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第二章 「戴冠式」
(1)
式典の開始を告げる楽の音が聞こえてきた。
どうやら、第二公女が欠席したまで、戴冠式を行うらしかった。
あたしには、宰相プラール様の考えが手に取るように解った。
自分が司る式典は、しきたりに則って、定刻通り、手順通りに行う。
その上で第二公女の遅刻などの不手際を糾弾する。最終的には、今回の戴冠式は仮のもので後日正式に行うまでは、などと言い出し、姉アリスの正式な即位を認めないつもりなのだ。
あたしは可笑しくなってしまった。
殿方として、女の支配など認められないのは当然だとしても、プラール様がこの国の支配権を握ることは、もう有り得ない。
この国の真の支配者が、あたしの後ろにいるのだから。
大広間の前に着くまでに、何人かの兵士や使用人に出会った。
その中には、あたしを探していたものもいたようだった。
その全員が、一瞬のうちにアベル大王様に支配され、平伏して道を譲った。
大広間の扉の前に立つ番兵達も、最初は近づいてくるあたしの異様な格好に驚いていたが、すぐにアベル大王様のつむぎ出す呪文に魂を支配され、大王様の忠実な臣下となって跪いた。
あたしの首輪の鎖を持ったエル様が、後ろからあたしに指示を与えた。
あたしはその指示に従って、番兵達の前に進み出た。
番兵達は、無言のままあたしを見上げた。
彼らの目には、戸惑いと驚きがはっきりと浮かんでいた。
アベル大王様によって意識を変えらたとはいえ、何の説明も受けていない彼らには、目の前の事態を理解することは難しいのだと解った。
泥に汚れ、小便の匂いのする、その上女の恥ずかしい部分を覆う布を切り取られた、服ともいえない礼服を身に着け、犬のように首輪をはめて鎖を引かれ、手足に拘束具までつけたあさましい姿のアニス第二公女が、姉の戴冠式に遅刻してやってきた。
後ろにはどこの誰かも分からない男女が傲慢な態度で立ち、アニス公女をペットのように扱っている。城の兵士や使用人までが、その二人を崇めるように後に従っている。
いったい何が起こっているのか。これから何が起こるのか。
番兵達がそんな疑問を持つのは当然だった。
あたしは、安心させるように彼らに微笑みかけた。
(大丈夫よ。すぐに全部分かるわ。新しい時代が来たということが)
そしてあたしは、手を頭の上に乗せたまま、もう一歩前に出ながら足をがに股に開き、腰を前にぐい、と突き出した。
番兵達の視線が、あたしの股間に集まった。
後ろで、小隊長達が笑いを堪えている気配がした。
あたしは、あさましい格好で微笑んだまま、ウインガルト公国第二公女としての、最後の命令を発した。
「アニス・ウインガルト第二公女が、この国の真の支配者である、アベル大王様をご案内してまいりました。
その扉を開けてください。扉は完全に開いて、閉じてはいけません。
扉を開いたら、あなたたちも式場の中に入って、アベル大王様が正式にこの国の支配者になられる儀式を見ていてください」
(2)
あたしの言葉を聞いているうちに、番兵達にもようやく納得した表情が浮かんできた。
アベル大王様の支配者のオーラを受け、彼らもまた新しい秩序に目覚めたのだ。
その新しい秩序の中では、あたしのこんな格好も当然の事だった。
中の一人が、にやにやと笑いながら、ことさらに恭しい態度であたしの言葉に答えた。
確か、衛士隊のテイラーといったはずだ。
頭が切れるのと、口が悪いので有名な青年だった。
城の女官や貴族の娘を、何人も騙して泣かせたという噂もあった。
「承知いたしました、アニス・ウインガルト第二公女陛下。
戴冠式は既に始まっております。
どうぞ中にお入りください。
ですが、その前に一つお願いの義がございます」
「なんでしょう?」
あたしも、股間を突き出した格好のままで可能な限り、しかめつらしく尋ねた。
「扉を開けるにあたりまして、どうかアニス公女様に、この私めに「いれて」と言っていただきたいのでございます。その際、公女様の女性器を、ご自分の指でお開きになっていただきたいのでございますが」
この素晴らしい申し出に、その場にいた全員が爆笑してしまった。
アベル大王様だけが、呪文を中断することなく続けていたが、振返ったあたしに、笑いを含んだ目で肯いた。
あたしは、テイラーに向き直ると、一つ咳払いをした。
本心は、早く言われた通りにしたくて、うずうずしていた。
「誠にもっともな申し出です。わたくしのほうこそ、気付かなかったことに謝罪しなければいけません」
そしてあたしは、嬉々としてテイラーの要求を実行した。
