オクラは、ふたりきりの時はお嬢の事を『お前』と呼び、女言葉を使わせます。
かつての『姫』のようにしたいという願望と、お嬢が自分の女である事を強調する為です。
蒼紅に比べると、えらくこのふたりがただれた関係に思えてきます。
かつての『姫』のようにしたいという願望と、お嬢が自分の女である事を強調する為です。
蒼紅に比べると、えらくこのふたりがただれた関係に思えてきます。
「…それでは、最近の瀬戸内諸国における動向について……」
四国の長曾我部の一室で行われた、瀬戸内諸大名による定例の会合の席において、参加者の視線は、とある武将に一斉に注がれていた。
四国の長曾我部の一室で行われた、瀬戸内諸大名による定例の会合の席において、参加者の視線は、とある武将に一斉に注がれていた。
(『四国の鬼女』は、あんなに美しかっただろうか……?)
かつて、無体な真似を企てようとしていた大名のひとりが、対角の位置に坐する長曾我部元親の姿を盗み見る。
流石にいつもの海賊の装束ではないが、それまで決して身に着けることの無かった女物の小袖を纏い、器用に編み込んだ銀髪には、メノウの髪飾りがさり気なく彩られ、質素な中にも趣味の良さが際立っていた。
そして、付け焼刃では出来ない完璧な立ち振る舞いに、約一名を除いた大名の誰もが、元親から目を離す事が出来なかったのである。
流石にいつもの海賊の装束ではないが、それまで決して身に着けることの無かった女物の小袖を纏い、器用に編み込んだ銀髪には、メノウの髪飾りがさり気なく彩られ、質素な中にも趣味の良さが際立っていた。
そして、付け焼刃では出来ない完璧な立ち振る舞いに、約一名を除いた大名の誰もが、元親から目を離す事が出来なかったのである。
「ち、長曾我部殿」
無事に会合が終了した後。
件の大名のひとりが、廊下を歩く元親に声を掛けた。
小首を傾げて反応を返してきた元親に、彼はらしくもなく、胸をどぎまぎさせる。
「あ、あ~…その。先程会合の席でそなたが話していた航海術について、詳しく聞きたいと思ってな」
「ならば、それらに関する書物の写しをお渡ししますので、そちらをご覧になって下さい」
「あー、いや。出来れば、そなた直々にご教授賜りたいのだが……」
「はぁ…?」
無遠慮に自分の手を引いてきた男に、元親が少々困惑気味に表情を曇らせていると、
無事に会合が終了した後。
件の大名のひとりが、廊下を歩く元親に声を掛けた。
小首を傾げて反応を返してきた元親に、彼はらしくもなく、胸をどぎまぎさせる。
「あ、あ~…その。先程会合の席でそなたが話していた航海術について、詳しく聞きたいと思ってな」
「ならば、それらに関する書物の写しをお渡ししますので、そちらをご覧になって下さい」
「あー、いや。出来れば、そなた直々にご教授賜りたいのだが……」
「はぁ…?」
無遠慮に自分の手を引いてきた男に、元親が少々困惑気味に表情を曇らせていると、
「元親。ここにいたのか」
「もとな…毛利殿」
「げっ、も、毛利……」
「もとな…毛利殿」
「げっ、も、毛利……」
硬質な声と共に、元就の手が、男の不躾なそれを振り解いてきた。
「元親は、既に我と結納を交わしている。我の与り知らぬ所で、彼女にちょっかいを出すのは、止めて頂きたい」
「な…っ、ぶ、無礼な!ただ拙者は、長曾我部殿に尋ねたき事があって……」
「それでも、元親に話がある時は我を通して頂きたい。もうすぐ毛利の妻となる女が、どこぞの男とあらぬ噂を立てられても、困りますからな」
「この…言わせておけば……ったたた!」
「──お聞き届け頂けますな」
見かけからは想像もつかぬ力で、掴んだ腕を更に握り込んできた元就に、男はほうほうの体で退散する。
「元就、やり過ぎじゃ…」
「『握り込んだのが腕だっただけ、ましだと思え』だ。それに、半分はお前の所為だぞ。我以外の男の前で、いらぬ愛想を振りまくな」
「べ、別に振りまいてなんか!」
「元親は、既に我と結納を交わしている。我の与り知らぬ所で、彼女にちょっかいを出すのは、止めて頂きたい」
「な…っ、ぶ、無礼な!ただ拙者は、長曾我部殿に尋ねたき事があって……」
「それでも、元親に話がある時は我を通して頂きたい。もうすぐ毛利の妻となる女が、どこぞの男とあらぬ噂を立てられても、困りますからな」
「この…言わせておけば……ったたた!」
「──お聞き届け頂けますな」
見かけからは想像もつかぬ力で、掴んだ腕を更に握り込んできた元就に、男はほうほうの体で退散する。
「元就、やり過ぎじゃ…」
「『握り込んだのが腕だっただけ、ましだと思え』だ。それに、半分はお前の所為だぞ。我以外の男の前で、いらぬ愛想を振りまくな」
「べ、別に振りまいてなんか!」
四国に戻って以来、元就の自分に対する想いと、己の正直な気持ちを確認した元親は、自分に自信が持てるようになった。
そして、それは元々充分に備えていた彼女の魅力を解放するに至り、弥が上にも周囲の人間を、惹き付けていったのである。
そして、それは元々充分に備えていた彼女の魅力を解放するに至り、弥が上にも周囲の人間を、惹き付けていったのである。




