民家を出たユーゼスは、島の中心部から離れるように歩いていた。
その理由は、南光太郎による放送である。
あんな他の参加者の注意を引きつけるようなことをすれば、すぐに危険人物が集まってくるだろう。
そんなところにのこのこ出かけていくのは、よほどのバカだけ。そう考えていたからである。
実際には彼の予想に反し多くの参加者が光太郎の元に集まったのだが、それは今のところユーゼスに関係のない話である。
その理由は、南光太郎による放送である。
あんな他の参加者の注意を引きつけるようなことをすれば、すぐに危険人物が集まってくるだろう。
そんなところにのこのこ出かけていくのは、よほどのバカだけ。そう考えていたからである。
実際には彼の予想に反し多くの参加者が光太郎の元に集まったのだが、それは今のところユーゼスに関係のない話である。
さて、ユーゼスが歩き始めてから数十分後。彼は一人の参加者と遭遇した。
もっとも、相手はとうの昔に事切れていたのだが。
もっとも、相手はとうの昔に事切れていたのだが。
「柊かがみか……」
トレードマークのツインテールを片方だけ血に染めて倒れるクラスメイトを見下ろしながら、ユーゼスは呟く。
何か思うところがあったわけではない。単なる確認作業だ。
ユーゼスは特に彼女と仲がよかったわけではないし、先程のメールで既に彼女の死を教えられている。
今更彼女の死体を見つけたところで、ショックを受けるような理由はない。
ただ、だからといってその死体に全く興味がないわけではない。
何か思うところがあったわけではない。単なる確認作業だ。
ユーゼスは特に彼女と仲がよかったわけではないし、先程のメールで既に彼女の死を教えられている。
今更彼女の死体を見つけたところで、ショックを受けるような理由はない。
ただ、だからといってその死体に全く興味がないわけではない。
(手に銃を持っているところを見ると、自殺か……。まあ、この状況ではそんな選択肢を選んでしまっても仕方あるまい)
そんな思考を脳に浮かべながら、ユーゼスはかがみの前に膝をつく。そして、彼女が握りしめた拳銃を取り上げようとした。
武器のない今のユーゼスにとって、拳銃はぜひとも欲しい代物だったのだ。
しかしすでにかがみの体は死後硬直が進んでおり、いくら引っ張ろうとも拳銃が彼女の手から抜ける気配はない。
武器のない今のユーゼスにとって、拳銃はぜひとも欲しい代物だったのだ。
しかしすでにかがみの体は死後硬直が進んでおり、いくら引っ張ろうとも拳銃が彼女の手から抜ける気配はない。
(むう、これは手に入れるのを諦めた方がいいか? だがこのプログラムの中で、丸腰でいることのリスクを考えれば多少の無理はしても……)
どうにか銃を入手しようと、悪戦苦闘を続けるユーゼス。その彼の背後へ、何者かが忍び寄る。
「誰だ!」
気配に気づき、ユーゼスは叫び声をあげながら振り向く。彼の目に映ったのは、斧を手にしたごく平凡な顔立ちの青年であった。
「作成人か……」
「あー、ドンパチはなしな。こっちはやる気ゼロだから」
「あー、ドンパチはなしな。こっちはやる気ゼロだから」
ユーゼスが声をかけるや否や、作成人は斧を手放して座り込む。そして、気だるげな声で戦意がないことをアピールした。
「敵意がないなら、なぜ忍び足で近づいてきた?」
「そりゃお前、こんな血の臭いがプンプンしてるところに座り込んで何かやってるやつ見つけたら、誰だって警戒するだろ」
「む……。言われてみれば、それもそうか」
「で、何やってたんだお前。死体の前で」
「……私が殺したとは考えないのか?」
「おいおい、そこまで頭悪くねえよ、俺。かがみが死んだのはメールが来る前だ。
いくらなんでも、何時間も自分が殺したやつの前にいたりはしねえだろ」
「なるほど、それも道理か」
「で、何やってんだよ。それに答えてねえぞ、お前」
「こいつの持っている拳銃を回収しようと思ったのだが、死後硬直で取れなくてな」
「おいおい、死体から武器あさるか?」
