強く、唇を押し付けた。政宗は抵抗するように頭を振るが、小十郎は頭を抑え付けて唇を貪った。
口腔を蹂躙すれば、簡単に息が上がる。
「嫌だ」
唇を離すと、震える声で呟かれた。
「嫌でも構わないんですよ。ただ俺は、俺の思いを遂げたいだけなんです」
手に入らないことは分かっている。この体は、何もかもがあの甲斐の若虎のものなのだ。それでも小十郎は手に入れたくてたまらなかった。
「そんなの……変だ……」
「変で結構。叫びたければ叫べばいい。俺は、あんたが欲しくて欲しくてたまらない」
「それは」
「けどあんたはあいつのものになった。何もかもを、敵としてあるべき、あの男に捧げた」
「だって俺は、あいつが」
「本当に?」
わざと、嘲るような笑みを浮かべた。獰猛な何かが鎌首をもたげ、小十郎を支配した。そしてそれを止めようとは思わなかった。
欲しい。手に入れたい。けれどそれができない。
ならば壊してしまえ。誰の手にも渡らぬように。
「知ってますか。捕虜って奴はね、大事にしてやると簡単に忠誠を誓っちまうもんなんです。
ずっと逃げ出す隙を伺ってると、それが執着から来るものなのか忠誠からくるものなのか分からなくなる。
そうなったときに慈悲を見せると、簡単に忠誠を誓う。まこと、執着って奴は恐ろしい」
「違う!」
「男と女なら尚更だ。秘密を守らせて手管にとろうとしているうちに、殺そうと隙を伺ってるうちに、
自分もあいつを好きになったような気になってる。そうじゃないと言い切れるんですか?」
「っ………!」
政宗の顔がゆがんだ。否定する言葉の代わりに涙が零れた。舌を出して雫を舐め、代わりに自分の唾液を付けた。
首筋を舐めると、ひっと喉がひきつったような声を漏らした。
「違うんだったら、なんとか言ったらどうなんですか?」
返事はない。政宗の首筋に顔を埋め、跡をつける。
白い肌にぽつりとついた跡が驚くほど婀娜(あだ)めいていて、小十郎は目を伏せて再び首筋に顔を埋めた。
胸を、強く押された。
拒まれている。当たり前だろう。身も、心も、政宗は別の男に預けている。
対等に渡り合い、命を奪い合いながらも心を通わし、好敵手と認めているあの男に。
自分は家臣でしかない。最初から対等に渡り合うことなど許されない。
上から見下ろされ、見上げる関係でしかない。
「やめろ」
拒絶の言葉を聞き流しながら着物を寛げ、胸をきつく抑えている晒しを引き裂いた。
ふるり、と白い胸がしゃくり上げるように揺れた。
大きさはあるが、それ以上に形がいい。男の欲を煽る形をしている。
袴の紐に手をかけると、いよいよ抵抗が激しくなる。おとなしくさせるために薄い笑みを見せ付けた。
狂ったように笑い出したいのをこらえる。今笑い出せば、おそらく本当に気がふれてしまうだろう。
坂を転がるように狂うのは悪くない。けれど、今はそのときではない。
まだこの女を壊していない。
「やめて、小十郎っ……!」
涙の滲んだ声も、強く押してくる白い手も、何もかもが小十郎を煽る。
「叫べばいい。人を呼べばいい。俺は手打ちになるでしょうね。けど、そうなったら誰があんたを守るんですか?」
双眸が燃えた。六爪を繰る、女にしては大きな、けれど小十郎のものよりずっと小さな手が小十郎の胸を強く掴む。
肉をえぐるような強い力だが、痛みよりも悦楽が勝った。
「卑怯者っ……!」
搾り出される罵倒の言葉は意外にも凡百極まりなく、小十郎は思わず喉の奥でくつくつと笑った。
「卑怯と言われようと、下劣と蔑まれようと、俺はあんたを手に入れたい。あんたを壊しちまいたいんだ」
ぐ、と胸を強く押した。柔らかく吸い付いてくる感触に、頭の中が痺れた。
欲望を覆い隠すような余裕などすでになくなった脳に直接訴えかけてくる感触は、小十郎を奮い立たせた。
張り出した欲望を見、政宗は逃げ出そうと必死に抵抗するが、白い肌をさらけ出す手伝いをしていることに本人は気づいていない。
