道標 ◆CFbjQX2oDg
公園のベンチに座って読書をしている帽子にスーツ姿の男がいた。
男の体格は大きく、手にもった文庫本が余計に小さく見える。
ガサガサと木の枝が風に揺れる。
パタンと微かな音を立てて本を閉じて夜空を見上げる。
強く輝く満月と数多の星々が、この島の環境を空気が良く澄んでいて自然が豊かと教えてくれている。
男の体格は大きく、手にもった文庫本が余計に小さく見える。
ガサガサと木の枝が風に揺れる。
パタンと微かな音を立てて本を閉じて夜空を見上げる。
強く輝く満月と数多の星々が、この島の環境を空気が良く澄んでいて自然が豊かと教えてくれている。
座っている男の名は鯨。
職業、自殺屋。
職業、自殺屋。
帽子から覗かせる鯨の左眼は眼帯で覆われている。
別に左眼が失明している訳ではない。
鯨の両目は商売道具であり、特殊な“能力”を秘めているため、常に晒しているものでは無いと本人が自覚しているからだ。
過去に鯨に対してこう言った男がいる。
鯨の両目を見ると自分の中の罪悪感や無力感が増大する、と。
生きていくことが苦痛になる、と。
際限無く増大したそれらに耐え切れなくなり、自殺してしまう。
別に左眼が失明している訳ではない。
鯨の両目は商売道具であり、特殊な“能力”を秘めているため、常に晒しているものでは無いと本人が自覚しているからだ。
過去に鯨に対してこう言った男がいる。
鯨の両目を見ると自分の中の罪悪感や無力感が増大する、と。
生きていくことが苦痛になる、と。
際限無く増大したそれらに耐え切れなくなり、自殺してしまう。
夜空を見上げながら鯨は先程あった事柄について考える。
鯨の頭の中を占めているのは死神による殺し合えという宣言ではない。
ゴーグルを付けた制服姿の少女の首が飛んだことでもない。
ましてや大魔王を名乗る老人の登場でもない。
鯨の頭の中を占めているのは死神による殺し合えという宣言ではない。
ゴーグルを付けた制服姿の少女の首が飛んだことでもない。
ましてや大魔王を名乗る老人の登場でもない。
鯨の頭はジャージの女の子が少年の剣術によって切り裂かれたシーンが延々と繰り返されている。
別にジャージの少女が鯨の知り合いという訳ではない。
別に勇者と呼ばれた少年が鯨の知り合いという訳ではない。
職業柄慣れているので人の死に動揺した訳でもない。
別に勇者と呼ばれた少年が鯨の知り合いという訳ではない。
職業柄慣れているので人の死に動揺した訳でもない。
確かにジャージの女の子の身体を切り裂いたのは勇者と呼ばれたあの少年だ。
あの場にいた連中もほとんどが下手人は少年だと思うだろう。
だが俺は見た。
少女の背後に幽鬼の様に佇む男を。
あの場にいた連中もほとんどが下手人は少年だと思うだろう。
だが俺は見た。
少女の背後に幽鬼の様に佇む男を。
俺の直感が告げる。
間違いない。
あれは『押し屋』だ。
業界最高峰と噂される殺し屋だ。
間違いない。
あれは『押し屋』だ。
業界最高峰と噂される殺し屋だ。
◇ ◆ ◇
こんな昔話がある。
とある不思議な瞳を持った男がいた。
その瞳は現代社会には不適格。気が付けば男は裏の社会に居場所を見つけた。
ある日いつもの様に依頼を受けた。
標的となった女は男の愛読書を知っていた。
ただそれだけのことで男は女に対して感情を持ってしまった。
それは別に恋愛感情ではない。ただ、妙な親近感を抱いてしまったのだ。
男は初めて依頼を放棄して女を見逃した。
女は不思議そうに逃げた。
だけど、女は死んだ。
事故死だったらしい。
道路に突然飛び出してトラックに轢かれたそうだ。
噂で聞いた。
依頼を達成しそこねた男の代わりに依頼主が別に雇って始末したと。
その後の男は依頼を失敗することなく淡々とこなしていった。
だが、男はこの仕事に疲れを感じてきていた。
知り合いのホームレスの占い師に言われた。
過去を清算しないとお前は次に進めないと。
お前がするべきことは過去と――だ。
とある不思議な瞳を持った男がいた。
その瞳は現代社会には不適格。気が付けば男は裏の社会に居場所を見つけた。
ある日いつもの様に依頼を受けた。
標的となった女は男の愛読書を知っていた。
ただそれだけのことで男は女に対して感情を持ってしまった。
それは別に恋愛感情ではない。ただ、妙な親近感を抱いてしまったのだ。
男は初めて依頼を放棄して女を見逃した。
女は不思議そうに逃げた。
だけど、女は死んだ。
事故死だったらしい。
道路に突然飛び出してトラックに轢かれたそうだ。
噂で聞いた。
依頼を達成しそこねた男の代わりに依頼主が別に雇って始末したと。
その後の男は依頼を失敗することなく淡々とこなしていった。
だが、男はこの仕事に疲れを感じてきていた。
知り合いのホームレスの占い師に言われた。
過去を清算しないとお前は次に進めないと。
お前がするべきことは過去と――だ。
◇ ◆ ◇
閉じた本をデイバックに入れて名簿を確認する。
見知った名前は犬養舜二くらいだ。
犬養は違う。
犬養と自分を除いた81人の中に『押し屋』がいる。
