それでも変えられぬ道よ ◆JNaaXjQCoI
――――例え未来を知っても、選ぶ道を変えられない。変えるつもりもない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「殺し合いか…………ふふっ……全く人間は救えないな」
空に浮かぶ無数の星と真丸い大きな月。
それらを灯台からじっと見つめる髪を逆立てた男がいた。
男は哄笑といってもいい笑みを浮かべ、此度の殺し合いの事を考えている。
それらを灯台からじっと見つめる髪を逆立てた男がいた。
男は哄笑といってもいい笑みを浮かべ、此度の殺し合いの事を考えている。
道化と面妖な爺が、一人になるまで生き残れと言った。
その時辺りを見回すと、老若男女様々な人間がいたのを男は確認している。
最後には一人の少女が殺し合いが始まる前に脱落した。
その時辺りを見回すと、老若男女様々な人間がいたのを男は確認している。
最後には一人の少女が殺し合いが始まる前に脱落した。
「くくっ…………本当に、くだらない」
少し前の事を思い出してみたが、どうしても苦笑が漏れてしまう。
やはりどんな時も、人間は勝手だ。
自分の目的の為に、自分より弱いものや価値の無いものを虐げ簡単に奪ってしまう。
そのせいで、どんなに自然が破壊されてきた事か、どんなに生物の命が奪われてきた事か。
そして、今度は同じ人間同士を殺し合わせようというのか。
やはりどんな時も、人間は勝手だ。
自分の目的の為に、自分より弱いものや価値の無いものを虐げ簡単に奪ってしまう。
そのせいで、どんなに自然が破壊されてきた事か、どんなに生物の命が奪われてきた事か。
そして、今度は同じ人間同士を殺し合わせようというのか。
本当に、本当に
「くだらない……救えないな」
くだらないし、救えないモノだ。人間と言うのは。
余りにも可笑しくて笑いたくなってくる。
余りにも可笑しくて笑いたくなってくる。
「だからこそ…………滅ぼしたくなる」
そんな愚かな人間だからこそ、男―――ワタルは滅ぼしたくて、たまらない。
彼はただ身勝手な人間に絶望した訳ではない。
ワタルが人間を滅ぼそうとする理由。
それは、ワタルが愛するモノ達の為だった。
自分勝手な人間が彼らの住処や食料を奪って生きれなくなしてしまっているからだ。
彼はただ身勝手な人間に絶望した訳ではない。
ワタルが人間を滅ぼそうとする理由。
それは、ワタルが愛するモノ達の為だった。
自分勝手な人間が彼らの住処や食料を奪って生きれなくなしてしまっているからだ。
「なあ、お前もそう思わないか……?」
ワタルは紅いマントを翻し、右手に握っていたボールを宙に投げ込む。
そして、眩い光と共に現れるモノ。
大きな翼と鋭い爪と牙を持ち、尻尾には全てを焼き尽くそうとする赤い炎。
まるで竜のような姿の獣が、無限の空を雄大に舞っていた。
そして、眩い光と共に現れるモノ。
大きな翼と鋭い爪と牙を持ち、尻尾には全てを焼き尽くそうとする赤い炎。
まるで竜のような姿の獣が、無限の空を雄大に舞っていた。
「炎竜……リザードンよ」
その獣をポケモンといい、その炎竜をリザードンといった。
ワタルは腕を組みながら、リザードンの美しい姿を愛おしそうに見つめていた。
そう、ワタルが人間を滅ぼそうとするその理由。
そう、ワタルが人間を滅ぼそうとするその理由。
全てはポケモンの為。
ポケモンのみの理想郷を作る為だけに。
――――ワタルは全ての人間を滅ぼそうとするのだ。
それは、この島でも――――変わることは、無い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふむ……大分丁寧に鍛えられているリザードンだな……力量も凄まじい」
宙に滞空するリザードンを眺めながら、ワタルはただ感嘆としていた。
仕草、立ち振る舞い、様子全てをとっても力量の高さを見せ付けている。