口腔を蹂躙すれば、簡単に息が上がる。
「嫌だ」
唇を離すと、震える声で呟かれた。
「嫌でも構わないんですよ。ただ俺は、俺の思いを遂げたいだけなんです」
手に入らないことは分かっている。この体は、何もかもがあの甲斐の若虎のものなのだ。それでも小十郎は手に入れたくてたまらなかった。
「そんなの……変だ……」
「変で結構。叫びたければ叫べばいい。俺は、あんたが欲しくて欲しくてたまらない」
「それは」
「けどあんたはあいつのものになった。何もかもを、敵としてあるべき、あの男に捧げた」
「だって俺は、あいつが」
「本当に?」
わざと、嘲るような笑みを浮かべた。獰猛な何かが鎌首をもたげ、小十郎を支配した。そしてそれを止めようとは思わなかった。
欲しい。手に入れたい。けれどそれができない。
ならば壊してしまえ。誰の手にも渡らぬように。
「知ってますか。捕虜って奴はね、大事にしてやると簡単に忠誠を誓っちまうもんなんです。
ずっと逃げ出す隙を伺ってると、それが執着から来るものなのか忠誠からくるものなのか分からなくなる。
そうなったときに慈悲を見せると、簡単に忠誠を誓う。まこと、執着って奴は恐ろしい」
「違う!」
「男と女なら尚更だ。秘密を守らせて手管にとろうとしているうちに、殺そうと隙を伺ってるうちに、
自分もあいつを好きになったような気になってる。そうじゃないと言い切れるんですか?」
「っ………!」
政宗の顔がゆがんだ。否定する言葉の代わりに涙が零れた。舌を出して雫を舐め、代わりに自分の唾液を付けた。
首筋を舐めると、ひっと喉がひきつったような声を漏らした。
「違うんだったら、なんとか言ったらどうなんですか?」
返事はない。政宗の首筋に顔を埋め、跡をつける。
白い肌にぽつりとついた跡が驚くほど婀娜(あだ)めいていて、小十郎は目を伏せて再び首筋に顔を埋めた。
胸を、強く押された。
拒まれている。当たり前だろう。身も、心も、政宗は別の男に預けている。
対等に渡り合い、命を奪い合いながらも心を通わし、好敵手と認めているあの男に。
自分は家臣でしかない。最初から対等に渡り合うことなど許されない。
上から見下ろされ、見上げる関係でしかない。
「やめろ」
拒絶の言葉を聞き流しながら着物を寛げ、胸をきつく抑えている晒しを引き裂いた。
ふるり、と白い胸がしゃくり上げるように揺れた。
大きさはあるが、それ以上に形がいい。男の欲を煽る形をしている。
袴の紐に手をかけると、いよいよ抵抗が激しくなる。おとなしくさせるために薄い笑みを見せ付けた。
狂ったように笑い出したいのをこらえる。今笑い出せば、おそらく本当に気がふれてしまうだろう。
坂を転がるように狂うのは悪くない。けれど、今はそのときではない。
まだこの女を壊していない。
「やめて、小十郎っ……!」
涙の滲んだ声も、強く押してくる白い手も、何もかもが小十郎を煽る。
「叫べばいい。人を呼べばいい。俺は手打ちになるでしょうね。けど、そうなったら誰があんたを守るんですか?」
双眸が燃えた。六爪を繰る、女にしては大きな、けれど小十郎のものよりずっと小さな手が小十郎の胸を強く掴む。
肉をえぐるような強い力だが、痛みよりも悦楽が勝った。
「卑怯者っ……!」
搾り出される罵倒の言葉は意外にも凡百極まりなく、小十郎は思わず喉の奥でくつくつと笑った。
「卑怯と言われようと、下劣と蔑まれようと、俺はあんたを手に入れたい。あんたを壊しちまいたいんだ」
ぐ、と胸を強く押した。柔らかく吸い付いてくる感触に、頭の中が痺れた。
欲望を覆い隠すような余裕などすでになくなった脳に直接訴えかけてくる感触は、小十郎を奮い立たせた。
張り出した欲望を見、政宗は逃げ出そうと必死に抵抗するが、白い肌をさらけ出す手伝いをしていることに本人は気づいていない。