「あいにく私の支給品は、武器ではなかったのだ。この場で自衛の武器すらないのはあまりに危険すぎる」
「そりゃお前、こんな血の臭いがプンプンしてるところに座り込んで何かやってるやつ見つけたら、誰だって警戒するだろ」
「む……。言われてみれば、それもそうか」
「で、何やってたんだお前。死体の前で」
「……私が殺したとは考えないのか?」
「おいおい、そこまで頭悪くねえよ、俺。かがみが死んだのはメールが来る前だ。
いくらなんでも、何時間も自分が殺したやつの前にいたりはしねえだろ」
「なるほど、それも道理か」
「で、何やってんだよ。それに答えてねえぞ、お前」
「こいつの持っている拳銃を回収しようと思ったのだが、死後硬直で取れなくてな」
「おいおい、死体から武器あさるか?」
「あいにく私の支給品は、武器ではなかったのだ。この場で自衛の武器すらないのはあまりに危険すぎる」
声と表情に呆れの色をにじませる作成人だが、ユーゼスは動じず淡々と会話を続ける。
「そうだ、作成人。その斧で、こいつの首を切り落としてもらえないか?」
「はあ? いきなり何を言い出すんだよ、お前は。なんで意味もなく死体損害しなきゃならんのだ」
「意味もなくそんな事させるわけがなかろう。首輪を取り外すためだ」
「外してどうするんだよ」
「決まっている。分析して安全に分解する方法を見つけ出す」
「なるほどな。それでてめえの首についた分の首輪も外そうって訳か」
「上手くいくかどうかはわからないがな。だが、やっておいて損はない」
「はあ? いきなり何を言い出すんだよ、お前は。なんで意味もなく死体損害しなきゃならんのだ」
「意味もなくそんな事させるわけがなかろう。首輪を取り外すためだ」
「外してどうするんだよ」
「決まっている。分析して安全に分解する方法を見つけ出す」
「なるほどな。それでてめえの首についた分の首輪も外そうって訳か」
「上手くいくかどうかはわからないがな。だが、やっておいて損はない」
ユーゼスの顔に、はじめて微笑が浮かぶ。
「……で? 首輪外してどうしようってんだ? 別に外したところで、無事に家に帰れる訳じゃねえぞ?」
「外してから考えるさ。取らぬ狸の皮算用は好きではない」
「外してから考えるさ。取らぬ狸の皮算用は好きではない」
皮肉めいた口調で言う作成人だが、ユーゼスは意に介さない。
「それで、やってくれるのかくれないのか。どっちなんだ?」
「……そうだな。何か俺にメリットがあるならやってもいいが」
「メリットか……。首輪の解析に成功すれば、その情報はプログラムに乗っていない他の連中との交渉に役立つと思うが。
プログラムに反抗できない最大の理由が、この首輪だからな」
「だがそれは、お前の言う取らぬ狸の皮算用だろう。手に入るかどうかわからないものを報酬にするってのは、そっちに都合がよすぎる」
「むう……」
「……そうだな。何か俺にメリットがあるならやってもいいが」
「メリットか……。首輪の解析に成功すれば、その情報はプログラムに乗っていない他の連中との交渉に役立つと思うが。
プログラムに反抗できない最大の理由が、この首輪だからな」
「だがそれは、お前の言う取らぬ狸の皮算用だろう。手に入るかどうかわからないものを報酬にするってのは、そっちに都合がよすぎる」
「むう……」
クラスメイトの亡骸の前で、会話を続ける二人。彼らの討論は、どこまでも平行線であった。
【37番 ユーゼス・ゴッツォ】
【学年】高3
【状態】健康
【所持品】防弾繊維の服、工具(現地調達)
【能力】知力:S 体力:D 機械知識:A
【学年】高3
【状態】健康
【所持品】防弾繊維の服、工具(現地調達)
【能力】知力:S 体力:D 機械知識:A
【38番 ランキング作成人】
【学年】高3
【状態】右脚負傷
【所持品】斧、タケシの支給品
【能力】知力:A 体力:C ランキング作成力:SSS
【学年】高3
【状態】右脚負傷
【所持品】斧、タケシの支給品
【能力】知力:A 体力:C ランキング作成力:SSS