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NWの夏(2)

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一方その頃、うだるような暑さの中、藩国の針葉樹林の影にひっそりとたたずむ秘湯の家の中で転がっている
北国人がいた。森の近くにあるので、多少暑さが和らいでいるとはいえ家にある温泉からの湯煙が体感温度を
上げている。
「はー、はー」
 床板の上にあごを乗せるようにして、倒れこむように転がっている。外敵を警戒する犬のようであるが、
実際の目的は違う。犬ならば振動で近寄ってくる敵を察知するのだが、本来家に敵がくるようなことはない。
「床、ひんやりしなくなってきた…」
 しょんぼりとした声色でそうつぶやくと、ころりと転がって熱をもった床から離れ、その近くへ移動する。
少しでも涼しくすごそうと床にへばりついているのだが、だんだんその効果も薄くなっていった。
 何しろ相変わらず外は暑く、その影響で床の温度も上がっている気がする。
「あついぉ!」
 耐え切れなくなってごろごろと床を転がりながら叫ぶ。暑いせいか、普段の北国人風の厚着ではなくかなり肌を露出した格好なのだが、そんな子供っぽいしぐさのせいかほとんど色気がない。
「そうか?」
 アリアンは作務衣を着こんで、団扇で扇ぎながら笑った。確かに暑いことは暑いが、所詮は北国の暑さである。
もう一月もしないうちにストーブがいるようになるな、と思うぐらいだ。あまり熱心でないアリアンの様子に
 あさぎが『うー』と恨めしそうに見上げる。根っからの北国人でついでにいうと冬生まれなためか、
暑さにはとことん弱い。
アリアンは苦笑しながら、団扇で風を送ってやる。頬を撫でる風にあさぎが目を細めた。
「うわー、なんで温泉なんてついてるんだ。暑い上に蒸気で暑いっていうか、
 蒸されてね? なにこれ俺、中華まん? むしろ中華缶?」
 屋根から吊り下げている風鈴が風にゆられ涼しげな音を立てるが、まったく意味がない。
「缶じゃないだろ、今は」
 あきれた顔をしながらも団扇でさらに扇いでやると、転がりながら近寄ってきた。
行儀が悪いぞといおうとしたが手をつかまれて割とどうでもよくなった。
「・・・うぅー。こ、氷、こおりを・・・」
「犬か、お前は」
 そういえば、夏場に犬に氷を与えると喜んでいたなと言ってあさぎの頭を撫でた。
「ふみゅー」
 あさぎは何度か暑い、と呟いたが、アリアンのその手は跳ね除けなかった。
「あつくない?」
「夏の庭ほどじゃないな」
「それもそっか…でもあついなー」
 団扇で扇いでやると、気持ちよさそうにしている。んー、と少し考えたあと立ち上がった。
「よしひるねする!今日は、おやすみだ」
「いつもやすみだろう、お前は」
 あさぎは、キニシナイ!といって部屋の奥へと出て行く。どうやらお気に入りのタオルケットを
とりにいったらしい。ほどなくして、目的のものを片手に戻ってきた。
 アリアンの横にぺたん、とすわる。
「よし!ひざまくら!」
 これは、しろ、ということなのだろう。
「…普通こういうのは逆じゃないか?」
「いや?」
「嫌じゃないが…」
 仕方ないなと、アリアンはあぐらを崩して足を伸ばしてやる。正座している上でひざまくらというイメージとは少し違っていた。
「えー」
「正座は無理だ。」
 ぶーぶーと文句をいいながらあさぎが畳の上に転がる。アリアンの足の上に頭をおいた。
「う・・・意外に高い」
 首筋が痛い、と言い出した。
「あたりまえだろ…」
「ちぇー」
 本当に残念そうにあさぎが顔をあげた。うーん、と少し考え込む。
「うでまくらはー」
「そっちならいつでも」
 まあひざまくらよりは役得が多いかと、アリアンが笑った。
「んじゃ、そうするー」
 そういって、あさぎはころんと横になる。その隣にアリアンが寝そべった。団扇は少し遠くに投げ捨てる。
夏の暑い間は、しばらく昼寝が日課になりそうだった。

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