島の中心部、役場のロビー。光太郎、6/、みなみ、滝がいたこの施設に、つい先程新たな参加者が到着した。
こなた、みくる、長門の三人だ。
奥の部屋で眠っているみなみを除く六人は今、それぞれがここまで得た情報を交換し合っていた。
こなた、みくる、長門の三人だ。
奥の部屋で眠っているみなみを除く六人は今、それぞれがここまで得た情報を交換し合っていた。
「こっちが会った中で危険そうなのは、サク、キョン、桂の三人だ。そっちは?」
「こっちはマリオくんだね」
「マリオか……。あいつの身体能力もかなりのもんだからな。プログラムに乗ってるとなると、かなり高い壁になりそうだ……」
「こっちはマリオくんだね」
「マリオか……。あいつの身体能力もかなりのもんだからな。プログラムに乗ってるとなると、かなり高い壁になりそうだ……」
マリオと対峙する瞬間を想像し、滝は物憂げに溜め息を漏らす。
そんな中、みくるは長門が不振な動きを見せたことに気づいた。
そんな中、みくるは長門が不振な動きを見せたことに気づいた。
「長門さん、どうかしました?」
「誰か来た……」
「何?」
「誰か来た……」
「何?」
長門の言葉につられて、一同は揃って入り口を見る。彼らが見たのは開かれた入り口の扉と、こちらに向かって転がってくる何かだった。
「やべえ! 逃げ……!」
滝が叫ぶが、時すでに遅し。直後、壮絶な爆発音が彼らの耳を貫いた。
◇ ◇ ◇
(ハハハハハ! バカな連中だよ! 入り口から丸見えのロビーに集まるなんてね!)
狂気の笑みを浮かべながら、シンヤは素早くロビーへ飛び込んだ。
ロビーにいる6/たちは、いずれもその身を硬直させている。
シンヤが投げ込んだ夏奈の支給品、スタングレネードの効果で動きを封じられているのだ。
スタングレネードが引き起こす感覚器官への直接攻撃の前には、屈強な男もか弱い女子高生も平等に無力である。
ロビーにいる6/たちは、いずれもその身を硬直させている。
シンヤが投げ込んだ夏奈の支給品、スタングレネードの効果で動きを封じられているのだ。
スタングレネードが引き起こす感覚器官への直接攻撃の前には、屈強な男もか弱い女子高生も平等に無力である。
(まずは一人!)
シンヤはもっとも入り口の近くにいた滝の頭部に目がけ、力一杯バットを振った。
滝に抵抗する術はなく、その頭はあまりにもあっけなく砕かれた。
滝に抵抗する術はなく、その頭はあまりにもあっけなく砕かれた。
(二人目!)
滝を殺害したシンヤは、息つく間もなく二人のターゲットに襲いかかる。
狙いを定められたのは、南光太郎。シンヤは大きく振りかぶったバットを、光太郎の脳天目がけて振り下ろす。
だがその瞬間、光太郎の体が横にずれる。結果としてバットは光太郎の脳天を砕くことはなく、代わりに彼の左腕を砕いた。
狙いを定められたのは、南光太郎。シンヤは大きく振りかぶったバットを、光太郎の脳天目がけて振り下ろす。
だがその瞬間、光太郎の体が横にずれる。結果としてバットは光太郎の脳天を砕くことはなく、代わりに彼の左腕を砕いた。
「ぐああっ!」
(ちっ、外したか!)
(ちっ、外したか!)
光太郎が上げる悲鳴など気に留めず、シンヤは今度こそ彼を仕留めるべく今一度バットを構える。
だがそこで、彼の行動を邪魔する存在が現れた。
だがそこで、彼の行動を邪魔する存在が現れた。
「や、やらせません~!」
「なんだと!?」
「なんだと!?」
朝比奈みくるが後ろから組み付き、彼の行動を妨害してきたのである。
(くそっ! こいつら、もう動けるように……!)
