とある民家の一室。そこに、二人の男が陣取っていた。
工具を手に、何かを一心不乱に解体しているのがユーゼス・ゴッツォ。
ランキング作成人は、その横でただ黙りこくったまま作業を見守っている。
工具を手に、何かを一心不乱に解体しているのがユーゼス・ゴッツォ。
ランキング作成人は、その横でただ黙りこくったまま作業を見守っている。
「……ふう」
ユーゼスは工具を床に置き、額の汗を拭う。そのまま彼は、傍らに置いていた携帯電話を操作しだした。
『解析終了だ。首輪の構造は、大方理解した』
携帯電話に打ち込んだ文章を、ユーゼスは傍らの作成人に見せる。
すでに自分が首輪解体を目指していることは管理者側にばれていると、ユーゼスは考えていた。
だがそれでも、決定的事実を知られてしまうのはまずい。
その判断から、彼は朝倉の時と同様に携帯電話を使って作成人とコミュニケーションを取っているのだ。
すでに自分が首輪解体を目指していることは管理者側にばれていると、ユーゼスは考えていた。
だがそれでも、決定的事実を知られてしまうのはまずい。
その判断から、彼は朝倉の時と同様に携帯電話を使って作成人とコミュニケーションを取っているのだ。
『そうか。お疲れ様』
ユーゼスからのアプローチに対し、作成人も携帯電話に文章を打ち込んで答える。
『それで、解析したら次はどうするんだ』
『まずはお前の首輪で、実際に解除できるかどうか試させてもらう』
『おいおい、冗談きついぜ。失敗したらどう責任取るんだよ』
『案ずるな。失敗すれば私の腕も吹き飛ぶ。そうなれば、私も助かるまい』
『俺が死ぬことに代わりねえだろ、それでも!』
『わからんやつだな、失敗したらこちらもただでは済まないから、それだけ真剣にやるということだ』
『ああ、そういうことか。そうならそうと、最初から言ってくれればいいのに』
『グダグダ言ってないで、やってもいいのかどうか早く決めろ』
『ああ、いいぜ。この命、てめえに預けてやるよ』
『まずはお前の首輪で、実際に解除できるかどうか試させてもらう』
『おいおい、冗談きついぜ。失敗したらどう責任取るんだよ』
『案ずるな。失敗すれば私の腕も吹き飛ぶ。そうなれば、私も助かるまい』
『俺が死ぬことに代わりねえだろ、それでも!』
『わからんやつだな、失敗したらこちらもただでは済まないから、それだけ真剣にやるということだ』
『ああ、そういうことか。そうならそうと、最初から言ってくれればいいのに』
『グダグダ言ってないで、やってもいいのかどうか早く決めろ』
『ああ、いいぜ。この命、てめえに預けてやるよ』
作成人の了承を得るや否や、ユーゼスはすぐさま携帯電話を置いて再び工具を手にした。
そしてすぐさま、工具を作成人の首輪に突き立てる。
そしてすぐさま、工具を作成人の首輪に突き立てる。
「っ!!」
さすがに大量の冷や汗を浮かべる作成人。それとは対照的に、ユーゼスはその顔に余裕をにじませていた。
「そう警戒するな。センサーの位置から考えて、この位置の衝撃は感知しにくい。
調べてみれば、案外どうにでもなる構造だったぞ、この首輪」
調べてみれば、案外どうにでもなる構造だったぞ、この首輪」
小声で作成人に告げながら、ユーゼスは作業を続ける。
数分で外装を外すと、続いて彼は内部のコードを弄り始めた。
数分で外装を外すと、続いて彼は内部のコードを弄り始めた。
「おいおい、大丈夫なのかよ、本当に」
「話しかけるな、手元が狂ったらどうする」
「話しかけるな、手元が狂ったらどうする」
不安に満ちた作成人の呼びかけを一蹴し、ユーゼスは作業を続行。
そのまま、金属のこすれ合う音が響くだけの時間が数十分続く。
そのまま、金属のこすれ合う音が響くだけの時間が数十分続く。
「……ふう」
雰囲気を切り替えたのは、またしてもユーゼスの口から放たれた溜息。
「回路はこれで遮断した。あとは力業で外して問題ない」
そう告げると、ユーゼスは宣言通り強引に首輪を破壊していく。
「おい、いくらなんでも乱暴すぎるんじゃねえのか? 誤作動でも起こしたらどうするんだよ」
