その余りの壮絶さに、政宗は幸村に会う勇気をすっかり削がれてしまい、そのまま彼の元へ駆け寄る事も出来ぬまま、逃げ出すように甲斐を後にしてしまった。
かといって、奥州に戻るに戻れずに困り果てた挙げ句、政宗の脳裏に思い浮かんだのは、四国の心友の笑顔しかなかったのだ。
かといって、奥州に戻るに戻れずに困り果てた挙げ句、政宗の脳裏に思い浮かんだのは、四国の心友の笑顔しかなかったのだ。
「俺、ダメだ。絶対アイツに嫌われた……もう俺、ここにいる。お前と一緒に船に乗る!」
「ちょ、ちょっと待て、落ち着けよ政宗!未だそうだと決まった訳じゃねぇだろう!何もしない内に決め付けんのは、良くねぇぞ!?」
「そうだ!元親は近い将来我と祝言を挙げた後、陸に上がるのだぞ。貴様の都合にこやつを巻き込むな!」
「……さっきから、テメェは黙ってろっつってるだろうがああぁ!!」
「ちょ、ちょっと待て、落ち着けよ政宗!未だそうだと決まった訳じゃねぇだろう!何もしない内に決め付けんのは、良くねぇぞ!?」
「そうだ!元親は近い将来我と祝言を挙げた後、陸に上がるのだぞ。貴様の都合にこやつを巻き込むな!」
「……さっきから、テメェは黙ってろっつってるだろうがああぁ!!」
泣きながら元親の腰にしがみつき始めた政宗を、大人気なく引き剥がそうとする元就と、そんな彼の脳天に踵を落とす元親とで、不本意な混乱を巻き起こしていると、
「失礼します。元親様、客人がお見えになられましたが」
「またかよ?ったく、何なんだ今日は…あー、今はホントに接客中だから、明日にして貰ってくんないか」
「それが…どうも目当てが、竜の嬢ちゃんみたいなんスよ。『こちらに、伊達政宗殿というお方が、いらっしゃると思うのですが』って、赤い服着た若造が」
「…は?」
「ほぉ」
「──えぇっ!?」
「まさむねどのー。そちらにおられますか?」
「失礼します。元親様、客人がお見えになられましたが」
「またかよ?ったく、何なんだ今日は…あー、今はホントに接客中だから、明日にして貰ってくんないか」
「それが…どうも目当てが、竜の嬢ちゃんみたいなんスよ。『こちらに、伊達政宗殿というお方が、いらっしゃると思うのですが』って、赤い服着た若造が」
「…は?」
「ほぉ」
「──えぇっ!?」
「まさむねどのー。そちらにおられますか?」
三者三様の声の後で、室内の面々が反応を返していると、次いで記憶に新しい穏やかな声が、外から聞こえてきた。
反射的に逃げ出そうとしている政宗の首根っこを捕まえると、元親は政宗を正面から見据えた。
「お前流に言えば、これが最後の『ちゃんす』だろうが。いいのか?このまま逃げて、アイツに何も言わないまま終わりにしても。アイツに不実な女って思われたままダメになっても」
「それは……ヤダ……」
「だったら、ちゃんと話し合え。お前の事を好きでも何でもない男が、わざわざこんな所までお前を訪ねに来たりするか?」
まるで、かつて自分が小十郎に言われた時と同じようにして、元親は政宗に諭す。
戸惑いがちにだが、やがて小さく頷いた政宗を見て、元親は家臣に声を掛けると、来訪者を一番良い客間に通すよう告げた。
「俺ので良ければ、服とか化粧とか貸してやるけど、どうする?」
「……No thanks.もう小細工はナシにして、素のままでアイツに会って、ちゃんと話をする」
「そうか」
好意的に微笑んだ元親は、政宗の手を引いて立ち上がらせる。
「外の人間について行けば、客間まで案内してくれっから。行って来い」
「お、おぅ」
「我々のお膳立て出来るのは、ここまでだ。後は、自分で何とかするのだな」
「……お前、別に何にもしてねーじゃねぇかよ」
元就に突っ込みを入れながら、元親は自室の戸口から、そっと政宗の肩を叩いた。
不安げにこちらを振り返る政宗に、瀬戸内のふたりは、片手と親指を上げてひと言激励する。
反射的に逃げ出そうとしている政宗の首根っこを捕まえると、元親は政宗を正面から見据えた。
「お前流に言えば、これが最後の『ちゃんす』だろうが。いいのか?このまま逃げて、アイツに何も言わないまま終わりにしても。アイツに不実な女って思われたままダメになっても」
「それは……ヤダ……」
「だったら、ちゃんと話し合え。お前の事を好きでも何でもない男が、わざわざこんな所までお前を訪ねに来たりするか?」
まるで、かつて自分が小十郎に言われた時と同じようにして、元親は政宗に諭す。
戸惑いがちにだが、やがて小さく頷いた政宗を見て、元親は家臣に声を掛けると、来訪者を一番良い客間に通すよう告げた。
「俺ので良ければ、服とか化粧とか貸してやるけど、どうする?」
「……No thanks.もう小細工はナシにして、素のままでアイツに会って、ちゃんと話をする」
「そうか」
好意的に微笑んだ元親は、政宗の手を引いて立ち上がらせる。
「外の人間について行けば、客間まで案内してくれっから。行って来い」
「お、おぅ」
「我々のお膳立て出来るのは、ここまでだ。後は、自分で何とかするのだな」
「……お前、別に何にもしてねーじゃねぇかよ」
元就に突っ込みを入れながら、元親は自室の戸口から、そっと政宗の肩を叩いた。
不安げにこちらを振り返る政宗に、瀬戸内のふたりは、片手と親指を上げてひと言激励する。
「「ぐっど らっく(Good luck)」」
その言葉に背中を押されるように、政宗はゆっくりと、しかし着実に前へと歩を進め始めた。