はっきり言ってしまえば、シンヤはスタングレネードの威力を過信していた。
たしかにスタングレネードは、どんな相手にも一定の効果があげられる。
だが彼が使用したタイプでは、長くても十数秒ほどが動きを止められるリミットだったのである。
だからこそ予想外の介入に、シンヤは大きく取り乱す。
たしかにスタングレネードは、どんな相手にも一定の効果があげられる。
だが彼が使用したタイプでは、長くても十数秒ほどが動きを止められるリミットだったのである。
だからこそ予想外の介入に、シンヤは大きく取り乱す。
「ええい! 離れろ、女!」
密着した状態から、シンヤは強引にみくるへ肘打ちを放つ。それにみくるが耐えられるはずもなく、彼女はあっさりシンヤの体から離れた。
「いっそお前から……!」
床に倒れ込むみくるに向かって、改めてバットを振り上げるシンヤ。だが、それは愚策以外の何物でもない。
「やらせるか!」
背後にいたみくるに向き直るということは、それまで正面にいた光太郎に背を向けるということ。
隙だらけのシンヤの背中に、光太郎は腕の痛みをこらえながら蹴りを見舞う。
その蹴りをまともにくらったシンヤは、転倒こそ免れたものの大きくよろけた。
そこへ、さらにこなたの追撃が襲いかかる。
隙だらけのシンヤの背中に、光太郎は腕の痛みをこらえながら蹴りを見舞う。
その蹴りをまともにくらったシンヤは、転倒こそ免れたものの大きくよろけた。
そこへ、さらにこなたの追撃が襲いかかる。
「やあっ!」
バランスを崩したシンヤの腕を取り、こなたは思い切り投げる。シンヤはなすすべもなく宙を舞い、固い床に叩きつけられた。
「クズどもが……。調子に乗るなあーっ!」
だが、シンヤの闘志は未だ折れていなかった。すぐさま立ち上がり、傷を負ったこなたの右肩に拳を叩き込む。
さらに彼女の腹を蹴り上げ、小さな体を吹き飛ばす。
さらに彼女の腹を蹴り上げ、小さな体を吹き飛ばす。
「どいつもこいつも……。この僕を舐めるな!」
取り落としたバットを拾い直し、シンヤは椅子の上に倒れ込んだこなたに向かって突き進む。
だが、周囲がそれを黙って見ているはずがない。
だが、周囲がそれを黙って見ているはずがない。
「うおおおおおお!!」
シンヤの側面から、光太郎が全力で体当たりを敢行する。
逆上による視野の狭窄とダメージの蓄積が災いし、シンヤはそれを避けられず。
光太郎もろとも、床に倒れ込む。
逆上による視野の狭窄とダメージの蓄積が災いし、シンヤはそれを避けられず。
光太郎もろとも、床に倒れ込む。
「この! 離れろ!」
自分をがっちりホールドする光太郎を、なんとか引きはがそうとするシンヤ。
だが光太郎はシンヤの体に片腕だけでしがみつき、そのまま離れずに床の上を転がっていく。
光太郎には、彼なりの考えがあった。シンヤは強い。このまま戦闘を続ければ、みくるやこなたも滝のように殺されてしまう。
だからここは自分が身を挺して、シンヤを彼女たちから引き離す。たとえ自分が殺されても、彼女たちが逃げる時間くらいは稼げるはずだ。
だが光太郎はシンヤの体に片腕だけでしがみつき、そのまま離れずに床の上を転がっていく。
光太郎には、彼なりの考えがあった。シンヤは強い。このまま戦闘を続ければ、みくるやこなたも滝のように殺されてしまう。
だからここは自分が身を挺して、シンヤを彼女たちから引き離す。たとえ自分が殺されても、彼女たちが逃げる時間くらいは稼げるはずだ。
(俺の命と引き替えにしてでも……。お前の好きにはさせないぞ、シンヤ!)