よほど丁寧に大切に鍛えられていたのだろうとワタルは思いただ関心するだけだった。
仕草、立ち振る舞い、様子全てをとっても力量の高さを見せ付けている。
よほど丁寧に大切に鍛えられていたのだろうとワタルは思いただ関心するだけだった。
「少し、こちらに来てくれないか?」
ワタルの問いかけにリザードンは警戒しながらも、近づいてきてくれた。
近づいてきたリザードンにワタルは満足し、リザードンの頭上に右手をかざす。
途端にワタルの手から、淡い光が発せられる。
近づいてきたリザードンにワタルは満足し、リザードンの頭上に右手をかざす。
途端にワタルの手から、淡い光が発せられる。
「ふっ……驚いたか? オレはトキワの森の生まれだ」
豊かな緑、永遠に続く緑に溢れるトキワの森。
その森の不思議な力を受け継ぐ子供がトキワで何年に一度生まれると言う。
不思議な力、それはポケモンを癒し、ポケモンの心を読み、過去を知る力。
ワタルはトキワの不思議な力を受け継ぐ者だった。
その森の不思議な力を受け継ぐ子供がトキワで何年に一度生まれると言う。
不思議な力、それはポケモンを癒し、ポケモンの心を読み、過去を知る力。
ワタルはトキワの不思議な力を受け継ぐ者だった。
「ブラストバーン……凄まじい炎の力のようだな……はかいこうせんは覚えていないか」
リザードンの心をワタルは読み取って、リザードンが持つ技を把握していく。
中でもブラストバーンと言う技はワタルの知りえない技だった。
炎の究極技というが、正しくその名に相応しい威力のようだ。
惜しむべくははかいこうせんを覚えていない事か。
中でもブラストバーンと言う技はワタルの知りえない技だった。
炎の究極技というが、正しくその名に相応しい威力のようだ。
惜しむべくははかいこうせんを覚えていない事か。
「まあいい……じきに覚えさせればいいさ」
元々ワタルは炎竜であるリザードンに、この殺し合いに連れて来られる前から興味を示していた。
自力で鍛えて、いずれ手持ちに入れてもいいかと考えていた程なのだ。
そのリザードンにも、はかいこうせんを覚えさせる気だったが、これは都合がいい。
自力で鍛えて、いずれ手持ちに入れてもいいかと考えていた程なのだ。
そのリザードンにも、はかいこうせんを覚えさせる気だったが、これは都合がいい。
ワタルは、はかいこうせんの技に熟知している。
それは手持ちのポケモンに、はかいこうせんの軌道を変えるほどに。
故に、この力量が高いリザードンならば、ワタルが求めるはかいこうせんも直ぐに覚えられるだろう。
今すぐ、覚えさせてもいいが……まず、リザードンとの対話が必要だ。
それは手持ちのポケモンに、はかいこうせんの軌道を変えるほどに。
故に、この力量が高いリザードンならば、ワタルが求めるはかいこうせんも直ぐに覚えられるだろう。
今すぐ、覚えさせてもいいが……まず、リザードンとの対話が必要だ。
「お前の望みは何だ……?」
『……オレは主人であるグリーンとの合流を望んでいる』
「……そうか。お前はあのグリーンの手持ちか……ならばこの強さも頷けるか」
『……オレは主人であるグリーンとの合流を望んでいる』
「……そうか。お前はあのグリーンの手持ちか……ならばこの強さも頷けるか」
ワタルは得心したように、頷く。
リザードンはワタルと敵対したあのグリーンの手持ちだという。
それならばこの強さとワタルに対して警戒心を抱いているのも納得がいく。
リザードンはワタルと敵対したあのグリーンの手持ちだという。
それならばこの強さとワタルに対して警戒心を抱いているのも納得がいく。
『……しかし、お前は一度失敗しても、まだポケモンだけの世界を望んでいるのか……?』
「……何?……これは……!?」
「……何?……これは……!?」
リザードンの謎の問いかけ。
そしてリザードンの記憶を辿ったワタルは驚愕する。
そしてリザードンの記憶を辿ったワタルは驚愕する。
