*こおりのなかにいる* ◆DIAm5T7lI6
◇ ◇ ◇
ただの道具が、ある日突然にただの道具でなくなることがある。
人に思いを籠められ、道具を憑代として魂が宿るのだ。
魂が宿り意思を手に入れた道具は、もはやただの道具ではない。
自由に思考して動き回るものを、人は道具などと呼ばない。
人に思いを籠められ、道具を憑代として魂が宿るのだ。
魂が宿り意思を手に入れた道具は、もはやただの道具ではない。
自由に思考して動き回るものを、人は道具などと呼ばない。
ある世界ではそれらを『モンスター』と呼び、またある世界では『精霊』と呼ぶ。
◇ ◇ ◇
「…………んあ?」
間延びした声をあげて、少年が目を覚ました。
ヘアバンドで上げた髪をかきむしりながら、ゆっくりと首を回して周囲を確認する。
碓氷ホロケウと名簿に記されていた彼は、決して殺し合いの舞台でいきなり眠るほど不用心な人間ではない。
まず身を隠してからデイパックを開いた辺り、むしろ冷静に対処するタイプと言える。
名簿と地図に目を通したのち、支給されているという道具を確認しようと手を伸ばした直後。
ホロケウの視界は霧に包まれ、意識を手放してしまった。
そして、見せられていた。
名簿にあったマルモという名の少女が出てくる幻覚を。
ヘアバンドで上げた髪をかきむしりながら、ゆっくりと首を回して周囲を確認する。
碓氷ホロケウと名簿に記されていた彼は、決して殺し合いの舞台でいきなり眠るほど不用心な人間ではない。
まず身を隠してからデイパックを開いた辺り、むしろ冷静に対処するタイプと言える。
名簿と地図に目を通したのち、支給されているという道具を確認しようと手を伸ばした直後。
ホロケウの視界は霧に包まれ、意識を手放してしまった。
そして、見せられていた。
名簿にあったマルモという名の少女が出てくる幻覚を。
「お前か」
ホロケウが語りかけたのは、彼を見下ろすように立っていた巨大なドラゴン型の金属人形だ。
ところどころが錆びついているそれは、とても返事をするようには見えない。
どう見ても、意思を持たぬただの金属の塊である。
しかし、ホロケウはシャーマンだ。
金属の塊が精霊化して金属の魂となっていることなど、見れば分かる。
にもかかわらず、ドラゴンは微動だにしない。
やれやれと吐き捨てて、ホロケウは傍らで眠りこけている持ち霊へと声をかける。
どうやら、一緒に幻覚に巻き込まれていたらしい。
たったの一言「起きろよ」と声をかけられただけで、すぐに彼女は飛び起きた。
フキの葉を持った掌に乗っかるほどの小さな精霊。
ホロケウの持ち霊、コロポックルのコロロである。
ところどころが錆びついているそれは、とても返事をするようには見えない。
どう見ても、意思を持たぬただの金属の塊である。
しかし、ホロケウはシャーマンだ。
金属の塊が精霊化して金属の魂となっていることなど、見れば分かる。
にもかかわらず、ドラゴンは微動だにしない。
やれやれと吐き捨てて、ホロケウは傍らで眠りこけている持ち霊へと声をかける。
どうやら、一緒に幻覚に巻き込まれていたらしい。
たったの一言「起きろよ」と声をかけられただけで、すぐに彼女は飛び起きた。
フキの葉を持った掌に乗っかるほどの小さな精霊。
ホロケウの持ち霊、コロポックルのコロロである。
「俺には分かるんだよ。こいつとも付き合い長ぇから」
断言して、ホロケウは口角を吊り上げる。
そのまましばらく相手の対応を待っていると、脳内に声が響いた。
そのまましばらく相手の対応を待っていると、脳内に声が響いた。
『マルモを、外の世界へつれていってあげて』
「言われなくても、そのつもりだぜ」
「言われなくても、そのつもりだぜ」
短く答えて、ホロケウは親指を海に向ける。
「自然を無茶苦茶にするのは我慢ならねーからな」
親指の先、海のさらに向こうにある島。
地図によると遺跡がある島は、雪と氷に覆われていた。
最初にホロケウが島を発見したときには、地図の通り緑色の樹木が生え揃っていた。
デイパックを確認している最中に、前触れなくああなってしまったのだ。
幻覚を見ておりほんの少し目を離しただけで、さらに白い部分が増えている。
地図によると遺跡がある島は、雪と氷に覆われていた。
最初にホロケウが島を発見したときには、地図の通り緑色の樹木が生え揃っていた。
デイパックを確認している最中に、前触れなくああなってしまったのだ。
