大名達の大半の目的は、四国の長曾我部が所有する南蛮渡来の新兵器と、その所有者である元親であった。
『見境なしに男を咥え込む大女』『四国の当主は、はしたなき鬼女郎』など、事実無根
の風評は、いつしか勝手に独り歩きを始めた挙げ句、元親の素性を知らぬ男たちに、あ
らぬ妄想を掻き立てるまでになっていた。
そればかりか、長曾我部の女当主を蹂躙する事で兵器の獲得を狙おうという、愚かな者
達まで現れたのだ。
実際の元親を知る人間にとっては、馬鹿馬鹿しいと思うような話だが、これでもかと尾
ひれがついた噂に惑わされる者があまりにも多すぎた事と、元親本人の類稀な容姿も、
単なる『こじ付け』を『確信』に摩り替える要因となっていたのである。
そして、閉じられた目元が僅かに腫れているのを認めると、手を伸ばし、肌理の細かい
彼女の頬をそっと撫ぜた。
「また、泣いていたのか…」
あの時。
瀬戸内諸国の会合へ集結した大名達の大半の目的は、四国の長曾我部が所有する南蛮渡来の新兵器と、その所有者である元親であった。
『見境なしに男を咥え込む大女』『四国の当主は、はしたなき鬼女郎』など、事実無根
の風評は、いつしか勝手に独り歩きを始めた挙げ句、元親の素性を知らぬ男たちに、あ
らぬ妄想を掻き立てるまでになっていた。
そればかりか、長曾我部の女当主を蹂躙する事で兵器の獲得を狙おうという、愚かな者
達まで現れたのだ。
実際の元親を知る人間にとっては、馬鹿馬鹿しいと思うような話だが、これでもかと尾
ひれがついた噂に惑わされる者があまりにも多すぎた事と、元親本人の類稀な容姿も、
単なる『こじ付け』を『確信』に摩り替える要因となっていたのである。
偶然彼らの計画を知った元就は、何とかして元親を遠ざけようとしたが、生憎元就が視
察に行くのは、彼女とは別の島であった。
時間がない焦りも手伝ってか、捻り出された元就の策は、はっきり言っていつもの彼か
らは、想像のつかぬものであった。
何故なら、元就自ら『鬼の大女』を、手篭めにしようというものだったからだ。
どうにか口実をつけて、元親を倉庫へ誘い出した元就は、隙を見て彼女を気絶させた後、抵抗を封じる為に、彼女が持っていた碇槍の鎖でその身体を拘束した。
そして、目を醒ました元親と既成事実を作り、彼女を自分のもとへ置き、彼らと同じ船
に乗せぬよう企てたのである。
元就も、元親の噂を信じていた訳ではないが、彼女に魅せられた男のひとりふたりはい
るだろう、と考えていた。
ところが、そんな元就の計算の甘さは、震え、泣き叫ぶ元親の姿に、打ち砕かれたので
ある。
察に行くのは、彼女とは別の島であった。
時間がない焦りも手伝ってか、捻り出された元就の策は、はっきり言っていつもの彼か
らは、想像のつかぬものであった。
何故なら、元就自ら『鬼の大女』を、手篭めにしようというものだったからだ。
どうにか口実をつけて、元親を倉庫へ誘い出した元就は、隙を見て彼女を気絶させた後、抵抗を封じる為に、彼女が持っていた碇槍の鎖でその身体を拘束した。
そして、目を醒ました元親と既成事実を作り、彼女を自分のもとへ置き、彼らと同じ船
に乗せぬよう企てたのである。
元就も、元親の噂を信じていた訳ではないが、彼女に魅せられた男のひとりふたりはい
るだろう、と考えていた。
ところが、そんな元就の計算の甘さは、震え、泣き叫ぶ元親の姿に、打ち砕かれたので
ある。
(お願い、やめて…助けて……かあ、さま……隼人……)
(……私…もう、お嫁さ…ん……行かれないよぉ……)
(……私…もう、お嫁さ…ん……行かれないよぉ……)
元就の腕の中にいたのは、『鬼』などではなかった。
理不尽な暴力によって、なす術も無く身体を引き裂かれたか弱き『姫』が、絶望の涙を
流し続けていたのである。
事が済んだ後、元親はすっかり怯え切ってしまい、元就が彼女の身体の汚れを拭う為に
近付いただけでも、泣いて嫌がった。
腰を抜かせて立てないばかりか、心身的ストレスから熱を出した元親は、結局視察の一
行が戻ってくるまでの間、ずっと四国の自室で寝込んでいたのだった。
理不尽な暴力によって、なす術も無く身体を引き裂かれたか弱き『姫』が、絶望の涙を
流し続けていたのである。
事が済んだ後、元親はすっかり怯え切ってしまい、元就が彼女の身体の汚れを拭う為に
近付いただけでも、泣いて嫌がった。
腰を抜かせて立てないばかりか、心身的ストレスから熱を出した元親は、結局視察の一
行が戻ってくるまでの間、ずっと四国の自室で寝込んでいたのだった。




