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クロス第29話

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「古泉くん、キョン子さん……」

友人たちの死を知り、みくるは目尻に涙を浮かべる。だが彼女は、その涙をグッとこらえていた。
みくるは誓ったのだ。みゆきのためにも、このプログラムを中断させてみせると。
そのためには、こんなところで泣いている暇はない。
一方のこなたも、みくるの傍らでこみ上げてくる悲しみを抑えつけていた。

(かがみん、みゆきさん、それ以外のみんなも……。みんなの死は無駄にはしないよ。
 無駄になんかしてたまるもんか!)

絶対に目的を達成してみせる。強い決意と共に、こなたは右手をギュッと握りしめてみせる。

「さて……。行こうか、みくるちゃん。早く味方になってくれる人を見つけて、このプログラムを終わらせる手段を見つけないと!」
「はい、わかりました!」

声を張り上げ、いそいそと移動を開始する二人。その様子を、物陰から伺う一人の少女がいた。

(私としたことが……。タイミングを計りすぎて、最適なタイミングを逃してしまった)

ボウガンを構えながら、その少女……長門有希は胸の内で呟く。

(あの二人を殺せば、課題である五人の殺害は達成される。泉こなたは武術経験者だが、ボウガンで遠距離から攻撃すれば脅威たり得ない。
 そして朝比奈みくるに、戦闘力は皆無。そのことは今までの経験でよく分かっている。
 そう……よく分かっている)

長門とみくるの関係性は深い。彼女たちはハルヒ、キョン、古泉を含めた五人でいつも行動してきた。
だがその関係性は、このプログラムの中で崩壊した。長門は、ハルヒたちのグループとの絆より朝倉との絆を優先したのだ。
その選択の結果、長門は古泉を殺すことになった。そして今、彼女はみくるをも殺そうとしている。
だが、その選択は本当に正しかったのか。古泉を殺したその時から、長門の中にはほんのわずかながらそういった迷いがあった。
だからこそみくるを目の当たりにした時に躊躇が生じ、隙だらけの彼女を攻撃できなかったのだ。

(なぜ迷う必要がある……。私にとって涼子の存在がもっとも優先されるべきもの。
 彼女の命を守るためなら、それ以外のものを犠牲にするのもやむを得ない。
 まだ挽回は可能。ここから飛び出し、朝比奈みくるたちが状況を理解するよりも早くボウガンを確実に当てられる距離まで接近すれば……)

改めて覚悟を決め、作戦を構築しなおす長門。だがそんな彼女の行動を徒労にしかねない存在が、その背後から迫ってきていた。

(誰か来る……)

背後から、派手に物音を立てて誰かが接近してくる。それに気づいた長門は、自分の考えをぶち壊しにする存在に忌々しさを感じつつ振り返った。
視界に入ったのは、微塵の迷いもなくこちらに突進してくる屈強な体格の男だ。

「マリオ……」

その男の名前を呟きながら、長門はボウガンの引き金を引く。だがそれとほぼ時を同じくして、マリオは右前方へ向け大きく跳躍した。
放たれた矢は獲物を捉えることなく、地面へと突き刺さる。

「YAHOOOOOOOOO!!!」

一方のマリオは、間を置かずに今度は左前方へと跳ぶ。つまり、長門の正面に戻ってきた格好だ。
そして彼の体は、そのまま砲弾となって長門に激突する。

「くっ」

長門はとっさにボウガンを手放し、両腕で防御壁を作る。
その防御自体は、非の打ち所のない完璧なものだった。
だが、いかんせんマリオと長門では体重に差がありすぎる。
激突の衝撃を受け止めきれず、長門の華奢な体は地面に叩きつけられた。

「イヤッハー!」

さらにマリオは、倒れた長門を殴りつける。それをまともにくらった長門だが、彼女もすぐさま反撃の拳を放った。
だがその瞬間、彼女の肘を激痛が襲う。マリオに距離を取らせることには成功したが、長門の攻撃はほとんどダメージを与えていない。

(まずい。右肘関節へのダメージが想像以上)