激しく揉み合いながら、光太郎はシンヤを巧みに誘導する。そして二人は組み合ったまま、役場を出て行った。
「南君……」
そして、その場にはみくるとこなただけが残される。
「あ、あれ? 私と泉先輩だけ? どういうことですか?」
ここでみくるは、ようやく気づく。その場にいるべき人数が、明らかに足りていないことに。
「長門さん、6/さん! どこに行っちゃったんですかー?」
◇ ◇ ◇
長門有希は、役場の廊下を走っていた。
彼女はシンヤが投げ込んだスタングレネードにいち早く気づき、超人的な瞬発力でその効果範囲から逃れたのだ。
ならばなぜ彼女は、突入してきたシンヤと戦うことを選ばなかったのか。
答えは簡単。手負いの自分では、シンヤと真正面からぶつかっても勝てないと判断したからだ。
ならばあの場にいた人間はシンヤの好きにさせ、自分は安全に殺せる相手を狙った方がいい。
そう考え、長門はすぐさま逃走を開始したのである。
彼女が向かっているのは、役場の中のとある一室。その部屋にたどり着いた長門は、物音を立てぬよう慎重にドアを開ける。
その中には、端整な顔立ちを苦痛に歪めながら眠る岩崎みなみの姿があった。
彼女はシンヤが投げ込んだスタングレネードにいち早く気づき、超人的な瞬発力でその効果範囲から逃れたのだ。
ならばなぜ彼女は、突入してきたシンヤと戦うことを選ばなかったのか。
答えは簡単。手負いの自分では、シンヤと真正面からぶつかっても勝てないと判断したからだ。
ならばあの場にいた人間はシンヤの好きにさせ、自分は安全に殺せる相手を狙った方がいい。
そう考え、長門はすぐさま逃走を開始したのである。
彼女が向かっているのは、役場の中のとある一室。その部屋にたどり着いた長門は、物音を立てぬよう慎重にドアを開ける。
その中には、端整な顔立ちを苦痛に歪めながら眠る岩崎みなみの姿があった。
(あなたに恨みはないが……。こんな無防備な状態を晒している獲物を見逃すわけにもいかない。死んでもらう)
静かに鎖鎌を取り出し、長門はその刃をみなみの首筋に向けようとする。
だがその時、怒りを孕んだ声が彼女の鼓膜を叩いた。
だがその時、怒りを孕んだ声が彼女の鼓膜を叩いた。
「待ちな!」
反射的に、長門は部屋の入り口に視線を向ける。そこには、目をつり上げこめかみに血管を浮かべた6/の姿があった。
「ビンゴだな……! どうにも胸騒ぎがひどくてみなみのところに来てみれば……。
さっさとその鎌どけろや、長門ぉ!」
さっさとその鎌どけろや、長門ぉ!」
激しい怒りを隠そうともせず、6/は吠える。だがそれほどの怒りをぶつけられようとも、長門が動揺を見せることはない。
「あなたに私の行動を読まれたのは予想外。だが、この状況で不利なのはあなたの方」
淡々と述べると、長門はみなみの体を起こしその首に改めて鎌を当てる。
「彼女の安全を保証してほしいなら、私をここで見逃してもらう」
「……わかった。みなみの安全には変えられないからな……と言うと思ったかこの野郎ーっ!」
「……わかった。みなみの安全には変えられないからな……と言うと思ったかこの野郎ーっ!」
長門の脅迫に素直に従う振りをしながら、6/はポケットに隠し持っていたクルミを投擲する。
だがクルミは大きく狙いを外し、長門の後ろの壁に当たる。
だがクルミは大きく狙いを外し、長門の後ろの壁に当たる。
(愚かな行動を……)
6/の行動に失望しつつ、長門は鎌を持った手に力を込める。抑止力にならぬ人質など邪魔なだけ。そうそうに始末するのが最良だ。
だがその瞬間、長門の後頭部を鈍い衝撃が襲った。
だがその瞬間、長門の後頭部を鈍い衝撃が襲った。
「!?」
何が起こったのか理解できぬまま、バランスを崩す長門。そこへ、疾風のごとき速さで6/が跳びかかる。
彼の手は、迷いのない動きでみなみの体を長門から奪い返した。
