モンスターズ ◆DIAm5T7lI6
◇ ◇ ◇
ポケットモンスター、縮めて『ポケモン』。
世界中のいたるところに棲息する生物であり、未だ人々はその生態を把握しきっているワケではない。
あらゆる種類を捕獲して図鑑に登録したつもりでも、すぐに新たなポケモンの情報が研究所に届けられる。
そんなよく知っているはずの事実を、私は改めて受け入れた。
戦闘を繰り広げている二体のポケモンを目にしては、そうせざるを得なかった。
世界中のいたるところに棲息する生物であり、未だ人々はその生態を把握しきっているワケではない。
あらゆる種類を捕獲して図鑑に登録したつもりでも、すぐに新たなポケモンの情報が研究所に届けられる。
そんなよく知っているはずの事実を、私は改めて受け入れた。
戦闘を繰り広げている二体のポケモンを目にしては、そうせざるを得なかった。
紫がかった毛で覆われた三メートルをゆうに超す身体に、巨大な黒い羽と四本の腕を生やした――バズズ。
灰色の金属を思わせる刺々しい身体に、頭部から伸びる二本の角と鋭く伸びた爪が印象的な――キタザキ。
灰色の金属を思わせる刺々しい身体に、頭部から伸びる二本の角と鋭く伸びた爪が印象的な――キタザキ。
いままでに見たことがない姿の彼らは、どちらも人の言葉を使って自ら名乗った。
ポケモンは言葉を理解するが、話すことができるものは発見されていない。
テレパシーのように思念を送るものならば何体か思い浮かぶが、言葉を発せはしないはずだった。
その常識が、たったいま崩された。
人の言葉を喋る新種のポケモンが、目の前にいる。それも、二体同時に。
スペシャリストとして捕獲しておきたいと思うべきだろう状況。
そのはずなのに、樹木に身を隠して息を潜めるしかできなかった。
常備している空のモンスターボールがなぜか手元にないし、捕獲用のポケモンたちもいない。
そして、なにより――――
ポケモンは言葉を理解するが、話すことができるものは発見されていない。
テレパシーのように思念を送るものならば何体か思い浮かぶが、言葉を発せはしないはずだった。
その常識が、たったいま崩された。
人の言葉を喋る新種のポケモンが、目の前にいる。それも、二体同時に。
スペシャリストとして捕獲しておきたいと思うべきだろう状況。
そのはずなのに、樹木に身を隠して息を潜めるしかできなかった。
常備している空のモンスターボールがなぜか手元にないし、捕獲用のポケモンたちもいない。
そして、なにより――――
「殺す殺す、殺すァァァ!」
「やだなぁ、最強の僕が死ぬはずないじゃない。殺されるのはそっちだよ」
「やだなぁ、最強の僕が死ぬはずないじゃない。殺されるのはそっちだよ」
どちらも、命ぜられた殺し合いに乗り気なのだから。
「『魔王』となるのはこの俺だァァァ!」
バズズが声を張り上げながら、右の二本の腕を振るう。
四本腕というと格闘ポケモンのカイリキーが浮かぶが、ウロコで覆われたバズズの腕はむしろドラゴンタイプのポケモンを連想してしまう。
軌道上にある樹木を粉砕しながら、拳はキタザキへと叩き下ろされる。
四本腕というと格闘ポケモンのカイリキーが浮かぶが、ウロコで覆われたバズズの腕はむしろドラゴンタイプのポケモンを連想してしまう。
軌道上にある樹木を粉砕しながら、拳はキタザキへと叩き下ろされる。
「ははッ! 結構やるよ、君。
……しかし『王』ねえ。みんな好きだね」
……しかし『王』ねえ。みんな好きだね」
発達した爪でバズズの拳を受け止め、キタザキは無邪気な声で言う。
つい最初に見かけた際のキタザキの姿が蘇り、すぐに振り払った。
少年の姿に擬態していたが、正体は戦闘を好むポケモンである。
人に擬態するポケモンの情報はイッシュ地方から届いていたが、話に聞いていたものとは別物らしい。
つい最初に見かけた際のキタザキの姿が蘇り、すぐに振り払った。
少年の姿に擬態していたが、正体は戦闘を好むポケモンである。
人に擬態するポケモンの情報はイッシュ地方から届いていたが、話に聞いていたものとは別物らしい。
「よく分からないけど、その『王』っていうのが一番強いって意味なら……やっぱり僕だよね」
言い終える寸前で、口調が急に低く冷え切ったものとなる。
それを合図にキタザキは背後に跳び、バズズの体勢が崩れたのを確認してから一気に肉薄する。
倒れ込みかけたバズズの顔面にカウンターを放つべく、キタザキは右腕を振りかざして浮かび上がる。
それを合図にキタザキは背後に跳び、バズズの体勢が崩れたのを確認してから一気に肉薄する。
倒れ込みかけたバズズの顔面にカウンターを放つべく、キタザキは右腕を振りかざして浮かび上がる。
「くく……ッ」