「心配するな。火薬に繋がる回路は全て切断してある。どう扱おうが爆発などしない」
「心配するな。火薬に繋がる回路は全て切断してある。どう扱おうが爆発などしない」
ユーゼスの言うとおり、首輪はまったく爆発する気配を見せない。
やがて、作成人の首から完全に首輪が取り除かれた。
やがて、作成人の首から完全に首輪が取り除かれた。
「おお、本当に上手くいった……」
「ふん、当然だ。この私の頭脳をもってすれば、この程度の機械構造を理解するなど造作もない」
「ふん、当然だ。この私の頭脳をもってすれば、この程度の機械構造を理解するなど造作もない」
驚きを隠せない作成人に、自信に満ちた口調でユーゼスは言う。
「さて、次だ。作成人、お前には私の首輪を外してもらおう」
「はあ? いやいや、無理だって。俺、そういう知識ないんだから」
「はあ? いやいや、無理だって。俺、そういう知識ないんだから」
慌てて首を横に振る作成人だが、ユーゼスは意に介さない。
「心配無用。貴様は私の指示通りにやればいいだけだ。念のため、メモにも書き写してあるしな」
「でもなあ……。指示通りにやればいいったって、手が滑ったりしたらどうするんだよ」
「そこは細心の注意を払ってもらうしかないな。貴様も手が吹き飛ぶのはいやだろう?」
「まあな。しょうがねえ、やるか」
「でもなあ……。指示通りにやればいいったって、手が滑ったりしたらどうするんだよ」
「そこは細心の注意を払ってもらうしかないな。貴様も手が吹き飛ぶのはいやだろう?」
「まあな。しょうがねえ、やるか」
作成人の言葉を、ユーゼスは自分の首輪解除を承諾したものとして受け取っていた。
だが、作成人の真意はそこにはなかった。
だが、作成人の真意はそこにはなかった。
「悪い。お前に付き合うのはここまでだわ」
「な……うっ!」
「な……うっ!」
ユーゼスの手を、ふいにちくりとした痛みが襲う。
何事かと彼が作成人を見れば、その手にはいつの間にか小さな注射器が握られていた。
何事かと彼が作成人を見れば、その手にはいつの間にか小さな注射器が握られていた。
「いやあ、これって相手によっぽど接近しないと使えないからさあ。使いどころに困ってたんだよねえ。
ああ、心配するな。別に猛毒ってわけじゃない。即効性の睡眠薬だ。
まあ、どのみち眠ってる間に死んでもらうけどな」
「バカな……。ここで貴様が裏切る必要が、どこに……」
「わかんないかなあ。首輪解除の方法さえわかれば、お前はもう用済みなんだよ。
俺自身の体を実験台にするのは、かなりやばい賭けだったけどな。
首輪のデータは、他の連中を騙す餌にさせてもらうよ。ありがとうな」
「この……外道がぁ……!」
ああ、心配するな。別に猛毒ってわけじゃない。即効性の睡眠薬だ。
まあ、どのみち眠ってる間に死んでもらうけどな」
「バカな……。ここで貴様が裏切る必要が、どこに……」
「わかんないかなあ。首輪解除の方法さえわかれば、お前はもう用済みなんだよ。
俺自身の体を実験台にするのは、かなりやばい賭けだったけどな。
首輪のデータは、他の連中を騙す餌にさせてもらうよ。ありがとうな」
「この……外道がぁ……!」
鬼の形相で作成人をにらみつけるユーゼスだが、そのまぶたは次第に降りていく。
彼は必死に抗うが、意志の力でどうにかなる問題ではない。
一分も経たぬうちに、ユーゼスはその意識を手放した。
彼は必死に抗うが、意志の力でどうにかなる問題ではない。
一分も経たぬうちに、ユーゼスはその意識を手放した。
「落ちたか。じゃあな、ユーゼス。恨むんなら俺なんかを信用した、自分の甘さを恨んでくれよ」
ユーゼスが眠ったことを確認すると、作成人は斧を手にしてそれを振り上げる。
だがその斧がユーゼスの頭部を砕く前に、突如として彼らがいた部屋の窓ガラスが割れた。
だがその斧がユーゼスの頭部を砕く前に、突如として彼らがいた部屋の窓ガラスが割れた。
「なっ!」
とっさに、窓へ視線を移す作成人。彼が窓を突き破って室内に侵入してきた何かを確認するとほぼ同時に、その何かは爆発を起こす。
(手榴弾かよ!)