彼の手は、迷いのない動きでみなみの体を長門から奪い返した。
「…………っ!」
一方人質を失った長門は、ふらつく体で壁に寄り掛かる。
「まさか……跳弾……?」
「そういうことだ。真正面から撃ったんじゃ、みなみに当たる危険性があるからな。
さて、もう人質はいないぜ? 覚悟するんだな」
「そういうことだ。真正面から撃ったんじゃ、みなみに当たる危険性があるからな。
さて、もう人質はいないぜ? 覚悟するんだな」
みなみを元の場所に寝かせつつ、6/は長門から視線を外さない。そして鬼のごとき表情を浮かべて、クルミを握る。
傍目から見れば、明らかに長門が追いつめられた状況。だが、それでも長門は無表情を崩さない。
傍目から見れば、明らかに長門が追いつめられた状況。だが、それでも長門は無表情を崩さない。
「この程度で私が諦めると思わない方がいい」
長門は背後の窓に向かって、鎖鎌の鎖を投擲する。高速で鎖を叩きつけられ、窓ガラスがあっけなく砕け散る。
そして長門は、軽やかな跳躍で割れた窓から出ていった。
そして長門は、軽やかな跳躍で割れた窓から出ていった。
「ちっ、逃げられたか……」
残された6/は忌々しげに呟きながら、クルミをポケットに戻す。
「まあ、とりあえずみなみが守れただけでもよしとしておくか……」
未だ意識を取り戻さない恋人の顔をのぞき込みながら、6/は安堵の溜め息を漏らす。
ロビーに残してきた仲間たちが、悲惨な状況に追い込まれていることも知らずに。
ロビーに残してきた仲間たちが、悲惨な状況に追い込まれていることも知らずに。
【21番 滝和也 死亡】
残り16人
残り16人
【1番 相羽シンヤ】
【学年】高3
【状態】右頬負傷
【所持品】金属バット、鉄パイプ、スタングレネード×2
【能力】知力:C 体力:S ブラコン:A
【学年】高3
【状態】右頬負傷
【所持品】金属バット、鉄パイプ、スタングレネード×2
【能力】知力:C 体力:S ブラコン:A
【34番 南光太郎】
【学年】高1
【状態】左腕骨折
【所持品】なし
【能力】知力:C 体力:S 歌唱力:E
【学年】高1
【状態】左腕骨折
【所持品】なし
【能力】知力:C 体力:S 歌唱力:E
【5番 朝比奈みくる】
【学年】高2
【状態】健康
【所持品】三味線糸
【能力】知力:C 体力:E お茶汲み:B
【学年】高2
【状態】健康
【所持品】三味線糸
【能力】知力:C 体力:E お茶汲み:B
【6番 泉こなた】
【学年】高3
【状態】右肩負傷、腹部にダメージ(大)、覚醒
【所持品】カッターナイフ、みゆきの支給品
【能力】知力:C 体力:B オタク:S
【学年】高3
【状態】右肩負傷、腹部にダメージ(大)、覚醒
【所持品】カッターナイフ、みゆきの支給品
【能力】知力:C 体力:B オタク:S
【25番 長門有希】
【学年】高1
【状態】軽い火傷、右肘負傷
【所持品】鎖鎌、クロスボウ、KXの支給品
【能力】知力:S 体力:A 冷静さ:S
【学年】高1
【状態】軽い火傷、右肘負傷
【所持品】鎖鎌、クロスボウ、KXの支給品
【能力】知力:S 体力:A 冷静さ:S
【7番 岩崎みなみ】
【学年】高1
【状態】気絶
【所持品】出刃包丁
【能力】知力:B 体力:B 胸:AA(カップ的な意味で)
【学年】高1
【状態】気絶
【所持品】出刃包丁
【能力】知力:B 体力:B 胸:AA(カップ的な意味で)
【40番 6/】
【学年】高3
【状態】健康
【所持品】クルミ数個(ポケットに入れている)
【能力】知力:B 体力:C クルミ投げ:B
【学年】高3
【状態】健康
【所持品】クルミ数個(ポケットに入れている)
【能力】知力:B 体力:C クルミ投げ:B
※滝と光太郎の荷物は、現在役場のロビーに放置
【21番 滝和也】
Former
Next
死亡