柊かがみの死体の前で、ユーゼスとランキング作成人は未だ言い争いを続けていた。
長く口論が続いたこともあり、二人の表情は若干険しさを増している。
長く口論が続いたこともあり、二人の表情は若干険しさを増している。
(ええい、わからずやめ。協力しないならそう言ってくれれば諦めもつくものを、中途半端に譲歩の姿勢を見せているせいでいつまでも折り合いがつかんではないか!
しかもふいに話しかけられたせいで、不注意に情報を漏らしてしまったし……。今からメモ機能を使っての会話に切り替えるのはあまりに不自然……。
なるべく主催本部に情報を与えぬよう、早めに会話を切り上げたいのだが……)
しかもふいに話しかけられたせいで、不注意に情報を漏らしてしまったし……。今からメモ機能を使っての会話に切り替えるのはあまりに不自然……。
なるべく主催本部に情報を与えぬよう、早めに会話を切り上げたいのだが……)
焦りを募らせるユーゼス。一方で、作成人のほうも少なからず焦っていた。
(ああ、なんなんだよこいつ。話が全然まとまらねえ。こっちも条件さえよければ協力してやるって言ってるのに……。
いっそのことやるか? やっちまうか?)
いっそのことやるか? やっちまうか?)
作成人がそんな不穏な考えを募らせ始めたその時、事件は起きた。
「YAHOOOOO!!」
「ん? なんだ?」
「いかん! 隠れろ、作成人!」
「いかん! 隠れろ、作成人!」
突然聞こえてきた規制に唖然とする作成人を、ユーゼスは強引に木陰へ引っ張り込む。
とは言っても、彼も正確に状況を把握していたわけではない。
ただ彼の直感が、危険が迫っていると判断を下しただけの話だ。
しかし、その直感は正しかった。直後、彼らの前に現れたのは狂気に取り憑かれたとしか思えない男の姿だった。
とは言っても、彼も正確に状況を把握していたわけではない。
ただ彼の直感が、危険が迫っていると判断を下しただけの話だ。
しかし、その直感は正しかった。直後、彼らの前に現れたのは狂気に取り憑かれたとしか思えない男の姿だった。
「ありゃ……マリオか?」
「あまり声を出すな。気づかれるぞ」
「あまり声を出すな。気づかれるぞ」
やってきたのは、機関車のごとき勢いで爆走するマリオ。彼はユーゼスたちにはまったく気づく様子もなく走り続ける。
その進路の先には、かがみの死体が横たわっていた。それでも、マリオはスピードを緩めない。
その進路の先には、かがみの死体が横たわっていた。それでも、マリオはスピードを緩めない。
「ヤァッ!」
まるで進路上の石を蹴飛ばすような躊躇のなさで、マリオはかがみの死体を蹴り飛ばす。
かがみは地面を転がり、近くにあった岩に激突した。
その様子を一瞥することすらせず、マリオはそのまま走り去っていった。
かがみは地面を転がり、近くにあった岩に激突した。
その様子を一瞥することすらせず、マリオはそのまま走り去っていった。
「死体蹴り飛ばして、ノーリアクションかよ……。完全に精神やられちまってるんだな、あいつ……」
「うむ、接触しなくて正解だったな……」
「うむ、接触しなくて正解だったな……」
マリオの姿が完全に見えなくなると、ユーゼスと作成人は木陰から姿を見せる。
そのまま、ユーゼスは吹き飛ばされたかがみの元に歩み寄る。
そのまま、ユーゼスは吹き飛ばされたかがみの元に歩み寄る。
「ほう……。これは思わぬ幸運といったところか。柊かがみには悪いがな」
「どうしたんだよ」
「どうしたんだよ」
いぶかしげな表情でよろよろと近づいてくる作成人に対し、ユーゼスは手にした拳銃を見せつける。
「どうしても取れなかったのだが、今の衝撃で上手い具合に手から抜けたらしい」
「なるほどな。おめでとうさん」
「なるほどな。おめでとうさん」
たいして興味がないのを隠そうともせず、作成人は投げやりな祝福をユーゼスに送る。
しかし、ユーゼスの発言はまだ終わってはいなかった。
しかし、ユーゼスの発言はまだ終わってはいなかった。
「それだけではない。ここを見ろ。これこそまさに僥倖と言えるだろう」
そういいながらユーゼスが指さしたのは、かがみの首。いや、厳密に言えばその首にはめられた首輪。
「なるほどな……」
作成人は、すぐさまユーゼスが言わんとすることを理解した。かがみの首輪には、亀裂が入っていたのである。
おそらくは地面を転がった際、たまたま首輪の部分に負担がかかるような状況になったのだろう。
おそらくは地面を転がった際、たまたま首輪の部分に負担がかかるような状況になったのだろう。
「これだけのヒビが入っていれば、首を切らなくとも手持ちの工具だけでなんとか剥がせそうだ」
「ほう」
「というわけで、貴様の手を借りる必要はなくなったわけだが……。まあここで一緒にいた縁だ。
今後も付き合わせてやってもいいが」
「なんで上から目線なんだよ……。まあいいや。たしかにそいつの中身を知れるのは大きなアドバンテージだからな。考えさせてもらうぜ」
「ほう」
「というわけで、貴様の手を借りる必要はなくなったわけだが……。まあここで一緒にいた縁だ。
今後も付き合わせてやってもいいが」
「なんで上から目線なんだよ……。まあいいや。たしかにそいつの中身を知れるのは大きなアドバンテージだからな。考えさせてもらうぜ」
飄々とした口調で返す作成人。しかし態度には出さないものの、彼はその内で大きく悩んでいた。
(どうする……。首輪を外すことに成功すれば、プログラムをこれ以上続けなくて済む。
だが、それでいつも通りの日常が帰ってくるわけじゃない。プログラムからの脱走は、すなわち政府への反逆。
一生反逆者として追われ続けることになる……。そのことを考えれば、やっぱり優勝を目指した方が……)
だが、それでいつも通りの日常が帰ってくるわけじゃない。プログラムからの脱走は、すなわち政府への反逆。
一生反逆者として追われ続けることになる……。そのことを考えれば、やっぱり優勝を目指した方が……)
簡単には答えを出せぬ問題に、苦悩する作成人。その時、彼のポケットで携帯電話が振動を始めた。
【31番 マリオ】
【学年】高3
【状態】毒キノコによるトリップ状態
【所持品】毒キノコセット(残り半分ほど)
【能力】知力:C 体力:S ヒゲ:S
【学年】高3
【状態】毒キノコによるトリップ状態
【所持品】毒キノコセット(残り半分ほど)
【能力】知力:C 体力:S ヒゲ:S
【37番 ユーゼス・ゴッツォ】
【学年】高3
【状態】健康
【所持品】防弾繊維の服、拳銃、工具(現地調達)
【能力】知力:S 体力:D 機械知識:A
【学年】高3
【状態】健康
【所持品】防弾繊維の服、拳銃、工具(現地調達)
【能力】知力:S 体力:D 機械知識:A
【38番 ランキング作成人】
【学年】高3
【状態】右脚負傷
【所持品】斧、タケシの支給品
【能力】知力:A 体力:C ランキング作成力:SSS
【学年】高3
【状態】右脚負傷
【所持品】斧、タケシの支給品
【能力】知力:A 体力:C ランキング作成力:SSS