6/は未だ目を覚まさぬみなみを抱きかかえ、ロビーへ戻るために歩を進めていた。
一度は元の場所に寝かせておくことも考えたが、長門の襲撃があった今ではみなみを一人にしておく気にはなれなかったのである。
やがて6/は、ロビーへとたどり着く。その瞬間、彼は自分の目を疑った。
一度は元の場所に寝かせておくことも考えたが、長門の襲撃があった今ではみなみを一人にしておく気にはなれなかったのである。
やがて6/は、ロビーへとたどり着く。その瞬間、彼は自分の目を疑った。
「なんだよ、これ……」
そこは、まさしく地獄絵図だった。滝は頭を割られ血の海に沈み、こなたは椅子の上に力無く倒れ込み、みくるは目に涙をたたえ右往左往している。
光太郎にいたっては、姿がどこにも見当たらない。
光太郎にいたっては、姿がどこにも見当たらない。
「……!」
6/は、自分の考えの浅さに強い自己嫌悪を覚えていた。あの時、ただみなみの身が心配で彼女の元へ走った。
だが、残された仲間のことを何も考えていなかった。誰かが自分たちに襲いかかってきたことはたしかだったのだ。
当然、仲間たちが窮地に陥るであろう事も考えるべきだった。だというのに、彼は恋人のことしか考えていなかった。
仲間を見捨てるも同然の行為をやってしまったのだ。
だが、残された仲間のことを何も考えていなかった。誰かが自分たちに襲いかかってきたことはたしかだったのだ。
当然、仲間たちが窮地に陥るであろう事も考えるべきだった。だというのに、彼は恋人のことしか考えていなかった。
仲間を見捨てるも同然の行為をやってしまったのだ。
(間違ってたとは言わねえ……。あそこで俺が行かなけりゃ、みなみは長門に殺されてた……。
けど……。だからって仲間を見捨てていいはずがない……。俺は……どうすればよかったんだ……)
けど……。だからって仲間を見捨てていいはずがない……。俺は……どうすればよかったんだ……)
がっくりとうなだれる6/。だが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
彼はみなみを改めて寝かせると、唯一口がきけそうなみくるに歩み寄る。
彼はみなみを改めて寝かせると、唯一口がきけそうなみくるに歩み寄る。
「朝比奈、ちょっといいか?」
「ふえ? ああ、6/さん! どこに行ってたんですか!? 滝さんが、泉さんが……」
「落ち着いてくれ。とにかく、ここで何があったか教えてもらいたいんだ」
「ふえ? ああ、6/さん! どこに行ってたんですか!? 滝さんが、泉さんが……」
「落ち着いてくれ。とにかく、ここで何があったか教えてもらいたいんだ」
なんとかして話を聞き出そうとする6/に対し、徐々に落ち着きを取り戻したみくるは途切れ途切れながらも6/がロビーを去ってからのことを語り出す。
「なるほど……。それで光太郎が、シンヤと一緒に外へ……」
「はい……」
「よし、わかった。俺が光太郎を追いかけてみる。朝比奈さんはここで、泉とみなみを看病してやってくれ」
「ふええ!? で、でもまた誰かが襲ってきたら、私だけじゃどうしようもないです~!」
「わかってる。俺だってそう思う。けど、光太郎を見殺しにするわけにもいかないだろう。
どっちかが行って、どっちかが残る。それしか選択肢はないんだ」
「はい……」
「よし、わかった。俺が光太郎を追いかけてみる。朝比奈さんはここで、泉とみなみを看病してやってくれ」
「ふええ!? で、でもまた誰かが襲ってきたら、私だけじゃどうしようもないです~!」
「わかってる。俺だってそう思う。けど、光太郎を見殺しにするわけにもいかないだろう。
どっちかが行って、どっちかが残る。それしか選択肢はないんだ」
熱弁を振るいながら、6/は滝が持っていたショットガンをみくるに託した。
「頼む……。お前なら裏切らない! お前なら信じられる! だからこそ頼むんだ……!」
「そ、そこまで言うんでしたら……。自信はないですけど、やれるだけのことはやってみます!」
「そ、そこまで言うんでしたら……。自信はないですけど、やれるだけのことはやってみます!」
6/の熱意に打たれたのか、みくるはその顔に精一杯の気合いを浮かべて銃を受け取る。
「出来る限り、早く戻る。何もないことを祈ってるが、何かあった時は頑張ってくれ。
本当は、お前にこんな事をさせるべきじゃないんだろうけどな……」