飛び込んできたものの正体に気づき、作成人は身構える。
幸いにして手榴弾の火力はたいしたことがなく、距離もあったため彼の体に被害はなかった。
しかし、あんなものが勝手に屋外から飛び込んでくるはずがない。
何者かが自分たちを襲撃してきたということになる。
かくして、割れた窓から一つの影が部屋へと入ってくる。
幸いにして手榴弾の火力はたいしたことがなく、距離もあったため彼の体に被害はなかった。
しかし、あんなものが勝手に屋外から飛び込んでくるはずがない。
何者かが自分たちを襲撃してきたということになる。
かくして、割れた窓から一つの影が部屋へと入ってくる。
「ちぇーっ、やっぱり手榴弾一個でそう上手く死んでくれはしないかー」
姿を見せた少女……柊つかさは、部屋の状況を確認すると残念そうに呟く。
「柊の妹か……。まあ落ち着け。やる気満々なのはわかるが、殺し合うのは俺の話を聞いてからでも遅くはないと思うぜ?」
「話……? いちおう聞いてあげるよ、何?」
「話……? いちおう聞いてあげるよ、何?」
作成人に向け拳銃を構えつつ、つかさは続きを促す。
「俺の首をよく見ろ。首輪がついてないだろ? 俺は首輪を外す方法を見つけたんだよ。
俺と手を組めば、その方法を教えてやる。首輪さえなければ、そもそも殺し合いなんてする必要ないだろ?」
俺と手を組めば、その方法を教えてやる。首輪さえなければ、そもそも殺し合いなんてする必要ないだろ?」
さっそく首輪を交渉材料に使おうとする作成人。しかしつかさは、それを冷笑で返す。
「嘘はよくないよ、サクくん。だったらなんで、君はユーゼスくんを殺したのかな? かな?」
実際にはまだ、作成人はユーゼスを殺していない。だがつかさは、倒れたまま動かないユーゼスを見てそう判断したのだろう。
そして、彼女の判断自体は的を射ていた。
そして、彼女の判断自体は的を射ていた。
「ちっ、気づいたか……」
「そう、首輪を外せば逃げることは可能になる。けど、それは確実に生き延びられるってことじゃない。
仮に逃げられたとしても、反逆者として政府に追われることになる。
ここまで生き延びた以上、優勝を目指した方がよっぽど生還率が高いんだよね。
そういうわけだから、死んで」
「そう、首輪を外せば逃げることは可能になる。けど、それは確実に生き延びられるってことじゃない。
仮に逃げられたとしても、反逆者として政府に追われることになる。
ここまで生き延びた以上、優勝を目指した方がよっぽど生還率が高いんだよね。
そういうわけだから、死んで」
つかさが、拳銃の引き金を引く。だが作成人の側にも、対抗策を用意する時間が充分にあった。
彼はユーゼスの体を盾にして、銃弾を防いだのだ。
ユーゼスが着ているのは、支給された防弾繊維の服である。よって銃弾は貫通せず、ユーゼスの体にめり込んで落ちる。
防弾繊維は弾丸そのものは弾くが、その衝撃までは防げない。
よってユーゼスの肉体が受けたダメージは少なくないのだが、そんなことは作成人の知ったことではない。
作成人はユーゼスを盾にしたまま、つかさに向かって突っ込む。
つかさは口径の大きい銃を撃った反動で、まともに動きが取れない。
彼はユーゼスの体を盾にして、銃弾を防いだのだ。
ユーゼスが着ているのは、支給された防弾繊維の服である。よって銃弾は貫通せず、ユーゼスの体にめり込んで落ちる。
防弾繊維は弾丸そのものは弾くが、その衝撃までは防げない。
よってユーゼスの肉体が受けたダメージは少なくないのだが、そんなことは作成人の知ったことではない。
作成人はユーゼスを盾にしたまま、つかさに向かって突っ込む。
つかさは口径の大きい銃を撃った反動で、まともに動きが取れない。