キタザキの爪に切り刻まれようとしているにもかかわらず、バズズは想定通りというように笑った。
バズズを中心として火花が散り、深夜の森林が照らされる。
瞬く間に火花が膨れ上がり、無数の光の球と化す。
その球すべてが、接近してくるキタザキへと襲い掛かり――炸裂。
轟音と爆風が樹木を揺らし、葉っぱや小枝が千切れて舞い上がる。
身を隠している木の幹を抱き締めて、どうにかやり過ごす。
吹き飛ばされないよう必死になっており、戦闘を眺めることはできなくなる。
それでも、分かった。
余波でさえここまでの威力のある爆発の直撃でさえ、彼らの戦闘の決め手にはならなかったことが。
バズズを中心として火花が散り、深夜の森林が照らされる。
瞬く間に火花が膨れ上がり、無数の光の球と化す。
その球すべてが、接近してくるキタザキへと襲い掛かり――炸裂。
轟音と爆風が樹木を揺らし、葉っぱや小枝が千切れて舞い上がる。
身を隠している木の幹を抱き締めて、どうにかやり過ごす。
吹き飛ばされないよう必死になっており、戦闘を眺めることはできなくなる。
それでも、分かった。
余波でさえここまでの威力のある爆発の直撃でさえ、彼らの戦闘の決め手にはならなかったことが。
「はッ、ははははは! なんだい、これは!? こんなの知らない!」
爆風が収まったので戦闘に視線を飛ばすと、どちらも倒れず立ったまま合っていた。
キタザキの角からも、青白い火花が散っていた。
幼い口調に戻りけらけらと笑っているキタザキに対し、バズズは落ち着いた声色で切り出す。
キタザキの角からも、青白い火花が散っていた。
幼い口調に戻りけらけらと笑っているキタザキに対し、バズズは落ち着いた声色で切り出す。
「上位モンスター、か……」
「まあ、モンスターと言えばモンスターかな」
「まあ、モンスターと言えばモンスターかな」
キタザキが軽口を叩くように返すと、バズズは口角を吊り上げた。
鋭くとがった白い牙が露になる。
その様子に、キタザキは首を傾げる。
鋭くとがった白い牙が露になる。
その様子に、キタザキは首を傾げる。
「なんでもいいけどさぁ、続きしようよ。
僕が力出せる相手って、あんまりいないんだよね」
「戦わん」
「はぁ? それ、どーいうことさ」
「貴様を材料とし、俺はあのバーンをも邪配合(喰)らう魔王となる」
「……あのさぁ。どうでもいいけど、僕が戦おうって言ってるんだから黙って――」
僕が力出せる相手って、あんまりいないんだよね」
「戦わん」
「はぁ? それ、どーいうことさ」
「貴様を材料とし、俺はあのバーンをも邪配合(喰)らう魔王となる」
「……あのさぁ。どうでもいいけど、僕が戦おうって言ってるんだから黙って――」
なにを言っているのか分からない。
おそらく私と同じ感想を抱いたらしいキタザキが、話を切り上げようとする。
その言葉が言い終えられる前に、バズズが四本の腕を大きくかかげた。
おそらく私と同じ感想を抱いたらしいキタザキが、話を切り上げようとする。
その言葉が言い終えられる前に、バズズが四本の腕を大きくかかげた。
瞬間、世界が凍った。
真冬にでもなったかのように、冷たい風が吹き抜ける。
身体が竦み上がり、震えが止まらない。
腰が抜けたように、へたり込んでしまう。
自分を抱きしめるように腕を回すが、自分の体温さえ感じない。
身体が竦み上がり、震えが止まらない。
腰が抜けたように、へたり込んでしまう。
自分を抱きしめるように腕を回すが、自分の体温さえ感じない。
「あばよ、北崎ィィ! この俺の糧となれッ!!」
大口を上げたバズズが、キタザキへと飛びかかっていく。
ようやく、先ほどの発言の意味が理解できた。
あのポケモンは、ポケモンを食べて強くなるのだ。
腕と尾だけは毛が生えておらず深緑色のウロコで覆われていた、あの違和感。
つまり、それもそういうことだったのだろう。
そんな恐ろしいポケモン、噂さえ聞いたことがない。
収まる兆しさえ感じなかった身体の震えが、さらに激しくなる。
ようやく、先ほどの発言の意味が理解できた。
あのポケモンは、ポケモンを食べて強くなるのだ。
腕と尾だけは毛が生えておらず深緑色のウロコで覆われていた、あの違和感。
つまり、それもそういうことだったのだろう。
そんな恐ろしいポケモン、噂さえ聞いたことがない。
収まる兆しさえ感じなかった身体の震えが、さらに激しくなる。
私の目の前で、キタザキは飲み込まれてしまった。
上空を見上げたバズズの喉元が、大きく動く。
ごくん、と。
生々しい音が響き、バズズは高笑いを――あげなかった。
上空を見上げたバズズの喉元が、大きく動く。
ごくん、と。
生々しい音が響き、バズズは高笑いを――あげなかった。
「どうなってやがる……?」