幻覚を見ておりほんの少し目を離しただけで、さらに白い部分が増えている。
「自然には自然のサイクルがある。乱されちゃたまったもんじゃねー。
いろいろあったのは分かったけどよ、いろいろ巻き込んでんじゃねえ。
そーゆー分かってねえガキは、とにもかくにも一発説教してやるもんだぜ」
いろいろあったのは分かったけどよ、いろいろ巻き込んでんじゃねえ。
そーゆー分かってねえガキは、とにもかくにも一発説教してやるもんだぜ」
凍った島を見据えながら、ホロケウはデイパックからナイフサイズの棒を取り出す。
両面に紋様が削られている、アイヌに伝わる捧酒箸――イクパスイである。
人の思いに、魂は宿る。
思いがこめられたものに、魂は宿る。
ホロケウとコロロにとって、妹手製のイクパスイは最上の媒介だ。
そんなものがなぜデイパックに入っていたのかは分からないが、いま現在手元にあるので考えないことにした。
両面に紋様が削られている、アイヌに伝わる捧酒箸――イクパスイである。
人の思いに、魂は宿る。
思いがこめられたものに、魂は宿る。
ホロケウとコロロにとって、妹手製のイクパスイは最上の媒介だ。
そんなものがなぜデイパックに入っていたのかは分からないが、いま現在手元にあるので考えないことにした。
「だいたい嫌ぇなんだ、分かったようなツラして自分の世界にに閉じこもってるガキはよ」
『…………』
海を眺めているホロケウの表情は、ドラゴンからは確認できない。
すぐ隣で宙に浮いているコロロが、俯いているのが見えるだけだ。
すぐ隣で宙に浮いているコロロが、俯いているのが見えるだけだ。
『碓氷ホロケ――』
「――ホロホロだ」
「――ホロホロだ」
ドラゴンは声をかけようとするが、遮られてしまう。
凍ってしまいそうなほど底冷えした声色であった。
凍ってしまいそうなほど底冷えした声色であった。
「名簿にゃ別の名前で載ってるが、俺はホロホロっつーんだよ」
すぐに軽口を叩くような口調に戻る。
先ほどの冷たさを隠すかのように。
先ほどの冷たさを隠すかのように。
「んで、こいつはコロロ。
そういやアンタはなんて言うんだ?」
『…………名前はないよ』
そういやアンタはなんて言うんだ?」
『…………名前はないよ』
ホロホロが明るく話すたび、コロロがうなだれるのがドラゴンには分かった。
そんな様子を見ていられないので、会話を切り上げるように提案する。
そんな様子を見ていられないので、会話を切り上げるように提案する。
『海があるし、あの島まで乗せるよ』
「おう、巫力は無駄にしたくねーからな。なら頼むぜ」
「おう、巫力は無駄にしたくねーからな。なら頼むぜ」
◇ ◇ ◇
柔らかいソファに腰掛けていたマルモが、勢いよく目を開く。
彼女が転送されたのは、殺し合いを命じられる前にいた神殿とよく似た遺跡であった。
地図を見てみれば、遺跡は陸地から離れた島に位置している。
他の参加者が来るのには苦労しそうであり、そうそう関わることもなさそうだ。
神殿内で魔力を集束させると、あのロンダルキアの地のように島中に激しい吹雪が起こった。
なおさら人が来ることもないと考えていたのだが、三つの魂が神殿に脚を踏み入れた。
想定外の事態に、マルモからため息が漏れる。
彼女が転送されたのは、殺し合いを命じられる前にいた神殿とよく似た遺跡であった。
地図を見てみれば、遺跡は陸地から離れた島に位置している。
他の参加者が来るのには苦労しそうであり、そうそう関わることもなさそうだ。
神殿内で魔力を集束させると、あのロンダルキアの地のように島中に激しい吹雪が起こった。
なおさら人が来ることもないと考えていたのだが、三つの魂が神殿に脚を踏み入れた。
想定外の事態に、マルモからため息が漏れる。
「……五月蝿い」
吐き捨てると、気だるげにソファから立ち上がる。
二つにまとめた髪が乱れているのを直しながら、近付いてくる魂の気配に思いを馳せる。
ここにはマルモ一人しかいない以上、自ら侵入者を追い払うしかない。
デイパックに入っていた杖を握ってみると、魔力をよく通すことが分かった。
いつも持っているものより上等かもしれない。
そんなことを考えていると、いまいる部屋の扉が開く音が響いた。
二つにまとめた髪が乱れているのを直しながら、近付いてくる魂の気配に思いを馳せる。
ここにはマルモ一人しかいない以上、自ら侵入者を追い払うしかない。
