「アニキー、けっこーイイ感じでしたぜ」
さっきまで遠巻きにして馬鹿騒ぎをしていた長曾我部軍の一人がやってきて耳打ちした。
「だろー。やっぱなー。さぁてどうやって落とすかな」
「女ってのは、一発やっちまえばしおらしくなっちまうもんです」
「わかってるよ!んなこたぁ」
ぽかりと部下の頭をこづき、懐から陶器の小瓶を取り出す。
「アニキ、なんです?それ」
「明の商人に押しつけられた媚薬混じりの痺れ薬だ。なかなか言うことを聞かない女を抱くための物とか言ってやがった」
篝火にかざすとつるりとした陶肌が光る。
青で牡丹が絵付けされた品のいい瓶だ。
言われなければ中身がそんなものだとは誰も思わないだろう。
「そ、そんなん盛って大丈夫ですかぃ?後が怖いっす。ついでに盛れますかね、あの知将に」
「おめえもそう思うか。それが問題だよなー」
さっきまで遠巻きにして馬鹿騒ぎをしていた長曾我部軍の一人がやってきて耳打ちした。
「だろー。やっぱなー。さぁてどうやって落とすかな」
「女ってのは、一発やっちまえばしおらしくなっちまうもんです」
「わかってるよ!んなこたぁ」
ぽかりと部下の頭をこづき、懐から陶器の小瓶を取り出す。
「アニキ、なんです?それ」
「明の商人に押しつけられた媚薬混じりの痺れ薬だ。なかなか言うことを聞かない女を抱くための物とか言ってやがった」
篝火にかざすとつるりとした陶肌が光る。
青で牡丹が絵付けされた品のいい瓶だ。
言われなければ中身がそんなものだとは誰も思わないだろう。
「そ、そんなん盛って大丈夫ですかぃ?後が怖いっす。ついでに盛れますかね、あの知将に」
「おめえもそう思うか。それが問題だよなー」
ざわざわと浜が騒がしくなった。
「おい、どうした」
声をかけると一人が振り向く。
「白拍子です。踊らせてくれって」
なるほど、群衆の向こうには被衣姿の狩衣を着た女が立っている。
「へぇー面白そうだ。やらせろよ」
「わかりやした・・・おい!やれとのお達しだ!」
それを聞くと女は膝を曲げて軽く挨拶すると見事に舞いだした。
「なかなかだな。都仕込みって感じだ」
あまり期待していなかった元親は意外な仕事振りに目を見張る。
うるさく品のない足軽たちも杯を止めて見入るほどである。
そして夢か現か分からぬ天上の舞はすうっと終わった。
一瞬空いて拍手が起こる。
元親も上機嫌で女を呼んだ。
「おい、こっちへこい」
女は声の方に向きなおるとゆったり足を踏み出すが、急にぐうっと身を屈めた。
おや、と思う間もなく女はずらり、と舞のために差していた刀を抜くやいなや元親に殺到する。
「!」
周りもあまりのことに反応が遅れた。
女は疾風のような速さで元親に迫り、刀を一閃した。
ビシャッ!
「ぁ!」
小さな悲鳴。
元親が女に小瓶の中身をぶっかけたのだ。
女は被衣を脱ぎ捨て目くらましに元親の眼前へ投げつけると逃げ去った。
一瞬見えた、女の右目には。
「・・・眼帯、か?」
「おい、どうした」
声をかけると一人が振り向く。
「白拍子です。踊らせてくれって」
なるほど、群衆の向こうには被衣姿の狩衣を着た女が立っている。
「へぇー面白そうだ。やらせろよ」
「わかりやした・・・おい!やれとのお達しだ!」
それを聞くと女は膝を曲げて軽く挨拶すると見事に舞いだした。
「なかなかだな。都仕込みって感じだ」
あまり期待していなかった元親は意外な仕事振りに目を見張る。
うるさく品のない足軽たちも杯を止めて見入るほどである。
そして夢か現か分からぬ天上の舞はすうっと終わった。
一瞬空いて拍手が起こる。
元親も上機嫌で女を呼んだ。
「おい、こっちへこい」
女は声の方に向きなおるとゆったり足を踏み出すが、急にぐうっと身を屈めた。
おや、と思う間もなく女はずらり、と舞のために差していた刀を抜くやいなや元親に殺到する。
「!」
周りもあまりのことに反応が遅れた。
女は疾風のような速さで元親に迫り、刀を一閃した。
ビシャッ!
「ぁ!」
小さな悲鳴。
元親が女に小瓶の中身をぶっかけたのだ。
女は被衣を脱ぎ捨て目くらましに元親の眼前へ投げつけると逃げ去った。
一瞬見えた、女の右目には。
「・・・眼帯、か?」