本当は、お前にこんな事をさせるべきじゃないんだろうけどな……」
悲痛な面持ちでみくるに告げると、6/はクルミを手に役場を飛び出していった。
◇ ◇ ◇
「ん……」
「あ、目が覚めたんですね? 大丈夫ですか? 気分は悪くないですか?」
「あ、目が覚めたんですね? 大丈夫ですか? 気分は悪くないですか?」
みなみが目を覚ました時、その視界に入ったのはみくるの顔だった。
「……っ!」
「ああ、そんなに怯えなくて大丈夫ですよ?」
「ああ、そんなに怯えなくて大丈夫ですよ?」
気を失う前にはいなかった人物が目の前にいることに、みなみは警戒心をあらわにする。
そんな彼女に対し、みくるは出来る限り警戒を和らげようと柔和な声で話しかけた。
そんな彼女に対し、みくるは出来る限り警戒を和らげようと柔和な声で話しかけた。
「私は6/さんに頼まれて、あなたを看病してたんです」
「6/さん……。6/さんは!?」
「6/さん……。6/さんは!?」
恋人がいないことに気づき、必死に周囲を見渡すみなみ。その張りつめた表情が、彼女の精神状況を如実に物語っている。
「落ち着いてください、岩崎さん! 6/さんは今、光太郎君を捜しにちょっと外に出てるんです。
すぐに戻ってきますから!」
すぐに戻ってきますから!」
なんとかみなみを落ち着かせようとするみくるだが、今のみなみにはその思いはほとんど伝わらない。
「6/さんがいない……。もうあの人しか頼れる人はいないのに……。もうみゆき先輩はいないのに……」
うわごとのようにみなみが口にした、みゆきの名前。それを聞いたみくるは、わずかに顔をこわばらせる。
そして彼女の反応を、みなみは見逃さなかった。
そして彼女の反応を、みなみは見逃さなかった。
「まさか……。みゆき先輩のこと、何か知ってるんですか!」
先程までの覇気のない様子が嘘のように、みなみは獰猛とすら表現できる動きでみくるにつかみかかる。
「ふええ!? 落ち着いてください、岩崎さん!」
「何か知ってるんでしょう! 何でもいいんです、教えてください!」
「何か知ってるんでしょう! 何でもいいんです、教えてください!」
なんとかみなみをなだめようとするみくるだが、みなみはお構いなしでみくるの体を揺さぶり続ける。
そんな状況の中、第三の声がその場に響いた。
そんな状況の中、第三の声がその場に響いた。
「私が話すよ」
「泉さん! まだ休んでた方が……」
「泉さん! まだ休んでた方が……」
シンヤに痛めつけられた体を、ゆっくりと起こすこなた。その体を心配するみくるを手で制すと、こなたはみなみに向かって歩き出した。
「泉先輩……」
みなみはみくるの襟を掴んでいた手を離し、こなたに視線を向ける。
「あ、あの、泉さん……」
「止めないで、みくるちゃん。これは私が言わなくちゃならないことなんだ」
「やっぱり、何か知ってるんですね……。お願いです、教えてください。なぜみゆき先輩が死んだのか……」
「みゆきさんは……」
「止めないで、みくるちゃん。これは私が言わなくちゃならないことなんだ」
「やっぱり、何か知ってるんですね……。お願いです、教えてください。なぜみゆき先輩が死んだのか……」
「みゆきさんは……」
こなたの言葉が、一度途切れる。数秒の沈黙をはさみ、震える声で彼女は告げた。
「私が……死なせたんだ」
「!!」
「!!」
こなたの告白を聞いた瞬間、みなみの目の色が変わる。その瞬間、彼女の中から理性というものは消滅していた。
込み上げてくるものは、ただ憎しみのみ。みなみは隠し持っていたままだった包丁を、こなた目がけて繰り出した。
満身創痍のこなたは、それを避けられない。包丁はいともたやすく、彼女の胸を抉る。
込み上げてくるものは、ただ憎しみのみ。みなみは隠し持っていたままだった包丁を、こなた目がけて繰り出した。
満身創痍のこなたは、それを避けられない。包丁はいともたやすく、彼女の胸を抉る。
「あ……が……」
意味を持たない声と共に、こなたの口から血が噴き出す。だがそれでも、みなみの激情は収まらない。
刺す、刺す、刺す。ただひたすらに、目の前の相手を刺す。
そしてみなみの手が止まった時、そこには首から下を余すことなく自分の血で染めたこなたの亡骸があった。
刺す、刺す、刺す。ただひたすらに、目の前の相手を刺す。
そしてみなみの手が止まった時、そこには首から下を余すことなく自分の血で染めたこなたの亡骸があった。