デイパックに入っていた杖を握ってみると、魔力をよく通すことが分かった。
いつも持っているものより上等かもしれない。
そんなことを考えていると、いまいる部屋の扉が開く音が響いた。
◇ ◇ ◇
扉を開けたホロホロはなにも言わず、ただ前を睨み付ける。
漂う巫力が、相手がただ者でないことを表していた。
足を進めながら、ホロホロは不愉快そうに歯を軋ませた。
その態度に、またしてもコロロは視線を伏せた。
漂う巫力が、相手がただ者でないことを表していた。
足を進めながら、ホロホロは不愉快そうに歯を軋ませた。
その態度に、またしてもコロロは視線を伏せた。
他人との接触を拒むあまり、マルモは氷に包まれている。
どうしてホロホロが、これほどまで彼女に苛立っているのか。
その理由がコロロには分かっていた。
かつてホロホロが本名を隠していなかったころ、彼もまた他者との接触を拒んだ。
そして拒んだ結果、彼に歩み寄って来ていた少女を死なせてしまった。
その過去が、未だホロホロを縛りつけている。
碓氷ホロケウと呼ばれていた過去から、目を背け続けている。
ゆえに、同じように他者を拒み自分の世界に閉じこもるマルモが許せない。
どうしてホロホロが、これほどまで彼女に苛立っているのか。
その理由がコロロには分かっていた。
かつてホロホロが本名を隠していなかったころ、彼もまた他者との接触を拒んだ。
そして拒んだ結果、彼に歩み寄って来ていた少女を死なせてしまった。
その過去が、未だホロホロを縛りつけている。
碓氷ホロケウと呼ばれていた過去から、目を背け続けている。
ゆえに、同じように他者を拒み自分の世界に閉じこもるマルモが許せない。
しかし自分の世界から出ようとしないのは、ホロホロも変わらない。
名前を捨てて修行を積んでも、過去は捨てられない。
その過去を仲間にさえ話さず、一人抱え込んでいるのはその証だ。
だから碓氷ホロケウだけでなくホロホロも、マルモとなにも変わらず――
名前を捨てて修行を積んでも、過去は捨てられない。
その過去を仲間にさえ話さず、一人抱え込んでいるのはその証だ。
だから碓氷ホロケウだけでなくホロホロも、マルモとなにも変わらず――
まだ、氷のなかにいる。
氷のなかから飛び出した彼女は。
ホロホロに会いたいという思いだけで精霊となった彼女は。
そう考えていながらも、俯くしかできない。
ホロホロに会いたいという思いだけで精霊となった彼女は。
そう考えていながらも、俯くしかできない。
【A-6/遺跡/1日目・深夜】
【碓氷ホロケウ@シャーマンキング】
[状態]:健康
[装備]:イクパスイ@シャーマンキング、メタルドラゴン@DQM+
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:仲間たちと合流。
1:ひとまずマルモを止めに行く。
【備考】
※参戦時期はダムコロロ前です。
[状態]:健康
[装備]:イクパスイ@シャーマンキング、メタルドラゴン@DQM+
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:仲間たちと合流。
1:ひとまずマルモを止めに行く。
【備考】
※参戦時期はダムコロロ前です。
【マルモ@ドラゴンクエストモンスターズ+】
[状態]:健康
[装備]:輝きの杖@ダイの大冒険
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:静かにしていたい。
1:誰か来たときは帰らせる。
【備考】
※参戦時期はクリオと二度目に会う前です。
[状態]:健康
[装備]:輝きの杖@ダイの大冒険
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:静かにしていたい。
1:誰か来たときは帰らせる。
【備考】
※参戦時期はクリオと二度目に会う前です。
※遺跡のある島(A-6~B-6)が凍りました。
| モンスターズ | 投下順 | 自分を隠すための笑顔 |
| モンスターズ | 時系列順 | 自分を隠すための笑顔 |
| GAME START | 碓氷ホロケウ | [[]] |
| GAME START | マルモ | [[]] |
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