それは、イエローという少女に敗北した自分。
ポケモンの理想郷という望みが絶たれた瞬間だった。
ポケモンの理想郷という望みが絶たれた瞬間だった。
「これは…………オレの未来だというのか………………?」
重く呟かれる言葉。
心を読んだのだから、嘘ではない記憶。
だというのなら、これは未来でしかありえない。
時を渡る事が出来るポケモンも居る事はワタルも知っている。
これだけ大規模の殺し合いをできる主催者ならば、手に入れてても可笑しくないだろう。
だから、このリザードンが未来から連れて来られても可笑しくないはずだ。
心を読んだのだから、嘘ではない記憶。
だというのなら、これは未来でしかありえない。
時を渡る事が出来るポケモンも居る事はワタルも知っている。
これだけ大規模の殺し合いをできる主催者ならば、手に入れてても可笑しくないだろう。
だから、このリザードンが未来から連れて来られても可笑しくないはずだ。
そして、ワタルの未来が敗北だとしても。
「これは……オレがまだ辿ってない未来だ」
『…………』
「だが、未来を知ったとしても…………オレは俺の選ぶ道を変える事は無い。出来ない」
『…………』
「だが、未来を知ったとしても…………オレは俺の選ぶ道を変える事は無い。出来ない」
ワタルは、ワタルが進むべき道を変えない。
変える事が出来ないのだ。
変える事が出来ないのだ。
『オレは主人と共に歩み、共存していける者だと思っている。主人以外にもそういうトレーナーを沢山見てきた」
「……だが、オレが敗北した後も、ポケモンを道具のように使っている組織が悪巧みを沢山しているようじゃないかっ!?」
「……だが、オレが敗北した後も、ポケモンを道具のように使っている組織が悪巧みを沢山しているようじゃないかっ!?」
ワタルはリザードンの言葉を吐き捨てるように反論した。
辿ったリザードンの記憶には、ワタルら四天王が敗北した後でも、何も変わりはしない。
ポケモンを道具のように扱う人間の組織が同じように、悪事を繰り返していた。
辿ったリザードンの記憶には、ワタルら四天王が敗北した後でも、何も変わりはしない。
ポケモンを道具のように扱う人間の組織が同じように、悪事を繰り返していた。
「オレが負けた後でも、結局人間は、何も、何も変わってないじゃないかっ!」
自分が敗北したとして。
それで、ポケモンにとって住みやすい世界が出来てればいいと思っていた。
けれど、何も変わらない。何も変わっちゃいない。
どんなにポケモンを信頼する人間が少しばかりいても。
それを凌駕するように道具に扱う人間が居て、ポケモンの気持ちなど何も考えては居なかった。
それで、ポケモンにとって住みやすい世界が出来てればいいと思っていた。
けれど、何も変わらない。何も変わっちゃいない。
どんなにポケモンを信頼する人間が少しばかりいても。
それを凌駕するように道具に扱う人間が居て、ポケモンの気持ちなど何も考えては居なかった。
「オレは……オレは忘れない。あの時……あの時……苦しんでいたポケモンの事を、絶対に忘れない」
人間の身勝手で、汚染された水で弱っていたミニリュウ。
抱いた胸の中で苦しんでいたポケモンの事を忘れる事が出来ない。
ずっとずっと胸に残っている。
抱いた胸の中で苦しんでいたポケモンの事を忘れる事が出来ない。
ずっとずっと胸に残っている。
「だから、オレは人間を許す事が出来ない……何があっても!」
だから、ワタルは許せない。
身勝手な人間を、ワタルは許す事が出来ないのだ。
ワタルが鳴らした警鐘も気付かなかった人間を。
道具として使い続けた人間を。
身勝手な人間を、ワタルは許す事が出来ないのだ。
ワタルが鳴らした警鐘も気付かなかった人間を。
道具として使い続けた人間を。
ワタルは絶対に許す事は、出来ない。
「お前はどう思う……リザードン?……オレはこの場でも人を滅ぼす事しか考えない。
