系譜
エピソード
ヘレネの誕生 ヘレネはレダ(またはネメシス)の生んだ卵から出てきたという。四人の子が一人の母親から一晩で出てきた。カストルとポリュデウケス(この二人はディオスクロイと呼ばれる)、クリュタイムネストラ、ヘレネである。このうち、ヘレネとポリュデウケスは、ゼウスの子で、不死である。しかし、カストルとクリュタイムネストラは、テュンダレオスの子で、人間である。また、ネメシスが母親だとする話に次のようなものがある。ネメシスはゼウスと交わりたくなかったので、様々な動物に姿を変え、ゼウスから逃げようとした。ゼウスはガチョウに化けてネメシスを捕らえ、共寝すると、彼女は卵を生んだ。ある羊飼いがその卵を拾い、それをレダに渡した。レダは卵からヘレネが生まれると、自分の娘として育てた。
テセウスに誘拐される ヘレネがごく若い頃(7~12才くらい)のことである。テセウスとペイリトオスはゼウスの娘と結婚することを誓った。テセウスはヘレネに、ペイリトオスはペルセポネ(ハデスの妻)に決めた。二人はヘレネを誘拐すると、彼女をテセウスの母アイトレに預けて、今度はペルセポネをさらいに冥府へ降りていった。ハデスは二人をもてなすふりをして椅子に座らせた。二人が座ると、蛇が彼らの足に巻き付いて、彼らは椅子から離れられなくなった。その後、ヘレネはカストルとポリュデウケスの兄弟に救われ、スパルタへ帰った。
メネラオスと結婚する テュンダレオスの娘ヘレネが婚期となった時、多数の求婚者がスパルタにやってきた。テュンダレオスはヘレネをめぐって争いになるのを怖れた。テュンダレオスはオデュッセウスの助言に従った。ヘレネの選んだ者が危害を受けたらその者を助けることを、求婚者全員に誓わせたのである。この計略はうまくいった。ヘレネはメネラオスを選んで無事結婚した。
パリスに連れ去られる ペレウスとテティスの婚礼が行われた。全ての神々が招待されたが、エリス(不和)だけが招待されなかった。エリスはヘスペリデスの黄金のリンゴをその場に投げ込んだ。これは「不和のリンゴ」として知られる。この最も美しいものに捧げられたリンゴをめぐって、ヘラ、アテナ、アフロディテの間に対立がおこった。誰が最もリンゴにふさわしいか、ゼウスは羊飼いパリスに決定を委ねた。パリスは、最も美しい女を与えるというアフロディテの約束を気に入って、リンゴを彼女に与えた。そしてパリスはスパルタへ向かった。アフロディテが彼に与えるといった美女を連れ帰るためであった。パリスはヘレネを誘惑した。ヘレネは九歳の娘のヘルミオネを置いて、屋敷の財宝を持ち出し、パリスとともにトロイアへ行った。
パリスの死後、デイポボスと結婚する メネラオスはヘレネと財産を取り戻すため、アガメムノンの助けを借りて、遠征軍を編成し、トロイアを攻撃した。トロイア戦争で、パリスはピロクテテスの放った毒矢で殺された。ヘレノスとデイポボスの兄弟が、ヘレネをめぐって争い、デイポボスがヘレネの夫となった。ヘレノスはトロイアから出て行ったが、オデュッセウスがそれを捕らえた。ヘレノスはパラディウムがある限り、トロイアが陥ちないことを予言した。