もう一度、膝を開いて思い切り腰を前に突き出した。
首を傾げて口を開き、舌を出した。蕩けそうな笑みがこぼれた。
「あ・・・は」
手を股間にやり、濡れた処女の花弁に両手の指をかけて、開いた。
前に回ってきた殿方達が、口笛を吹いてはやした。
そしてあたしは、殿方達に笑いかけながら、「おねだり」をした。
「お願い・・・いれてぇ」
あたしは、大きな声でそう言った。
期待に違わない、心地好い屈辱感だった。嬉しさに腰がくねった。
あたしは、もう一度繰り返した。
「あはぁん・・・おねがぁい・・・・・いれてぇ・・・」
テイラーがゆっくりと拍手をした。殿方達は爆笑した。
今この瞬間、外の騒ぎをいぶかしんで、扉が開けばいいと思った。
扉は開かなかった。誰何する声も無かった。プラール様の指示に違いなかった。
「これで宜しいでしょうか?」
ドレスの裾を持ち上げる貴婦人の会釈をして尋ねるあたしに、テイラーは、心臓に掌をあててする臣下の礼で答えた。
「完璧でございます。アニス姫。
それではどうぞ、ご存分に中にお入りになってください。
素晴らしい時代の到来を、心よりお祝い申し上げます」
そう言うと、テイラーは扉の掛け金に手をかけた。
(3)
戴冠式場の大広間の扉が、ゆっくりと開かれた。
アベル大王様の呪文を唱える声が力を増した。
けして大きくないその声が低く響いて、アベル大王様の支配のオーラが周囲に広がっていくのが、あたしには感じられた。
エル様があたしの背を押し、あたしは戴冠式場に足を踏みいれた。
式事を執り行うための大広間は、正面の壁際中央に二段になった舞台のような部分がある。それぞれの段の高さは膝の半分ほどで、一段目の奥行きが10歩ほどもある。もちろん二段め中央に玉座と后座が置かれている。正面の壁にはウインガルト公家の紋章が入った旗が掛けられていた。
50歩以上の奥行きと幅がある大広間の左右の壁には、衛士達と楽隊が立っていた。
城の重臣達と、その家族、合わせて200名近くが、左右に別れて整列していた。
正面の壇上には姉アリスと婚約者アル、そしてプラール様がいた。壇上の下手には妹ヨークもいた。
その全員が開け放たれた扉から入ってきたあたしを見た。
「一体・・・あっ!何!」
「何だあれは!」
あたしの、あさましい姿に驚愕の声が上がった。悲鳴をあげる女性もいた。
当然だった。厳粛な儀式の場に、乳房と性器を丸出しにした娘が現れたのだ。
狂人と思われてもしかたない行為だった。
「何と言う・・・アニス姫?!」
「アニス姫!」
「あれがアニス姫だと?!」
あまりにも常軌を逸したあたしの姿に、入ってきた「それ」がアニスであると認識するのが一瞬遅れたようだった。新たな驚愕の波が広がった。
その場の全員が絶句していた。
言葉にならないどよめきだけがあった。
200人以上の視線が、あたしの異様な姿に注がれた。
化け物でも見ているかのような驚きと嫌悪、そして蔑みが、あたしに向けられた。あたしは、全身でそれを受け止めた。
嬉しかった。
今までに受けた、どんな名誉も、どんな賞賛の視線も、今あたしに向けられている侮蔑の視線にはかなわなかった。
(ああっ・・・!)
あたしは、立ったまま軽く絶頂した。
突き抜ける鋭い快感に、ぴくぴくと身体を震わせていた。
ちゃらん
鎖の音を立てて、あたしはゆっくりと正面の玉座に向かって進み始めた。
痛いほどに勃起した乳首が、かすかに揺れる。
くちっ
一歩を踏み出す毎に、性器から溢れた恥ずかしい蜜が、股の間で微かに音を立てる。
1時間ほど前には、完璧に整えられていた礼服。
今は無残に切り裂かれ、乳房と股間が丸出しの、服とも呼べないものに成り果て、その上裏庭の泥と、あたし自身が漏らした小便で汚れている。
ほんのり薄化粧をした顔も泥に汚れ、口の中には進んで貪ったサンダルの裏の土がまだ残っていた。
罪人のように手足を拘束され、獣のように首輪を鎖で繋がれたあたし。
丸出しになった女の恥ずかしい部分を隠そうともせず、自分から手を頭に乗せて、淫蕩な笑みさえ浮かべながら歩いているあたし。
あたしは、変わり果てた姿を、姉妹を始め、生まれたときからあたしを知っている人達すべてに晒していた。
今日まであたしを慈しみ、育ててくれた人達に、牝奴隷へと堕ちあたしをお披露目していた。
あたしは、16年間の人生最高の、惨めさと誇らしさを同時に感じていた。
そして、もう一つ、暗い期待に胸をときめかせていた。
この人達もまた、もうすぐ、あたしと同じになる。
もう、すぐ。
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堕落姫乃眸.
最終更新:2008年02月06日 19:05