旗色の悪い状況を、冷静に分析する長門。その彼女に向かい、マリオは今一度攻撃をしかけようとする。
だがそこへ、長門にとっては救いの手となる介入が起きた。

「ちょっと待ったー!」

その場に響くのは、泉こなたの声。戦闘音に気づいた彼女が駆けつけたのだ。
こなたは荷物がぎっしり入ったカバンを鈍器として振るい、マリオに叩きつける。

「ワーオ!」

攻撃を受けたマリオは、奇声をあげて悶える。反撃に警戒するこなただったが、マリオはそのまま一目散に逃げ出してしまった。

(助かった……?)
「大丈夫ですか、長門さん!」

状況を理解しひとまず安堵する長門に、こなたの背後からみくるが駆け寄る。

「身体的ダメージのことを聞いているのなら、大丈夫とは言えない。右肘にかなりのダメージを受けた。
 回復にはある程度の時間を要する」
「た、大変です~! 早く手当てを!」
「悪いが、この状況であなたにできることはない。放っておいてくれてかまわない」
「で、でも~!」

狼狽するみくるに、長門は無表情で淡々と告げる。

「相変わらずクールだねえ、長門さんは。それはそうと、状況を説明してくれない? いったい何があったのか」
「あなた達を発見して、声をかけようとした。しかしその直後に、マリオに襲われた。後は見てのとおり」

こなたからの質問に対し、長門はやはり淡々とした口調で答えた。
その言葉には嘘も混じっていたが、何のブレもない彼女の態度はこなた達に嘘を気づかせない。

「うーん、マリオくんもプログラムに積極的ってことか……。残念だなあ……」
「こなたさん……」
「まあ、仕方ないよ。誰だって死ぬのは嫌なんだから。
 私たちがプログラムを中断する方法を見つければ、きっとマリオくんだって考えを改めてくれるさ」

心配そうな視線を向けてくるみくるに対し、こなたは無理に笑顔を作ってみせた。

「それより、仲間が増えたことを喜ぼうよ! 長門さん、一緒に来てくれるよね?」
「私が……?」

こなたの言葉を受け、長門は考え込む。

(すでに接近を許した以上、泉こなたの戦闘力は度外視できない。それに、利き腕の肘を痛めたのは深刻。
 ある程度回復するまでは、力押しでの殺害は避けるべき。今は彼女たちの味方を装い、同行しておくのが無難)

長門の明晰な頭脳は、ほんのわずかな時間で結論を導き出す。

「わかった。あなた達に同行させてもらう」
「よかったぁ。長門さんが味方になってくれるなら百人力です」

長門の真意など知らず、みくるはその顔に無邪気な笑みを浮かべた。

「こらこら、怪我人に過剰な期待をかけちゃいかんよ、みくるちゃん」
「は、はぁい。ごめんなさい……」
「気にすることはない」

こなたに注意され一瞬でしょげかえるみくるに向かって、長門は言う。

(そう、気にすることはない。しょせんこれはまやかしの同盟。私はいずれ、あなた達を殺す)

「さて、それじゃあ改めてしゅっぱ~つ!」

長門の悪意など気づきもせず、こなたは意気揚々と歩き出した。


【5番 朝比奈みくる】
【学年】高2
【状態】健康
【所持品】三味線糸
【能力】知力:C 体力:E お茶汲み:B

【6番 泉こなた】
【学年】高3
【状態】右肩負傷、覚醒
【所持品】カッターナイフ、みゆきの支給品
【能力】知力:C 体力:B オタク:S

【25番 長門有希】
【学年】高1
【状態】軽い火傷、右肘負傷
【所持品】鎖鎌、クロスボウ、KXの支給品
【能力】知力:S 体力:A 冷静さ:S

【31番 マリオ】
【学年】高3
【状態】毒キノコによるトリップ状態
【所持品】毒キノコセット(残り半分ほど)
【能力】知力:C 体力:S ヒゲ:S



【5番 朝比奈みくる】

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【6番 泉こなた】

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【25番 長門有希】

Former

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【31番 マリオ】

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