「おい、何を。」
「…みてけろ。」
震える手で、いつきは首の後ろの結び目を解いた。
はらりと前掛けが落ちて上半身が露になる。
「…みてけろ。」
震える手で、いつきは首の後ろの結び目を解いた。
はらりと前掛けが落ちて上半身が露になる。
「変わらないべ?」
小さな二つの膨らみ、凹凸の少ない幼い体つき。
「去年と『ほんの少しも』かわってないべ?」
それを見てようやく小十郎はさっき感じた違和感の正体を知った。
小さな二つの膨らみ、凹凸の少ない幼い体つき。
「去年と『ほんの少しも』かわってないべ?」
それを見てようやく小十郎はさっき感じた違和感の正体を知った。
いつきはまだ12、3だと思っていた。
だが育ち盛りの筈のその小さな体は、去年出会った時とまるで変わっていないように見える。
だが育ち盛りの筈のその小さな体は、去年出会った時とまるで変わっていないように見える。
『大きくなんてなれねえだ』
―――まさか
「成長してねぇって言うのか?」
始めは気のせいだと思っていたと、いつきはかすれる様な声で言った。
天から授かったあの大きな武器。
それを手にして戦い出したあの日から、恐らく成長は止まっていたのだと。
始めは気のせいだと思っていたと、いつきはかすれる様な声で言った。
天から授かったあの大きな武器。
それを手にして戦い出したあの日から、恐らく成長は止まっていたのだと。
一つの戦が終り振り返る。
同い年の吾作の身長が伸び、両親が妙に老け込んでいた。
同い年の吾作の身長が伸び、両親が妙に老け込んでいた。
水鏡に映る自分の姿は変わらないように見えるのに。
祝言があって花嫁の綺麗さにときめいた。
いつか自分も大きくなって綺麗な花嫁さんになるんだと家の柱に傷をつけた。
傷は幾年か前に着けた傷をただえぐっただけだった。
怖くなって両親を見る。
両親は笑った。
いつか自分も大きくなって綺麗な花嫁さんになるんだと家の柱に傷をつけた。
傷は幾年か前に着けた傷をただえぐっただけだった。
怖くなって両親を見る。
両親は笑った。
お前はそれでいいだ。
神さんの力授かった巫だ。
お前がそのまま村を守っていてくれるのが一番村の為になる。
と。
神さんの力授かった巫だ。
お前がそのまま村を守っていてくれるのが一番村の為になる。
と。
――気が付いてただ?
身体中の力が抜け、震えそうになる。
おとさんとおっかさんの気持が分からない訳でねえ。
だけど――
おとさんとおっかさんの気持が分からない訳でねえ。
だけど――
何か言いたいのに口からはヒューヒューとしか息がもれるだけ。
そんな時祝言を上げた吾作がお嫁さんを連れて挨拶に来た。
そんな時祝言を上げた吾作がお嫁さんを連れて挨拶に来た。
吾作は『村の守り神みたいなもんだ』といつきを紹介した。
思えばいつからか吾作はいつきと目を合わせなくなっていた。
この時もニコニコと微笑みながらしっかりといつきを見る事はしない。
花嫁はそれに気付かずいつきを見て微笑んだ。
いつきの頭にそっと白い手を乗せ「小さいのに凄いのね」そう言ったのだった。
思えばいつからか吾作はいつきと目を合わせなくなっていた。
この時もニコニコと微笑みながらしっかりといつきを見る事はしない。
花嫁はそれに気付かずいつきを見て微笑んだ。
いつきの頭にそっと白い手を乗せ「小さいのに凄いのね」そう言ったのだった。