見知った名前は犬養舜二くらいだ。
犬養は違う。
犬養と自分を除いた81人の中に『押し屋』がいる。
いや、待て。
そもそも押し屋がいたから何だと言うんだ。
業界最高峰という看板に興味などない。
特別自分の仕事に誇りを持っているわけでもない。
一体俺の中で何が引っかかっていると言うんだ。
そもそも押し屋がいたから何だと言うんだ。
業界最高峰という看板に興味などない。
特別自分の仕事に誇りを持っているわけでもない。
一体俺の中で何が引っかかっていると言うんだ。
「おっちゃん大丈夫か?」
ヘッドホンを付けたユルそうな顔の少年が目の前にいた。
声をかけられるまで気付かなかったのは少年が凄いのか、それとも鯨が思案していたためか。
鯨は名簿をデイバックに戻しながら立ち上がる。
声をかけられるまで気付かなかったのは少年が凄いのか、それとも鯨が思案していたためか。
鯨は名簿をデイバックに戻しながら立ち上がる。
「大丈夫だ」
「そりゃあ良かった。おいらは麻倉葉。ところでおいら以外に誰か見なかった? 赤いバンダナしたすっごい怖い女の子とか」
少年は両手で自らの目の端を吊り上げる仕草をしながら訪ねてくる。
その怖い女の子に対して怯えているというよりは心配しているのを無理して虚勢を張っているように思える。
その怖い女の子に対して怯えているというよりは心配しているのを無理して虚勢を張っているように思える。
「見ていないな」
「……そっか」
先程の推測が大きく外れていないことをガクッと下がった少年の両肩が教えてくれた。
「じゃあ、悪いけどおいらもう行くな」
「お前はこの島で目的の人物に会えると思うのか? 既に殺されている可能性もあるんだぞ?」
「おいらも面倒臭いのは好きじゃない。すぐにアンナに会えないかもしれない。けど、なんとかなるさ」
少年は笑顔で言って立ち去っていった。
少年の背中を見ながら少年の最後の言葉が耳に残る。
少年の背中を見ながら少年の最後の言葉が耳に残る。
――なんとかなる。
ひどく曖昧で確証の無い言葉だ。
それなのに少年の顔を見ると本気でどうにかなりそうな印象を受けた。
それなのに少年の顔を見ると本気でどうにかなりそうな印象を受けた。
――未来は神様のレシピで決まる
同時にこの言葉が頭に浮かぶ。
人は皆何かしらの役割を担って行動しているという意味だ。
死神や大魔王の役割は俺と押し屋を再び交わらせた。
ジャージの少女と勇者の少年は押し屋の存在を気づかせた。
人は皆何かしらの役割を担って行動しているという意味だ。
死神や大魔王の役割は俺と押し屋を再び交わらせた。
ジャージの少女と勇者の少年は押し屋の存在を気づかせた。
お膳立てされたものかもしれない。
こう考えることすら決まっていたのかもしれない。
だが、ここで立ち止まっていても仕方が無い。
少年の言葉は不思議と俺の心を行く先を示してくれた気がした。
燻っていた心を動かすんだ。
さぁ、決まりだ。
自らの過去と――
こう考えることすら決まっていたのかもしれない。
だが、ここで立ち止まっていても仕方が無い。
少年の言葉は不思議と俺の心を行く先を示してくれた気がした。
燻っていた心を動かすんだ。
さぁ、決まりだ。
自らの過去と――
押し屋と―――対決だ!!
【E-6/公園/一日目・深夜】
【鯨@魔王 JUVENILE REMIX】
[状態]:健康
[装備]:『罪と罰』(元々所持)
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:『押し屋』と決着をつける
1:とりあえず移動しながら情報を集める
2:殺し合い自体は割りとどうでも良い
3:アンナか……一応気にしといてやるか。
[状態]:健康
[装備]:『罪と罰』(元々所持)
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:『押し屋』と決着をつける
1:とりあえず移動しながら情報を集める
2:殺し合い自体は割りとどうでも良い
3:アンナか……一応気にしといてやるか。
【E-6/市街地/一日目・深夜】
【麻倉葉@シャーマンキング】
[状態]:健康
[装備]:阿弥陀丸の位牌
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:アンナとの合流
1:アンナ……待ってろよ
2:蓮たちは多分なんとかなるだろう
[状態]:健康
[装備]:阿弥陀丸の位牌
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:アンナとの合流
1:アンナ……待ってろよ
2:蓮たちは多分なんとかなるだろう
| 漢、影虎。 | 投下順 | それでも変えられぬ道よ |
| 漢、影虎。 | 時系列順 | それでも変えられぬ道よ |
| GAME START | 鯨 | [[]] |
| GAME START | 麻倉葉 | [[]] |
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