バズズが零した疑問の答えは、すぐに明らかになった。
先ほど吹き抜けた風のように凍った、低い声によって。
先ほど吹き抜けた風のように凍った、低い声によって。
「なるほど。『材料』『喰う』『糧』……やっと分かった」
「貴、貴様、どうして……!?」
「貴、貴様、どうして……!?」
ゆっくりとバズズの元に歩み寄りながら、キタザキはぶつけられた問いを嘲るように笑い飛ばす。
「お前が喰ったのは、脱ぎ捨てた僕の殻だ」
言われてみれば、キタザキの身体は一回り小さくなっていた。
武骨だった身体は、より洗練された外見にフォルムチェンジしている。
武骨だった身体は、より洗練された外見にフォルムチェンジしている。
「さてと、第二ラウンド……の前に」
巨大な爪が外され自由になった手首を、キタザキは小刻みに回す。
準備体操のような動きだ。
準備体操のような動きだ。
「喰えば喰うだけ強くなるのか」
「…………ちッ」
「答えろ」
「ああ、そうだッ! 無数のモンスターを喰らい、もはや俺は――」
「そうか。ならいいや」
「…………ちッ」
「答えろ」
「ああ、そうだッ! 無数のモンスターを喰らい、もはや俺は――」
「そうか。ならいいや」
今度は、キタザキのほうがバズズの言葉を半ばで遮った。
重々しい口調は、またしても無邪気なものへと戻っている。
怒りに任せて戦うのかと思っていたため、先が読めなくなる。
重々しい口調は、またしても無邪気なものへと戻っている。
怒りに任せて戦うのかと思っていたため、先が読めなくなる。
「もっと強くなるっていうなら……モンスター、用意してあげるよ」
思惑の分からない言葉を残して、キタザキの姿が掻き消えた。
と思ったと同時に、声をかけられた。
背後から、幼い口調で。
と思ったと同時に、声をかけられた。
背後から、幼い口調で。
「やあ」
高速移動――驚愕と同時に納得する。
こんな技があるのならば、食べられる寸前で逃げられるはずだ。
咄嗟に立ち上がり、逃げようと足を踏み出そうとしてできなかった。
胸に痛みが走ったと思ったら視界が青く染まり、いつの間にか地面に倒れ込んでいた。
息を殺していたが、気付かれていたのか。
いったいいつからだろうと考えかけて、すぐにやめる。
そんな悠長にしていられる場面ではない。
痛みは大きくない。問題ない。
とにかく立たなくてはいけない。
そう思い、足を動かそうとする。
なのに、思い通りにいかない。
どうして。分からない。
首を捻って、足元を見ようとする。
見れなかった。
ありもしないものの、元なんてあるはずがない。
足があるべき箇所には、灰が積もっていた。
悲鳴をあげようにも、あごが痙攣して声にならない。
身体が震えて、存在しない足は動かなくて。
でも、なんでか分からないけれど、やけに頭だけはちゃんと回転していて。
だから、想像できた。
その灰が足の変わり果てた姿だと、想像できてしまった。
少しずつ、灰部分が身体を侵食してきているから。
想像できてしまった。
想像、できてしまった。
想像、できて、しまった。
ああ。
もう。
あんなに練習したキックも、もう使えないんだなぁ。
最初に思ったのは、そんなことだった。
そのことに気付いてようやく泣きたくなったけれど、やっぱり声は出なかった。
こんな技があるのならば、食べられる寸前で逃げられるはずだ。
咄嗟に立ち上がり、逃げようと足を踏み出そうとしてできなかった。
胸に痛みが走ったと思ったら視界が青く染まり、いつの間にか地面に倒れ込んでいた。
息を殺していたが、気付かれていたのか。
いったいいつからだろうと考えかけて、すぐにやめる。
そんな悠長にしていられる場面ではない。
痛みは大きくない。問題ない。
とにかく立たなくてはいけない。
そう思い、足を動かそうとする。
なのに、思い通りにいかない。
どうして。分からない。
首を捻って、足元を見ようとする。
見れなかった。
ありもしないものの、元なんてあるはずがない。
足があるべき箇所には、灰が積もっていた。
悲鳴をあげようにも、あごが痙攣して声にならない。
身体が震えて、存在しない足は動かなくて。
でも、なんでか分からないけれど、やけに頭だけはちゃんと回転していて。
だから、想像できた。
その灰が足の変わり果てた姿だと、想像できてしまった。
少しずつ、灰部分が身体を侵食してきているから。
想像できてしまった。
想像、できてしまった。
想像、できて、しまった。
ああ。
もう。
あんなに練習したキックも、もう使えないんだなぁ。
最初に思ったのは、そんなことだった。
そのことに気付いてようやく泣きたくなったけれど、やっぱり声は出なかった。
「なーんだ、ハズレかぁ」
