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ダンゲロスSS3
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聖槍院 九鈴プロローグ

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dangerousss3

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プロローグ

暗い闇に包まれた郊外の山道を、一台のトラックが走っている。
その荷台には冷蔵庫、ブラウン管型テレビ等、古びた電化製品が満載されていた。
時は深夜。
これから、不法投棄しようとしているのだ。
だが、独りハンドルを握る男の表情を硬くしている理由は、
これから犯罪行為を行おうとしていることによる緊張感だけではなかった。
ここ数箇月のうちに、同業者が山中で何人も行方不明となっていたためである。
いまどき神隠しなど、と笑ってはいたが鬱蒼と茂る木々に囲まれていると気味が悪い。

まもなく投棄予定の場所に到着しようとしていた時。
突然、ライトに照らされた砂利道の上方から、何者かが降ってきて立ちふさがった。
激しいブレーキ音が鳴り響き、トラックはその者を撥ね飛ばす寸前で停止する。
それは、作務衣にも似たゆったりとした白衣を身にまとい、三角巾を被った人間だった。
大きなマスクで口元を覆っているため容貌は定かではないが、若い女性である。
傍らの地面には、キャリーバッグが置かれている。
右手には、長い、清掃用トングを持っている。

「馬鹿野郎! 急に飛び出すんじゃねぇ!」
運転席から降り、罵声を浴びせながら男は詰め寄った。
男の体格は、いかにもトラックマンらしい屈強なものである。
とは言え、これはあまりにも不用心ではないだろうか。
深夜の山奥に女性がたった一人で降ってくるなど、明らかに異常なことである。
つまり、この女性が魔人であることは容易に推察できることだ。
だが、男は常識的な推論を無意識に却下してしまった。
自分が神隠しに遭うなんてありえない、と思いたかったのかもしれない。
また、相手が何者であろうと腕力で捻じ伏せる自信もあった。
男もまた、魔人だったのだ。

「ひとつ、ききます」
女性は怯むことなく、冷たい瞳で男をみつめながら事務的に言った。
「ひとつ、ききます。貴方はどうしてゴミを山に捨てるのですか?」
「はぁ? そりゃお前、コスト削減だよ。処分費の節約。聞くまでもねぇだろ?」
男は正直に答えた。
既に女性が持つ尋常ならぬ雰囲気に呑まれていたのかもしれない。
「それは、まちがい。誰かが山からまた回収するのだから、処分の総コストは増えます」
「いんだよソレで。大事なのは俺が幾ら払うかだろ?」
すう、と女性がトングを差し上げ、歯先を男に突き付けた。
「それも、まちがい。貴方が払う代償は、命なのだから」
トングの歯は、うっすらと緋色の光を纏っていた。
鬼火のように。

殺気にあてられた男は、反射的に殴りかかる。
女性は滑るような足取りで間合いを開き回避しながら、男の袖をトングで挟み取った。
慌てて男はトングを振り放そうとするが、それは叶わない。
なぜならば、女性の名は聖槍院九鈴。
伝統あるトング道流派、聖槍院流の正統後継者なのだから。
トング道の達人にひとたび挟まれれば、それを外すのは極めて困難である。
ましてや、九鈴は魔人であり、挟んだ物を離さない能力『タフグリップ』を持つのだ。
決して逃れ得ぬ牙から逃れようともがく男を、九鈴は巧みなトング捌きで優雅にいなす。
熊にフォークダンスを教えるような遣り取りが数度繰り返された後。
男の身体が宙に舞った。

トングに掴まれた腕を中心に一回転して地面に叩きつけられた。
男は痛みと屈辱の呻きを漏らしたが、ひるむことなく素早く跳ね起きる。
跳ね起きた勢いをそのままに、半回転してガードレールに叩きつけられた。
一瞬飛んだ意識が戻った時、既に男の両腕は2本のトングでレールに固定されていた。
九鈴の懐から素早く取り出された新たなトングは、男をがっちりとくわえこんで離さない。
『タフグリップ』による保持は、手を離れたとしても九鈴が望む限り持続するのだ。
「では、とどめです」
洗濯バサミでぶら下げられたシャツの如く磔になった男に、九鈴は静かに言った。
九鈴が男を見つめる視線は、既にゴミを見る目付きとなっていた。
「舐めんな! トラックを遠隔操作する能力『とらっく!とらっく!とらっく!』!!
 過積載2tユニック車の圧倒的質量に轢き潰されて死」
「しずかにしてて」
冷やかな緋色の光を放つトングを喉に突き立てられ、男は死んだ。

人体は、巨大な生ゴミである。
放置されれば腐敗し、異臭を放ち、肉が腐り果てた後も人骨は長期間残存する。
ゆえに、森が受け容れて養分としやすいサイズへと千切り、砕く必要がある。
九鈴の『タフグリップ』は掴みにくいナマモノを扱う作業においても役に立つ。
NHK教育テレビの番組『デザインあ』をご存知だろうか。
その番組に、身の回りにあるモノを分解してゆく『解散!』というコーナーがある。
そのようなことが行われているのである。
暗い闇に包まれた郊外の山道で、緋色の光が揺らめいていた。








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