だがこのワタルの意見に少しでも同調してくれるというのならば、手を貸して欲しい」
『…………』
だがこのワタルの意見に少しでも同調してくれるというのならば、手を貸して欲しい」
『…………』
ワタルの誘い。其処には強い意志が篭っていて。
リザードンは逡巡したように、首を動かし、そして。
リザードンは逡巡したように、首を動かし、そして。
『ワタル。お前にとってポケモンは何だ?』
ある一つの問いかけ。
それは図鑑所有者が答えてきた問い。
ある者は仲間と言い、ある者は友達と言い、ある者は相棒と言った。
それは図鑑所有者が答えてきた問い。
ある者は仲間と言い、ある者は友達と言い、ある者は相棒と言った。
そして、ワタルは
「決まっている。『同志』だ。信頼を持って、オレとポケモンは同じ志の為に共に戦う……『同志』としか言えまい」
同志と言う。
ワタルはポケモンの為に全力で戦う。
そして、ポケモンはそんなワタルを信頼し、応えとする。
ワタルはポケモンの為に全力で戦う。
そして、ポケモンはそんなワタルを信頼し、応えとする。
全てはポケモンの理想郷の為に。
そこには上下関係もない。
だからこそ、同志なのだ。
『……オレには主人と、その仲間を殺す事は出来ないだろう』
リザードンにとって大事な主人であるグリーンや、共に戦う事が多いレッドを殺す事など出来ない。
けれど、ポケモンの為に必死に戦おうとするワタルを見て、リザードンは
けれど、ポケモンの為に必死に戦おうとするワタルを見て、リザードンは
『それでいいのなら、手を貸そう』
「……助かる。有難う」
「……助かる。有難う」
ワタルの勧誘に承諾をした。
まだリザードンにも迷いはある。
しかし、それはワタルと共に行動し、判断する。
そうする事に決めたのだ。
まだリザードンにも迷いはある。
しかし、それはワタルと共に行動し、判断する。
そうする事に決めたのだ。
「ならば、往くぞ。リザードンよ!」
そして、ワタルは灯台から、リザードンに飛び移る。
全てはポケモンの為に。
全てはポケモンの為に。
「全てはポケモンの理想郷の為に…………オレは人間を滅ぼす!」
ワタルはこの島でも、人間を滅ぼすのだ。
【C-8/灯台/1日目・深夜】
【ワタル@ポケットモンスタースペシャル】
[状態]:健康
[装備]:グリーンのリザードン@ポケットモンスタースペシャル
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗り、人間を滅ぼす。
1:殺し合いに乗り人間を滅ぼす
2:リザードンにはかいこうせんを覚えさせる
[状態]:健康
[装備]:グリーンのリザードン@ポケットモンスタースペシャル
[道具]:基本支給品、不明支給品0~2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに乗り、人間を滅ぼす。
1:殺し合いに乗り人間を滅ぼす
2:リザードンにはかいこうせんを覚えさせる
※第二章、スオウ島の決戦前から参戦。
【グリーンのリザードン@ポケットモンスタースペシャル】
グリーンの長年の相棒。
覚えてる技はブラストバーンなど。
第五章以後から参戦。
グリーンの長年の相棒。
覚えてる技はブラストバーンなど。
第五章以後から参戦。
(だが、ワタルよ……忘れてはならない)
背にワタルを乗せながら、リザードンは思う。
ワタルには言わなかったある言葉。
ワタルには言わなかったある言葉。
それは……
(お前も『人間』だぞ? お前が滅ぼそうとしている『人間』だ)
| 道標 | 投下順 | 自分を隠すための仮面 |
| 道標 | 時系列順 | 自分を隠すための仮面 |
| GAME START | ワタル | [[]] |
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