興味を失ったかのような声だけ浴びせると、キタザキは私のデイパックを掴んだ。
もう、私にはなんのようもないかのように。
人間に擬態した姿になって、デイパックの中身を物色する。
数回なかに手を突っ込んでから、キタザキは頬を緩めた。
目当てのモンスターを発見したのだろう。
声にならないから、頭のなかで謝罪する。
『戦う者』である先輩のポケモンであり、強さは申し分なかった。
けれどキタザキもバズズも一見ドラゴンタイプで、電気タイプでは相性が悪いように思えた。
だからわざわざ外に出さず、身を隠してやり過ごそうとした。
そのせいで。
私が判断を誤ったばっかりに。
先輩のポケモンが、食べられてしまう。
ごめんなさい。
心の底からそう思っているはずなのに、それさえ言葉にならない。
もう、私にはなんのようもないかのように。
人間に擬態した姿になって、デイパックの中身を物色する。
数回なかに手を突っ込んでから、キタザキは頬を緩めた。
目当てのモンスターを発見したのだろう。
声にならないから、頭のなかで謝罪する。
『戦う者』である先輩のポケモンであり、強さは申し分なかった。
けれどキタザキもバズズも一見ドラゴンタイプで、電気タイプでは相性が悪いように思えた。
だからわざわざ外に出さず、身を隠してやり過ごそうとした。
そのせいで。
私が判断を誤ったばっかりに。
先輩のポケモンが、食べられてしまう。
ごめんなさい。
心の底からそう思っているはずなのに、それさえ言葉にならない。
「いたよ、モンスター」
キタザキがモンスターボールを投げる。
首を動かせば、それを渡されたバズズがどうなったのか見ることができただろう。
でも、見ることができなかった。
ただもはや手まで灰と化しており、耳はふさげない。
爆ぜるような音と甲高い鳴き声。
そのあとになにかを呑み込むような音。
続いて、再び爆ぜる音。
そして、二つの哄笑。
首を動かせば、それを渡されたバズズがどうなったのか見ることができただろう。
でも、見ることができなかった。
ただもはや手まで灰と化しており、耳はふさげない。
爆ぜるような音と甲高い鳴き声。
そのあとになにかを呑み込むような音。
続いて、再び爆ぜる音。
そして、二つの哄笑。
しばらくして、やっとなにも聞こえなくなった。
ああ、よかった。
【クリスタル 死亡】
【残り参加者 82名】
【残り参加者 82名】
【E-8/森林/1日目・深夜】
【北崎@仮面ライダー555】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、不明支給品1~5(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:楽しいことをする。
1:せっかくだし、バズズをもっと強くする。
2:『王』という単語に思うところあり。
【備考】
※参戦時期未定。次以降に任せます。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、不明支給品1~5(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:楽しいことをする。
1:せっかくだし、バズズをもっと強くする。
2:『王』という単語に思うところあり。
【備考】
※参戦時期未定。次以降に任せます。
【バズズ@ドラゴンクエストモンスターズ+】
[状態]:健康、エビルシドー+ピカチュウ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:魔王となる。
1:弱者は殺し、強者は邪配合(喰)う。
【備考】
※参戦時期は四巻ラスト、ロラン殺害直後です。
※ピカ@ポケットモンスターSPECIALを邪配合(喰)いました。
[状態]:健康、エビルシドー+ピカチュウ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:魔王となる。
1:弱者は殺し、強者は邪配合(喰)う。
【備考】
※参戦時期は四巻ラスト、ロラン殺害直後です。
※ピカ@ポケットモンスターSPECIALを邪配合(喰)いました。
| 嵐の前の静けさ | 投下順 | *こおりのなかにいる* |
| 嵐の前の静けさ | 時系列順 | *こおりのなかにいる* |
| GAME START | 北崎 | [[]] |
| GAME START | バズズ | [[]] |
| GAME START | クリスタル | GAME OVER |
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