「え……あ……」
少しずつ冷静さを取り戻していったみなみは、己の行いが引き起こした惨状に戦慄する。
(私、なんて事を……)
姉も同然に慕っていたみゆきを死に追いやった張本人が、目の前にいる。そのことに冷静さを失うのは仕方ないかもしれない。
だが、ここまでやる必要があったのか。こなたは、自分の罪を打ち明けた。
それは自分の行いを悔いる気持ちがあったからに他ならない。
だが自分は、それを拒絶した。ろくに話しも聞かずに、こなたの命を奪った。
怒りに我を忘れていたなど、言い訳にならない。自分はただの、
だが、ここまでやる必要があったのか。こなたは、自分の罪を打ち明けた。
それは自分の行いを悔いる気持ちがあったからに他ならない。
だが自分は、それを拒絶した。ろくに話しも聞かずに、こなたの命を奪った。
怒りに我を忘れていたなど、言い訳にならない。自分はただの、
人殺しだ。
「う……ああ……うわあああああああああ!!」
そして、もとより危うい位置にあったみなみの精神は、ここにきて完全に壊れた。
「…………」
虚ろな瞳から止めどなく涙を溢れさせ、彼女は幽鬼のごとき足取りでその場から姿を消した。
◇ ◇ ◇
つい先程まで、多くの人間が集っていた役場。しかし今そこにいる「生きた」人間は、みくるただ一人となっていた。
みくるは、静かに泣いていた。こなたを失った悲しみと、何も出来なかった悔しさに。
あの時自分が何か動きを起こしていれば、こなたは死ななかったかもしれない。みなみは壊れなかったかもしれない。
だが、自分は何もしなかった。その結果がこの悪夢だ。
6/は、自分を信頼してくれたというのに。自分は、その信頼を完全に裏切ってしまった。
みくるは、静かに泣いていた。こなたを失った悲しみと、何も出来なかった悔しさに。
あの時自分が何か動きを起こしていれば、こなたは死ななかったかもしれない。みなみは壊れなかったかもしれない。
だが、自分は何もしなかった。その結果がこの悪夢だ。
6/は、自分を信頼してくれたというのに。自分は、その信頼を完全に裏切ってしまった。
「でも……。いつまでもこうしてるわけにもいきませんよね」
涙を拭い、みくるはショットガンを手に歩き出す。いくら過去を悔やんだところで、もう一度やり直すことは出来ない。
ならば、これからのことを考える方が建設的だ。
みくるの目的は一つ。みなみを追い、彼女の精神状態を回復させること。
今の彼女に、自分の言葉がどこまで届くかわからない。だが、みゆきは錯乱したこなたを落ち着かせることが出来た。
ならば自分に出来てもおかしくはない。いや、たとえ出来なくてもやるしかない。
せめてそれだけでもやらなければ、自分を信じてくれた6/に合わせる顔がない。
ならば、これからのことを考える方が建設的だ。
みくるの目的は一つ。みなみを追い、彼女の精神状態を回復させること。
今の彼女に、自分の言葉がどこまで届くかわからない。だが、みゆきは錯乱したこなたを落ち着かせることが出来た。
ならば自分に出来てもおかしくはない。いや、たとえ出来なくてもやるしかない。
せめてそれだけでもやらなければ、自分を信じてくれた6/に合わせる顔がない。
(高良さん、泉さん……。どうか私に、力を貸してください……)
強い決意を胸に、みくるは役場を後にした。
【6番 泉こなた 死亡】
【残り12人】
【残り12人】
【5番 朝比奈みくる】
【学年】高2
【状態】健康、覚醒
【所持品】三味線糸、ショットガン
【能力】知力:C 体力:E お茶汲み:B
【学年】高2
【状態】健康、覚醒
【所持品】三味線糸、ショットガン
【能力】知力:C 体力:E お茶汲み:B
【7番 岩崎みなみ】
【学年】高1
【状態】精神崩壊
【所持品】なし
【能力】知力:B 体力:B 胸:AA(カップ的な意味で)
【学年】高1
【状態】精神崩壊
【所持品】なし
【能力】知力:B 体力:B 胸:AA(カップ的な意味で)
【40番 6/】
【学年】高3
【状態】健康
【所持品】クルミ一袋
【能力】知力:B 体力:C クルミ投げ:B
【学年】高3
【状態】健康
【所持品】クルミ一袋
【能力】知力:B 体力:C クルミ投げ:B
【6番 泉こなた】
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死亡