「返り討ちにしてやるよ! 死ねオラァ!」
ユーゼスの体を蹴り飛ばし、つかさにぶつける作成人。その体の下敷きになったつかさの頭を狙い、作成人は斧を振り下ろそうとする。
だがその時、一発の銃声が響いた。
だがその時、一発の銃声が響いた。
「ぐああああ!!」
腕を撃ち抜かれ、作成人はたまらず悲鳴を上げる。
反射的に窓の外を見た作成人の目に映ったのは、狙撃銃を構えたアカギの姿だった。
反射的に窓の外を見た作成人の目に映ったのは、狙撃銃を構えたアカギの姿だった。
「さすがにこの暗闇で素人の狙撃では……。狙ったところには当たらないか」
独り言をこぼしながら、アカギは次弾を装填する。
そして作成人が体勢を立て直すよりも早く、もう一度引き金を引いた。
そして作成人が体勢を立て直すよりも早く、もう一度引き金を引いた。
「ア……カァ……ギィィィィィ!!」
アカギが放った二発目の弾丸は、作成人の頭を直撃した。
◇ ◇ ◇
「まったく、もうちょっとなんとか出来なかったの? あと少しで殺されるところだったじゃない」
「だがお前は死んでいない。結果がついてきたのなら、それで文句はないだろう」
「だがお前は死んでいない。結果がついてきたのなら、それで文句はないだろう」
勝利の余韻を噛みしめることもせず、つかさはアカギに文句をぶつける。
だがアカギがそれを真摯に受け止めるはずもなく、軽く流されてしまった。
だがアカギがそれを真摯に受け止めるはずもなく、軽く流されてしまった。
「そういえば、首輪の解体情報はどうする? メモが残ってるみたいだけど」
「まあ必要ないが……いちおう回収しておくか」
「まあ必要ないが……いちおう回収しておくか」
アカギはぞんざいな仕草で散らばったメモ用紙をつかむと、カバンに放り込む。
そしてユーゼスの頭部に一発弾丸を撃ち込むと、再び窓から夜の闇へと飛び込んだ。
そしてユーゼスの頭部に一発弾丸を撃ち込むと、再び窓から夜の闇へと飛び込んだ。
「さあ、次の相手を狩りに行くぞ」
「了解」
「了解」
残り人数は、あとわずか。それでも、この二人の勢いは止まらない。
【37番 ユーゼス・ゴッツォ 死亡】
【38番 ランキング作成人 死亡】
【残り6人】
【38番 ランキング作成人 死亡】
【残り6人】
【2番 赤木しげる】
【学年】中1
【状態】左腕負傷
【所持品】サイレンサー付き拳銃、手榴弾×3、サブマシンガン、フルフェイスヘルメット、スナイパーライフル、日本刀、首輪探知機、斧
【能力】知力:S 体力:B 狂気:S
【学年】中1
【状態】左腕負傷
【所持品】サイレンサー付き拳銃、手榴弾×3、サブマシンガン、フルフェイスヘルメット、スナイパーライフル、日本刀、首輪探知機、斧
【能力】知力:S 体力:B 狂気:S
【29番 柊つかさ】
【学年】高3
【状態】精神不安定、顔面にダメージ(大)
【所持品】コンバットナイフ、リボルバー、鉈、バールのようなもの、アイスピック
鎖鎌、クロスボウ、警棒、大型拳銃、KXの支給品
【能力】知力:D 体力:D 爆発力:B
【学年】高3
【状態】精神不安定、顔面にダメージ(大)
【所持品】コンバットナイフ、リボルバー、鉈、バールのようなもの、アイスピック
鎖鎌、クロスボウ、警棒、大型拳銃、KXの支給品
【能力】知力:D 体力:D 爆発力:B
【37番 ユーゼス・ゴッツォ】
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死亡
【38番 ランキング作成人】
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死亡